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転生魔王のワールド・リバースド ~ハーレム魔王が地獄に墜ちてハーレム魔王になる話~  作者: ニート鳥
第3章 私はハーレム潰します/私もハーレム入りたいです!
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17 対策

 オークによる襲撃事件の後、シンたちは一夜明けてすぐに王都アストレアに帰還した。オークたちは陥落した前線の城砦を放棄してマグヌス火山帯に退却したためとりあえず戦闘は終わったが、防衛線が崩壊したことに変わりはない。


 最前線の支城群に詰めていた兵士たちは全滅しているし、城も砦も完膚なきまでに破壊されている。仕方がなかったこととはいえ、スコルピオの城壁もアスモデウスの力で穴が空いたままだ。オークたちが再侵攻してきても支えられる状態になく、危険すぎて留まることができない。


 護衛の兵士たちとともに魔法のじゅうたんで広場に着地し、二次元三兄弟とはそこで一旦お別れとなる。


「全く、取材どころじゃなくなっちまったな……」


 疲れた顔で機材をじゅうたんから降ろしながら、落合はぼやく。三人とも怪我なく無事だったのは何よりだ。戦闘が収まった後、落合たちは緊急中継を夜通し行い、通信機材を使ってシンたちの迎えまで呼んでくれた。今日はゆっくり休んでほしい。


「それじゃあシン先輩、私もこれで……」


 二次元三兄弟とともに、冬那も帰ろうとする。しかしシンは冬那を呼び止めた。


「待てよ。冬那は俺たちと一緒に来い」


「ちょっとシン、いきなりどうしたのさ?」


 葵が露骨に嫌そうな顔をする。シンは言った。


「冬那も山北に狙われてるんだ。……町の中じゃ、危ないだろ」


 山北はシンだけではなく冬那もターゲットにしている。アストレアは城壁のない町で、盾となるスコルピオは防衛能力を喪失している。せめて王宮にいてもらわなければ、冬那の身の安全を確保できない。


「じゃあ、戦争が迫って危なくなったら、君は町の人全員を王宮に入れるの?」


「それは無理だろ。物理的に」


 質問の答えを聞いて、葵は嘆息する。


「じゃあ、冬那を王宮に入れるわけにはいかないよ。彼女は何の利用価値もない一般市民なんだから。冷たいことを言わせてもらうけど、冬那は僕らとは違うんだ」


「……冬那は、指輪を使えるだろ? 俺と同じように」


 シンは指摘するが、葵は首を振るばかりだ。


「同じじゃないだろう? 君は指輪を使って戦うことが出来るけど、冬那にはできない。違うかい?」


 冬那が指輪で呼び出したのはポニーサイズの小さなユニコーンだけだ。乗って戦うことはできそうもないし、他の魔法もシンよりグレードダウンしたものしか使えないだろう。病気で喧嘩どころかスポーツさえしたことがない冬那が、そんな魔法を使いこなして戦うなんてとても無理だ。


「前にも言ったけど、冬那には利用価値がないんだよ。特別扱いなんて、絶対にできないね」


「女王陛下の言うとおりですわ! 何の理由もなく種なしを王宮に入れたりしたら、大問題です! 近衛を努める私の沽券に関わりますわ!」


 隣で羽流乃も騒ぐ。そこまで毛嫌いしなくてもいいだろうに。シンは助けを求めるように麻衣の方を見るが、麻衣も否定的である。


「……前に決着が着いた話やろ? 葵やって羽流乃ちゃんやって、冬那ちゃんが嫌いやからダメやって言ってるわけやないんやで? せやから冬那ちゃんの安全のためなら、とりあえずシルフィードに……」


 ここまでみんなに反対されるとは。冬那も慌てて発言する。


「シン先輩、皆さんの言うとおりです。私なら大丈夫だから、気にしないでください」


 気にしないなんてできるわけがない。シンは決意した。


「……よし、決めた! 冬那が特別ならいいんだな?」


「君、絶対ろくでもないことを言い出す気だろう? 却下」


 先回りして葵は言うが、シンは止まらない。シンはがっしと冬那の両肩を掴み、言った。


「冬那! 俺と結婚してくれ!」


「えっ、あ、はい……。えええええ!?」


 勢いでうなずいてから、冬那は目を白黒させる。珍しく葵も動揺する。


「シ、シン! いきなり何を言ってるんだい!?」


「冬那が特別だったらいいんだろ? なら俺と結婚すりゃあいい」


 どうせもう重婚状態なのだ。もう一人増えても、特に問題ないだろう。シンの妻になれば、冬那は堂々と王宮に出入りできる。安全確保のため軍も使える。


「シンちゃん、それはさすがに滅茶苦茶やで! もうちょっと段階を踏んでやな……」


 麻衣も慌てるが、男に二言はない。外野の喚きを無視して、シンは冬那に尋ねる。


「葵たちが何と言おうと関係ない。どうだ、冬那? 俺と結婚してくれるか?」


「いや、でも、シン先輩には麻衣ちゃん先輩と葵先輩が……」


「それでも俺は、冬那が欲しいんだ!」


 シンは冬那の瞳をじっと見つめる。冬那は顔を真っ赤にしながら、うなずいた。


「ふつつか者ですが、よろしくお願いします……」


 事態についていけない二次元三兄弟は、呆然とその様子を見守っていた。

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