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転生魔王のワールド・リバースド ~ハーレム魔王が地獄に墜ちてハーレム魔王になる話~  作者: ニート鳥
第3章 私はハーレム潰します/私もハーレム入りたいです!
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42 最強の魔王

ガブリエルとの戦いで力を使い果たしていたリヴァイアサンは魔王の姿を解き、元のシンの姿に戻る。冬那の体もシンの隣に再構成された。シンは冬那を呼び出したユニコーンに乗せ、葵が築いた土塁の内側まで下がらせる。


 シンの隣までやってきた羽流乃は、シンに火の指輪を握らせる。さっそくシンは火の指輪をはめた。


 シンと羽流乃が魔王の力を発動するまで山北が待ってくれるはずがない。山北はこちらに矢を乱れ撃ちしながら駆けてくる。シンは魔法を発動して防御した。


「水の力に地の支配! 氷よ、防げ!」


 シンの前に展開された氷の壁が矢を弾く。一刻の猶予もない。魔王の力を発動しなければ。羽流乃はシンの目をまっすぐに見据える。


「行きますわよ、シン君」


「ああ! 行こう!」


 シンは羽流乃の腰に手を回し、抱き寄せた。羽流乃も同様にシンの背中に手を回し、抱きつく。密着したことで力強い羽流乃の心臓の音さえ聞こえた。熱いほどに、羽流乃の体温を感じる。


「私の全てを受け止めてください、シン君!」


「全部、喰らい尽くしてやるよ!」


 示し合わせたように同じタイミングで、二人は唇を近づける。二人の唇はどちらともなく優しく重なり、一つの炎となる。




「世界を滅するは火の力! 背負いし罪は力あるが故の傲慢! 蘇れ、最も神に近き堕天使、ルシフェル!」




 羽流乃の体が炎に変わり、シンを包む。シンの体も炎に変わり、やがて収束。そこには最強の魔王が立っていた。


「己の正義を信じるとき、傲慢は誇りへと変わる……! 滅して差し上げましょう、塵一つ残さず!」


 羽流乃と全く同じ容貌の魔王ルシフェルは、凜々しく宣告する。ルシフェルは赤いマントの隙間から真っ白な肌着を覗かせているばかりで、剣も鎧も装備していない。それでも山北はルシフェルへの突撃をやめた。ルシフェルに危険なものを感じたのだ。


「おい、てめぇら、何をボサッとしてやがる! あいつらをやるぞ!」


 足を止めた山北は後方待機していたオークの軍勢に向かって怒鳴った。普通にやれば勝てないと思ったのだろう、人海戦術でまずルシフェルの魔力を削る気だ。


 族長の命令に従い、雄叫びを上げてオークの群れは突撃を始めた。騎兵、槍兵はルシフェルに向かって五月雨式に突っ込み、弓兵が矢を放って援護する。


 しかし、オークたちはルシフェルに掠り傷一つつけることができなかった。まず、放たれた矢はルシフェルに届く前に炎上して燃え尽きてしまう。そして、突撃を敢行した騎兵、槍兵も同様だ。ルシフェルのところに辿り着く前に体から発火し、バタバタと倒れた。


 燃え上がるオークたちの群れによって夜空が赤く染まる。一定以上の魔力がないとルシフェルには近づくことさえできず、消滅させられてしまうのだ。


「弱いとは悲しいことですわね……。私に触れることさえできません」


 為す術もなくオークたちが壊滅したのを見て山北は舌打ちし、一人ルシフェルに接近する。


「いいから撃ち続けろ! 魔力を無駄遣いさせるんだ!」


 命令通りに、オークの弓兵はまばらに矢を放つ。槍兵、騎兵もおそるおそる接近しながら投石して逃げるということを繰り返す。矢も石も、途中で燃えカスとなって消えた。


 山北自身はいきなり斬りかかることはせず、ルシフェルの周囲を回りながら矢を射かける。山北ほどの魔力を込めて矢を射られると、焼き尽くすことができない。ルシフェルは最小限の動きで矢を避けつつ、装備を召喚する。


「来なさい、〈カトリーヌ・フィエルボワ〉!」


 ルシフェルの手に五つの十字が刻まれた聖剣が現れる。同時にルシフェルの体は分厚いプレートアーマーに覆われ、完全に西洋の騎士の姿となった。


「悪しき魔王に堕天したというのに、私が与えた聖剣をまだ使うのですか……」


 ミカエルは苦々しい顔をするが、知ったことか。使えるものは何でも使う。ルシフェルは戦場の流儀に従うまでである。形にこだわっていれば敗者になるだけだ。こういうバカなやつらが鉄砲、大砲に向かって正面突撃を掛ける。


 召還した鎧には山北の矢が全く通じない。ルシフェルは顔の近くに来た矢だけ聖剣〈カトリーヌ・フィエルボワ〉で払い、ゆっくりと山北を追いかける。


 ただ、この戦場にいる敵は山北だけというわけではない。ルシフェルが山北率いるオークの軍勢と戦っているうちに、ミカエルも準備を整えていた。戦艦に作り替える途中だったゴーレムを、またゴーレムに組み直していたのだ。


「山北君、離れなさい!」


 ミカエルはゴーレムに大砲を撃たせる。雷鳴のような轟音とともに、砲弾がルシフェル目がけて降り注ぐ。ルシフェルは回避に専念するが、砲弾はやまない。ゴーレムの数が多いのだ。ゴーレムたちは統制のとれた動きで順番に砲撃し、切れ目なく砲弾をルシフェルの元に配達し続ける。


 王国軍も大砲を持ち出してゴーレムに向かって砲撃するが、ほとんど効果はない。避け続けるのにも限度がある。すぐにルシフェルは動いた。


「『炎の兵』! あれを倒しなさい!」


 ルシフェルの後方で、炎でできた兵士たちが身を起こす。兵士たちはきびきびと動いてルシフェルが召喚した大砲を組み上げ、ゴーレム目がけてぶっ放つ。たちまち数体のゴーレムが吹き飛ばされた。


「おい、やつらを潰せ!」


 山北はオークたちに大砲を操る『炎の兵』を倒すように命じ、自身は騎射を繰り返してルシフェルを牽制する。ルシフェルは山北の矢を払いつつ、さらにマスケット銃を装備した『炎の兵』を召還し、一斉射撃させた。銃弾を受けたオークはルシフェルに接近したときと同じく燃え上がってしまい、転生することさえ許されない。最初の突撃で数を減らしていたオークは、あっという間に壊滅した。


 ミカエルのゴーレムも、『炎の兵』の正確無比な砲撃でついには沈黙する。これで彼らを守るものは何もない。ようやく山北、ミカエル本人と戦える。瓦礫と燃える死体に囲まれ、ルシフェルはニッコリと笑みを浮かべた。


「お二人とも、心ゆくまで殺し合いましょう」

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