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転生魔王のワールド・リバースド ~ハーレム魔王が地獄に墜ちてハーレム魔王になる話~  作者: ニート鳥
第3章 私はハーレム潰します/私もハーレム入りたいです!
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12 オーク

「麻衣、味方の様子はどうだ?」


 腐ってもスコルピオは城塞都市である。駐屯しているグノーム軍は対応を開始しているはずだ。しかし麻衣の表情は芳しくない。


「……アカンな。避難民が多すぎて、主力が城門から出られへん」


 折しも夕食時であり、城壁外に広がる屋台街には人が溢れていた。城門が詰まってしまうのも無理もないことだ。


「クソッ、国境の砦はどうなってるんだよ……」


「そこまでハエは飛ばせんけど、よくて囮と交戦中ってところやないかな? ……ミカエルが何かしら細工してたら、もう陥落してるのかもしれへん」


 麻衣はそう言って南を指さす。山々の要所要所で煙が上がっていた。ここのところ、国境地帯で魔族の侵入が相次いでいたこと自体が、スコルピオ城壁外市に攻撃を仕掛けるための陽動だったのだろう。国境を少数でしつこく攻撃してスコルピオに進撃する力はないと見せつつ、スコルピオを攻撃できる道を捜していた。あちらからの援軍は期待できそうにない。


「……やるしかないな」


 両手にはめている各一個の火、水、風、土の指輪がシンの感情の高ぶりに応じて魔力の輝きを放った。城壁外にも兵士の詰め所はあるが、この混乱の中で満足に戦えていない。まずシンが暴れて、混乱している王国軍に活を入れる。


「では私がお供しますわ。私であれば陛下の動きについていけますから」


 羽流乃は申し出るが、シンは首を振った。


「いや、羽流乃は冬那たちを頼む。葵、麻衣、力を貸してくれ」


「わかった」


「了解やで~!」


 二人がいれば、いざというとき魔王の力を使える。羽流乃に背中を守ってもらうのもアリだが、使い魔に代行させればいいだろう。


「……わかりましたわ。私は皆さんを連れて、城門の方に避難します」


 羽流乃は戦って手柄を立てたかったのだろう、不満そうな顔をしつつもシンの命令に従う。羽流乃に任せておけばみんなは安全だ。


「頼むぜ」




 麻衣の情報によると、オークたちは十数名ずつの集団に別れて市街に散っている。シンは羽流乃たちを見送った後、手当たり次第にオークを叩くことにした。


「風の力に地の肉体! 五感を司る使い魔よ! 力を貸せ!」


 まずシンはオオカミを呼び出し、後衛につける。その上でユニコーンと剣を呼び出し、目に付いたオークの部隊に突撃を敢行した。オークの群れは槍衾を作ろうとするが、こちらの方が速い。一瞬でシンとユニコーンはオークの魂を砕き、蹴散らした。


 シンは同じようにオークの集団を四つ、五つと潰していく。後ろから追いかけてくる葵たちと離れすぎないように注意しなくては。


「……だんだん数が多くなってきてないか?」


 戦いながら、シンは尋ねる。麻衣は答えた。


「……せやな。ウチら、囲まれそうになってるで」


「最初から、それが狙いなのかな」


「……そうみたいやで」


 路地から、次々とオークが出てくる。完全にシンたちは包囲されていた。


「年貢の納め時ってやつだな……。神代、首を置いていってもらおうか」


 日本刀を腰に差した一際大柄なオークが、集団の中から出てくる。彼の顔には見覚えがあった。思わずシンは声を上げる。オークは鋭い目つきでシンをにらむ。


「お、おまえは!」


「そう……! 俺はおまえを殺せるこの日だけを待っていた……!」


「誰だっけ?」


「覚えてないんかい!」


 後ろで麻衣が派手にずっこけた。葵も首をひねる。


「う~ん、僕も覚えがないなぁ」


「隣のクラスの山北やろ! 去年は同じクラスだったやんけ!」


 ちなみにシンも葵も羽流乃も麻衣も、一年の時からずっと同じクラスだ。当の山北は、狂ったように高笑いする。


「ハハハハハ! そんなことだろうと思ってたよ! おまえはそういうやつだ! 俺のことなんて眼中になかったんだろう? だからこそ殺しがいがある!」


 山北がオークへと転生していたことには驚いたが、確かに重要事項ではない。本当の敵は別にいる。


 今日、思いつきでスコルピオにやってきたシンにここまでできる存在。シンにも、葵にも、麻衣にも気付かれず監視していたのだろう。その上で、即山北たちと話をつけた。裏で糸を引いているのが誰なのかなど、考えるまでもない。


「中村先生! いるなら出てきてくれ!」


 シンは叫ぶが返事はなかった。葵も麻衣も首を振った。


「……無駄だよ、シン。彼は決して出てこないさ。きっとそれが彼のスタイルなんだよ」


「先生やってたときから、日和見チキン野郎やったからな」


「先生はそんな人じゃないはずだ……!」


 シンはそう口にするが、虚しいだけだ。


「先生のことはどうでもいいだろ? やろうぜ、剣で勝負だ……!」


 山北は腰の刀を抜いて、構える。やるしかなさそうだ。シンはユニコーンから下馬して、自分も剣を構えた。

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