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第一話

何も見なかった夢から覚めた。

はて夢を見ているのか、短い針は予定の時間の一つ先を進んでいる。


ベッドが弾んだ仕組みのような、実際身体がふわっと浮いたような、毎日がこう俊敏に動けたらと思うばかりと朝が来た。


中学最後の思い出作りの日に限って大した事がないのは承知しているから、

この日に期待を持たないことにしている。


最後尾は僕が座るんだ、邪魔だそこを退け。酔いやすい奴は最前列と決まってるだろう。

尻が震え振動する快感、面白いと思わないか。嗚呼愉しい。

窓に傾けた頭から揺れが伝わり、唇が震える面白さを子供の頃に知っておくべきだ。


さよなら富山、一時的に浮気するよ。

バスの中二十分間静かになることなく期待している県民たち、体力温存を忘れるな。


ふと感じた視線 “居るよなこういう奴”みたいな目で見るな。心を見透かされてるようで恥ずかしいだろ。


「ねぇねぇ北海道ってどういう所?」

隣に聞かれたため言った。

「意外と暖かい所のほうが多いんじゃないかな」

「へー物知りだね」

知るわけないだろうそんな事、僕に聞いたら分かるとでも本気で思ったのか。


「飴あげる」前の席から腕を出し膝に全種類の飴が落とされる。

「クッキーあげる」

さらにその横から落とされたクッキーは、膝から落ち真っ二つに割れた。


ミルク味、珈琲味、サイダー味全部好きだ。

どれにしようかなと隣に持って行かれた飴ちゃん最終的に残ったのはミルク味。


無難な物は興味を無くされたら凡庸な人間へと渡る性。

“珈琲味が良かったのにな”

ひっそり思うだけだった。


隣の他人の口の中で歯に当たる音。

珈琲の匂いが憎たらしい。


騒がしく上下左右動き恐竜のように大口を開け笑う。

その時、苦しそうに喉を抑え今にも死にそうな顔をしている。


「先生! 男子が死にそうです」

何事だと真ん中を走ってくる先生。


「どうしたの!」

呼びかけにも一点を見つめたまま動かない。

「死んだの?」

椅子から体をのめり込ませ熱い視線が一斉に注がれる。


息を大きく吐き「.,....生きてます」と魂が戻ったかのよう

「なら良いのよ」と戻っていく。

先生本当に良いんですか。


それを合図にゾロゾロと静かに元の席に座っていく。

友達と顔を見合わせたり、輝いてた目が虚ろいていく。

つまらないとばかりに。


「死ぬかと思った。まだでっかい飴呑み込んじゃったよ」と笑っている。

珈琲のバチだ。


僕の怨念が伝わったみたいだな


“味わわせてたまるか”

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