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転生魔王のワールド・リバースド ~ハーレム魔王が地獄に墜ちてハーレム魔王になる話~  作者: ニート鳥
番外編 主人公になれなかった僕のワールド・オーバーライド・オンライン vs 転生魔王のワールド・リバースド ~Lv.99 魔王です~
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5 束の間の休息

 クラーケンを軽く倒したシンと冬那は風の指輪の力でサラマンデル王国の王都にして統一帝国の帝都であるレオールに帰還する。レオールの王宮では船に連絡が来ていたとおりに、羽流乃と愛娘フアナが待っていてくれた。


「パパ、パパ」


「よしよし、積み木か?」


 すっかり大きくなったフアナを膝の上に座らせ、積み木を渡してやる。母親の羽流乃と同様に髪は金色で肌はすべすべしていて、フアナは人形のようにかわいらしい。


 フアナはシンの前で積み木を組み立てて遊び始めた……かと思ったら突然走り出してピンを倒すボーリング玉のように積み木を吹っ飛ばし、コロリとこけた。


「おいおい、大丈夫か!?」


「パパ、パパ!」


 シンは慌てるが、フアナはケロッとした顔で無邪気に笑っている。シンは胸をなで下ろし、羽流乃は苦笑した。


「誰に似たのか、本当に落ち着きがない子ですわね」


 羽流乃はフアナを抱き上げる。フアナはキャッキャッと羽流乃の胸で暴れた。


「ありがとな。フアナを連れてきてくれて」


 改めてシンは羽流乃に礼を言う。普段、フアナはグノーム女王としてアストレアにいる。葵が帰って空白となったグノーム王国の女王の地位を埋めるための措置だ。本来なら、シンはレオールで仕事を片付けてからアストレアに移動するしかなかった。


「こうしておかないと、あなたは仕事を放り出してアストレアに行ってしまうでしょう?」


「ハハ、バレてたか……」


 シンは顔を引きつらせながら頭を掻く。冬那との船旅は楽しかったが、その間も日に日に成長するフアナのことが気になって仕方なかった。レオールに帰還すればまず間違いなく執務室に缶詰にされるので、直接アストレアに行こうかとシンは迷っていたのである。


 ひとしきりフアナと遊ぶと、フアナは疲れてしまったのかパッタリと寝入ってしまった。羽流乃はフアナを寝室へと連れて行く。仕方がない。留守にしている間に決裁事項は溜まっているはずだ。やりたくないけど仕事をしようかな……。




 シンが若干テンションを下げつつ執務室に向かおうとすると、今度は廊下で麻衣が現れた。


「シンちゃん、フアナちゃんがかわいいのもわかるけど、ウチらのことも相手してもらわんとアカンで!」


 そう言って麻衣はシンに抱きついてくる。


「おいやめろよ……。みんな見てるぞ」


 シンは困った顔をしながらも引き剥がしたりはしない。今のところ子どもは羽流乃との間にしかいないが、麻衣だって冬那だってシンの大事な嫁だ。羽流乃と同じように全員愛おしい。


「……明日、二人でどっか行こうぜ。それでいいだろ?」


「そんなこと言われても、ここまで放っておかれたら我慢できへんわ」


「おまえ、仕事はどうしたんだ?」


 麻衣だってシルフィード女王である。こんなところでブラブラしている暇があるのか。


「レオンに任せてるからバッチリやで。シンちゃんもベルトランに任せとけばええやん」


 麻衣は宰相の名を挙げる。人材豊富なシルフィードなら、それでうまく回るのだろう。うらやましい限りだ。


「そういうわけにはいかねーよ。全部の責任持ってるのは俺だからな」


「シンちゃんは真面目やなあ。さすがやで」


 麻衣は背伸びして、よしよしとシンの頭を撫でてくれる。急に照れくさくなったシンはポリポリと頭を掻き、話題を変えようとする。


「ま、あんまりかっこ悪いことばっかりやってると、葵に笑われちまうからな。あいつ抜きでしっかりやってくには、俺ががんばらないと」


「……せやな。葵のやつ、元気してるんかな……」


 シンと麻衣は柄にもなくしんみりした雰囲気に浸る。修学旅行の飛行機事故でこの世界にやってきたシンたちだが、葵だけは元の世界に戻った。葵がいなくなってから、もう一年以上経っている。今頃彼女は何をしているのだろう。元気にやっているのだろうか。




 シンと麻衣が葵に思いを馳せていられる時間は、ほとんどなかった。なぜなら直後に、禍々しい気配がこの世界に出現したのを感じたからである。


「なんや、この魔力は……! 化け物級やんけ!」


「バルサーモ島の方だな……! とりあえず俺が一人で行く! 麻衣はみんなを集めて準備してくれ!」


 シンは一人で魔王になることが可能だ。シン一人で行って対処できない相手なら、全員の力が必要になる。羽流乃はフアナを送るためグノームに行き、冬那はキャンサーに帰っている。各王宮は大鏡でつながっていてシンたちは簡単に行き来できるが、各国政府に非常態勢をとらせなければならないので、すぐに全員集合はできない。


「……わかった。ヤバかったらすぐ逃げるんやで?」


 以前までのシンであれば、麻衣は絶対に一人では行かせなかっただろう。しかし、今のシンは以前とは違う。


「ああ。俺一人の体じゃないからな」


 あっさりうなずき、シンは大鏡のところへ走る。シンなら風の指輪で撤退の魔法が使えるので、先行偵察には最適だ。シンは大鏡を通っていったんキャンサーに出てからドラゴンを呼び出し、空路でフラメル湖上にあるバルサーモ島に向かった。

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