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転生魔王のワールド・リバースド ~ハーレム魔王が地獄に墜ちてハーレム魔王になる話~  作者: ニート鳥
第3章 私はハーレム潰します/私もハーレム入りたいです!
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4 再会

 ドラゴンを視認した転生者たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ始めるが、一人だけぼんやりと空を見上げる者がいた。


「あれは……冬那!?」


 驚いている場合ではない。シンが間に合わなければ、冬那はドラゴンに食われてしまう。シンは空中であるにもかかわらず使い魔を呼び出す。


「大地のケモノに水の手綱! 命を司る使い魔よ! 力を貸せ!」


 落下しながらシンはユニコーンにまたがり、着地すると同時にユニコーンをダッシュさせる。ドラゴンは冬那のすぐそばまで迫っていたが、冬那は逃げようとしない。動かないのではなく、動けないのだ。気管系に重篤な病を抱えていた冬那は、走ることができない。体育の授業では、常に見学だったくらいだ。シンが助けるしかない。


「火の力に地の支配! 雷よ、焼き尽くせ!」


 シンは馬上から雷撃を放ち、ドラゴンの目をこちらに向けさせる。やる気になったようだ。鳴き声を上げてシンを威嚇するドラゴンに対し、シンは剣を呼び出す。


「地の力に火の支配! 鉄よ! 俺に剣を!」


 シンはユニコーンが突進する勢いそのままに、魔王の力で鍛えた剣をドラゴンの頭に叩きつける。小さなドラゴンの魂に耐えられる魔力を超えている。ドラゴンは一瞬で無数のトカゲに変わって散っていった。


「大丈夫か、冬那!」


「はい、先輩!」


 必ずシンが助けてくれると確信していたのだろう、ドラゴンに襲われそうになった恐怖など全く感じさせず、冬那はニコニコしながらうなずいた。




 その後はシンが最初に転生してきたときと同じだ。転生者たちに一度死んでこの世界に転生してきたと説明し、魔法のじゅうたんでアストレアの広場に送る。道中、冬那にはシンと葵、麻衣が結婚していてそれぞれ皇帝と女王になっているということ、羽流乃には前世の記憶がないが近衛騎士となっていることを説明した。


「そうなんですか! さすが先輩たちですね!」


 冬那はあっさりと受け入れる。もっと驚かれると思ったが、案外冬那も適応力が高いらしい。


 話をしているうちに広場に着く。広場ではすでにロビンソンが準備を整えていた。通常通り、軽く話をしてから規定で決まっているお金を渡すという段取りだ。


 魔法のじゅうたんから降りたところで、シンは冬那を連れて、王宮に帰ろうとする。


「さ、もういいだろ。みんな、帰ろうぜ。冬那も一緒だ!」


 ところがここで、葵がストップを掛けた。


「待って。冬那は残ってお金を受け取らないと」


「そんなのいいだろ。どうせ一緒に帰るんだから」


「……君ねえ、王宮はエッチなホテルじゃないんだよ。ホイホイ女を連れ込めるわけないじゃないか」


「え、ダメなのか!?」


 シンは慌てる。普通に客人として冬那にも王宮に住んでもらうつもりだった。麻衣ならわかってくれるだろうと麻衣の方を見るが、麻衣も気まずげに目を逸らすばかりだ。


「一応僕らは王族なんだ。みんなの上に立ってる立場だよ? 知り合いだからって軽々しく特別扱いはできないさ。僕らは基本的に、全員を同じように扱わなきゃならないんだから。じゃなきゃ、全員を王宮に連れて行かなきゃならなくなるよ?」


 麻衣もうなずく。


「シンちゃん、葵の言うとおりや。ウチらの生活費って、税金なんやで? 知り合いやからで簡単に受け入れるわけにはいかんわ。冬那ちゃんは悪いけど、まずは一人でやってみてくれへんか?」


「私も先輩たちに迷惑は掛けられません! シン先輩、私は大丈夫です!」


 冬那は屈託のない笑顔を見せる。葵と麻衣にここまで言われ、冬那本人も来ない気のようなので、シンは折れた。


「まぁ、そういうことなら仕方ないか……」


 冬那は一人で広場に向かい、シンたちは遠くから冬那を見守ることにする。




 冬那が他の者たちと一緒に順番待ちしてお金を受け取った頃には、スカウトのため商店街や農場の人々が集まってきていた。普通の転生者ということで、シンが転生したときほどの数は来ていないが、それでも百人ほどが来ているのではないか。


 シルフィードとの大規模交易が復活したことで、今のアストレアはそれなりに景気がよくなっており、求人の口には事欠かない。すぐに転生者たちは仕事を見つけ、広場から消えていった。


 ところが、冬那のところには誰もスカウトに行こうとしない。冬那はまごまごと辺りを見回すが、無視されるばかりだ。シンは授業参観で仲間はずれにされる我が子を目撃した保護者のようにハラハラする。


「おい、どうして冬那のところに誰も行かないんだよ!」


 羽流乃はつまらなそうに言った。


「そりゃあそうでしょう。彼女は種なしですから」

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