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転生魔王のワールド・リバースド ~ハーレム魔王が地獄に墜ちてハーレム魔王になる話~  作者: ニート鳥
第3章 私はハーレム潰します/私もハーレム入りたいです!
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24 交渉決裂

「じゃあ俺たちは、現世に帰れるのか!?」


 シンの質問に、難しい顔をして羽流乃はうなずいた。


「多分、できるでしょうね。相当無理をすることになりますけど」


 シンの体に全ての指輪と三人の魂を詰め込めばいい。アスモデウスの力で時空をねじ曲げるのを全員でサポートすれば、シンたちは帰れる。帰る先の体はないが、アスモデウスならその場で作れる……はずだ。


 ばあちゃんは元気なのか。皆の家族も心配しているだろう。懐かしき現世に帰りたい。ばあちゃんが作ってくれる味噌汁の濃厚な香りが、一瞬でシンの頭を埋め尽くす。


 しかし葵はシンに思い出させる。


「君、こっちのことは放っておく気? 今、僕らがいなくなったら、何もかもが滅茶苦茶だよ?」


 またグノームとシルフィードは戦争を始め、サラマンデルもどう動くかわからない。シンたちにも責任というものがある。勝手気ままに帰るわけにはいかない。羽流乃もそこは理解しているのだろう、何も言わなかった。


「そうだな。きっちり仕事はしないと……」


「じゃあ、羽流乃ちゃんとも結婚しないとな」


 麻衣が冗談めかして言うが、羽流乃は拒絶する。


「ふざけないでくださいまし! どうして私がシン君なんかと!」


 そこまではっきり言われると悲しい。葵も麻衣も冬那も、なんやかんやでOKしてくれたのに。シンがちょっとしょんぼりしたのを見てなのか、羽流乃はさらに続けた。


「ま、他の全員と離婚していただけるのなら、仕方がないので、私がシン君と結婚してあげても構いませんけど?」


 羽流乃の発言と同時に葵は嘆息した。


「何様のつもり?」


「あなたこそ何様のつもりですか?」


「女王様だけど?」


 目をつり上げて怒る羽流乃に葵は堂々と胸を張って言い返す。挑発されて逆に冷静になったのか、羽流乃は幾分か声のトーンを抑えて吐き捨てる。


「そんなこと、関係ないでしょう? 私には、あなたのような性悪女がシン君にふさわしいとは思えませんわ。こちらで立場を利用した卑怯者!」


「へぇ、じゃあ誰がシンにふさわしいんだい? 麻衣かい? 冬那かい?」


 食ってかかるように葵は尋ねる。羽流乃はまともに答えない。


「あなたではないことは確かですわ」


 葵は見透かしていると言わんばかりに冷笑を浴びせる。


「わかってるよ。麻衣も冬那もだめだって、シンにふさわしいのは自分だって言いたいんだろう? 君は本当に嫌なやつだよ。ナチュラルに人を見下してくれてさ」


「あなたがやましいことをしているから、そう感じるだけでしょう?」


 羽流乃も一歩たりとも譲ろうとしない。葵はさらに口撃する。


「前世で立場を利用していたのは君だろう? わかりやすくボス猿面して、シンにくっついちゃってさ。ついでに暴力まで振るうから、本当に手がつけられない。最悪だったよ、君は」


「暴力? 私は私の正義を実行していただけですわ。あなたは本当に汚らわしい。私の正義を、この世界で薄汚い暴力に使ってくれました」


「僕がやることは暴力で、君だったら正義? 世の中を舐めてるの?」


「決闘しましょう。証明して差し上げます」


 羽流乃は唐突に申し出て、腰の刀に手を掛ける。目が笑っていない。本気だ。だが、葵の対応はにべもない。


「却下だね。僕にメリットがない」


「では現世に帰ってそこで決着をつけましょう。重婚が許される世界にいるからシン君も流されてしまうのですわ」


 羽流乃はギロリとシンをにらむ。う~ん、確かに普通の感覚なら重婚はかなりアウトだろう。なんとなく流されてそういう状態になってしまったというのも事実だ。しかし、今は必要があってやっていることである。


 そこをわかってもらえれば。シンはそう思ったが、葵には交渉によって和解する気が全くなかった。


「ふうん、帰ったら勝てるって、そう思ってるんだ? 本当に傲慢だね。自分が負けるなんて、ちっとも考えたことがないんだ」


「……」


 羽流乃は言い返さない。それだけ、自分に自信があるのだろう。葵は構わず喋り続け、核爆弾を投下した。


「でもまあいいよ? シンも帰りたがってることだし。帰るのは僕もやぶさかじゃないさ。ただし、僕らにはこの世界に対する責任がある。だから、僕らのうちの誰かが、シンの子どもを孕んでからね♪」


 葵は心底楽しそうな笑顔を見せ、羽流乃の中で何かが切れた。


「あなたの腐った性根はよくわかりました! あなたのようなあばずれ女には、どんな理由があろうと従えません! 私は実家に帰らせていただきます!」


 ドン! と羽流乃がテーブルを叩く。並べられていた食器が動いてぶつかり、耳障りな音を立てた。


 羽流乃は食堂から出て行ってしまう。葵は肩をすくめた。


「やれやれ、これだから子どもは嫌いなんだよ」

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