関係ない。
俺は『ある少女』に出会った。
暗雲。雷鳴。激しい雨。
にわか雨と呼ぶにはいささか強すぎるような、突然の雨。
行き交う人々は皆、斜め下を見ながら早足で。
俺もその中の一人に溶け込んでいた。
が。
そんな中、一人の少女を目にする。
斜め下を向いていても顔が見えた。身長はさほど大きくないのだろう。メイアぐらいだろうか。
そして、斜め下を向く大群の中、この少女だけは顔を上げていた。
まるで空を見上げるように。
そして少女と視線がぶつかる。
少女の目は明らかに俺の目をとらえている。
刹那、奇妙な感覚に襲われた。
記憶の隅でもつつかれるような、チリチリとした頭痛。
それでもこの少女とは面識なんてあるはずもない。
強烈な違和。それでも否定しきれない。
たまらず俺は視線を切った。
また元通りすたすたと早足になる。大群に溶け込む。
一度振り向こうかと考えたが、振り向くことはなかった。
この違和感がなんなのか。そして俺はこの違和感に何を感じたか。
そんなのを感じる間もなく立ち去ってしまえば。
何があろうと俺には関係のないことになってくれるから。
そう、思ったから――