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転生魔王のワールド・リバースド ~ハーレム魔王が地獄に墜ちてハーレム魔王になる話~  作者: ニート鳥
第3章 私はハーレム潰します/私もハーレム入りたいです!
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2 世継ぎ

 シンが落ち着けたのは、朝食の時間になってからだった。王宮で追いかけっこをしていると、何事かと羽流乃が飛んでくる。事情を説明するとくだらないことで騒ぎを起こすなと怒られた。羽流乃は葵や麻衣にも説教する。


「お二人とも、立場を考えてくださいまし! お二人が勝手なことをするたびに我々臣下は振り回されるのです!」


 対する葵も麻衣も反省の色は全くない。


「だって仕方ないじゃないか? 結婚までしたのにシンが僕のことを相手にしてくれないんだ。寂しくて夜、体がうずいちゃうよ……!」


「せやせや。レスはあかんやろ! 世継ぎができへんで!」


「はいはい。わかりましたから、さっさと食堂に行ってくださいまし! コックももう起き出しておりますから!」


 羽流乃は軽くあしらうが、麻衣は無駄な挑発をする。


「羽流乃ちゃん冷たいなぁ。ほんまは羽流乃ちゃんも仲間に加わりたいんやろ?」


「ふざけないでくださいまし! どうして私が種なしなどとまぐわう必要があるのですか! 仕事がありますので、これで失礼しますわ!」


 羽流乃は湯気が出そうなくらいに顔を真っ赤にして肩をいからせ、去っていった。


「何もそこまで怒らんでええやないか」


 麻衣は憮然とした表情を浮かべるが、潔癖な羽流乃に下ネタが通じないのは仕方ない。前世であれば最低でも教科書で殴られていた。場合によっては竹刀、木刀が出てくる。いやまあ、それでもぶっ込むのが麻衣なんだけど。


 ともかく、朝の騒ぎは羽流乃に思いっきり冷や水をかけられて終わったのだった。




 その後は普通の一日を過ごす。一応、皇帝となったことでシンにもそれなりに仕事が回ってくるようになった。とはいっても最終決済者として書類にサインするだけの仕事ばかりだが。


 そうして新しく用意された執務室で昼過ぎまで仕事をしていると、羽流乃がやってきた。


「どうしたんだ?」


 ノックして入室してきた羽流乃に、シンは声を掛ける。羽流乃は答えた。


「報告ですわ。新しい転生者が転生の祭壇に出現しました」


 思わずシンは机から身を乗り出す。


「俺たちと同じように日本人が来たのか!?」


 転生の祭壇はグノーム以外にもあるが、日本人が落ちてくるのはグノームだけである。もし冬那が落ちてきていれば……! シンの思いを打ち消すように、羽流乃は顔色を全く変えず首を振った。


「そこまでの魔力反応は感知されておりませんわ。普通の転生者でしょう」


「そっかぁ……」


 シンは再び椅子に腰を下ろす。しかし転生者を迎えるというのは初めてだ。仕事も一段落したことだし、見に行ってもいいかもしれない。


「覗きに行こうかな……。ひょっとしたら火の魔王がいるかもしれないし」


「それはないと思うけどね」


 シンの独り言を拾って、葵が発言した。麻衣もまだ帰っていなかったようで、一緒にいる。ちょうどシンを休憩に誘いに来たところらしい。


「ま、そりゃそうだよな。いればすぐにでも帰れるようになるんだけどなあ」


 シンはそう言うが、麻衣は注釈をつける。


「こいつがほんまに現世の肉体を作れるなら、やけどな」


「そこは問題ないって、前に言っただろう?」


 葵の目が笑っていない。この話でケンカをするのもなんなので、シンは努めて明るく言った。


「い、いいから行ってみようぜ! 前の俺みたいに襲われててもまずいしな!」


「それでは私が護衛に付きますわ」


 羽流乃もついてきてくれるそうだ。さぁ、出発しよう。




 外に向かう途中の廊下でロビンソンにばったり会ったので、外出することを伝えた。普段通り、ロビンソンはニコリともせずに応対する。


「なるほど。了解しました。新転生者の案内は皇帝陛下か女王陛下がなさいますか?」


「いや、ロビンソン、君に任せるよ。……このバカは何をするかわからないから」


 シンの機先を制して葵は決定する。バカ呼ばわりは心外だが、特に自分でやりたいとは思っていなかったので別に構わない。


 ロビンソンは声を低めて、さらにシンに尋ねた。


「ところで陛下……夜の方はどうなっているのでしょうか?」


「は? 夜?」


 シンはキョトンと訊き返す。ロビンソンが何を言わんとしているのか、全くピンと来なかった。まさかロビンソンまで下ネタでシンをいじりたいというわけではないだろう。


「……陛下、世継ぎの話です」


「は? 世継ぎ!?」


 葵、麻衣、羽流乃がいるのにこの男は何を言っているのだ。


「皇帝陛下は時が来れば両女王陛下とともに元の世界に帰られる意向だと聞いております……。そのときに後継ぎがいなければ、必ず戦争になる」


「え……?」


 ロビンソンが至って真面目な話をしているのだとシンはようやく認識する。


「皇帝に即位したことを責めているわけではありません。あなたが即位したことによって、シルフィードはかなり安定した……。だからこそ、この平和を少しでも長く続けたい……」


 シンが即位しなければ、シルフィードはグノームの下風に立たされ続けることとなり、遠からず不満が爆発しただろう。そうすればシルフィードは戦国時代に逆戻りだ。しかしシンの即位によりグノームとシルフィードは友好関係を保ち続けることができ、未だ麻衣に服さない大貴族たちの抵抗も弱まりつつある。


「いきなり皇帝も女王もいなくなれば、グノームとシルフィードを纏める方法などない……! 絶対に必要なのです。あなたと二人の女王陛下の子どもが」

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