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転生魔王のワールド・リバースド ~ハーレム魔王が地獄に墜ちてハーレム魔王になる話~  作者: ニート鳥
第3章 私はハーレム潰します/私もハーレム入りたいです!
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7 馬車の旅

 ラジオを聞いたシンは思わず二次元三兄弟の店に怒鳴り込んでいた。


「おい! 南の辺境に行くってどういうことだ!? 冬那をそんな危ないところに連れて行くなよ!」


「落ち着け、神代。辺境っていってもスコルピオまで行くだけだ。俺たちの素材の買い付けも兼ねてな。国境地帯をうろうろする予定はない」


 落合は全く動じず応じる。スコルピオはグノーム南部最大の都市だ。魔族の侵入が相次いでいる国境地帯とは少し距離が有り、ここのところの騒乱でも一切被害は出ていない。安全といえば安全だ。


「僕たちも何度も行ってるけど、大丈夫だよ。神代君の方がよく知ってると思うけど、国境にはいくつも城や砦があって、そこから警邏の兵が出てるんだ。スコルピオまで魔族が来ることなんてまずないんだよ」


 西村の言うとおり、マグヌス火山帯周辺には複数の城砦からなる防衛線が存在し、国境警備の兵が駐屯している。魔族の侵入が頻発しているといっても城砦の兵だけで撃退可能だ。危なくなればシンたちが自ら出張る手はずだが、呼ばれたことは一度もない。


「皆さんの言うとおりですよ、先輩。私は大丈夫ですから、心配しないでください。おみやげ、楽しみにしていてくださいね~!」


 冬那本人も落ち着いたものだ。確かに、そこまでナーバスにならなくてもいいのかもしれない。思案するシンに、井川は髪をかき上げながら提案した。


「不安なら神代も一緒に来ればいいんじゃないか? 前線の視察も必要だろう。俺たちも番組を作りやすくなる」


「そりゃいい考えだな!」




 井川の提案を、シンは二つ返事でOKした。突然ではあったが、どうせそのうち視察には行く予定だったのだ。さっそく王宮に帰って部屋でゴロゴロしていた葵に伝えると、葵も承諾した。


「サラマンデルとの関係を考えると、どのみち軍は動かせないからね……。僕らが行くだけなら、まあいつでもいいよ。今日だってね」


「せやな。旅行やと思って楽しませてもらうわ」


 なぜか上がり込んで葵と一緒にゲームをやっていた麻衣も同行することになった。いつものように護衛には羽流乃だけについてきてもらい、馬車でスコルピオを目指す。




 スコルピオに到着するまで、馬車で一日掛からないくらいである。距離的には東の辺境より遠いが、街道が整備されているので早いのだ。途中の馬屋で馬を交換しながらシン、葵、麻衣、羽流乃、冬那と二次元三兄弟はシルフィードにも持ち込んでいた痛馬車に乗り合わせ、南下していく。


 少々狭いが、道がいいので乗り心地はそこまで悪くない。タイヤにゴムを履かせるなどの改良も二次元三兄弟が自分で行ったそうだ。


「以前、鉱山に通ってた頃は大変だったからね。僕が錬金したんだ」


 西村は胸を張る。この三人のおかげで、この世界の技術水準も少しずつ向上してきている。ちょっとしたものであれば魔法を駆使して製作が可能なため、現代の知識が大きな武器となっているのだった。とはいえあくまで人間の資質に依存する魔法を使用するため、産業革命的なところまでは行き着かない。アニメを作るという三人の目標は、まだまだ遠かった。


「しかし歌澄には全く敵わないな……。こんなものまで作れるとは……」


 携帯用の小さな画面を、イタリア生まれの配管工が乗り込んだカートが駆ける。テレビにつなぐこともできるが、さすがに電源を用意できない。対戦プレイしながら、落合は感嘆の声を上げるしかなかった。ちなみに御者は井川が努め、警備として羽流乃も御者席にいる。


「フフッ、自分の才能が恐ろしいよ」


「葵先輩、さすがです!」


 葵は自画自賛して、冬那は褒めそやす。以前はそんなイメージはなかったが、一緒にゲームをすることですっかり仲良くなったらしい。いい傾向だ。


「ほんま、ようできるな……。結構揺れてるやろ? ウチは無理や。絶対酔う」


 麻衣は顔を真っ青にしてゲーム画面をぼんやりと見つめる。レースは終盤、シンと葵のデッドヒートとなっていた。もう少しだ。もう少しでシンが勝てる。


 シンは興奮のあまり画面のキャラの動きに合わせて体を動かしてしまう。そこで、馬車は大きな段差を超えた。


「うおっ!」


「キャッ!」


 馬車は大きく揺れ、シンは操作ミスでクラッシュ。自分もその場で横転する。その隙に葵が一位で駆け抜けた。


「クッソ~! また負けちまったか」


 シンはひっくり返った姿勢のまま悔しさを声にする。葵は余裕で返す。


「ハハハ、君が僕に勝とうなんて百年早いよ。……だからそろそろどいてくれないかな? 僕の膝の上が気持ちいいのはわかったからさ」


 気付けば、シンは葵に膝枕してもらうような姿勢になっていた。シンは飛び起きる。


「す、すまん!」


「もっと凄いことしてもらってもいいんだよ? 君は僕の夫なんだからね」


 葵はニヤニヤしながら顔を近づける。みんなの前で辱めるのはやめてほしい。

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