プロローグ
気分転換に書いてしまった。
プロローグ 『ハーメルン事件』
「……ではお時間となりましたので、先般発生いたしました世界同時多発の大規模拉致事件につきまして会見を始めさせていただきます。
日本対策部発足より、本日までに新たに判明した内容につきまして、ここにご報告させていただきます。既知の内容もあるかとはございますが、これが各国対策部との公式発表となりますので、一部報道・ネットでの流言等に惑わされない様、改めて報告をさせていただきます。資料につきましては本会見終了後、午後8時より被害各国の対策部ホームページにて国民の皆様にも閲覧できるように準備を進めております。
質疑応答につきましては、後で時間を設け、返答させていただくことにさせていただきます。ご了解ください。
……本事件の被害発生を確認できているのは現在28カ国。事件の発生日時は、日本時間**月**日**時**と推測されます。これと全く同時刻に11カ国の事件が発生していることを関係各国より確認いたしました。
残り17カ国については各国警察・軍の調査を待っている段階ですが、この時刻と同時、またはほぼ同時刻と思われます。
我が国にて発生時刻を確認できましたのは、ゲーム攻略雑誌の出版会社『フルクリア』の新作オンラインゲーム『ワールドエンド3』攻略編集部内の監視カメラ、さらにゲーム機本体に備え付けられていましたゲームキャプチャー内のログより確認することができております。
正面のモニターをご覧ください。
発生推測時刻に監視カメラに写っていました『ワールドエンド3』をプレイ中の『フルクリア』社員3名が、画面より発した光につつまれ、消えていく一連の映像となっております。
ご覧のとおり、ゲーム機に向かってプレイ中の人物だけではなく、その後ろで作業中の方、ゲーム自体には全く関わっていない方も行方不明となっています。
このことから、被害者は、ゲームの主たるプレイヤーのみならず周囲の光に包まれた2次的被害者も存在すると考えられます。
今回、映像に映る社員3名のご家族の承諾を得まして、事件解決に少しでも役立つならと、本映像を公開させていただきました。
こちらの映像を分析中でありますが、現時点で映像に加工・修正等が行われた痕跡は確認できておりません。
……『ワールドエンド3』を開発した『ワールドエンド・コーポレーション』への家宅捜査についてですが、現在調査中の内容も有り、一部お答えできないこともあることをご了解いただきたく思います。
『ワールドエンド3』を開発した部署の正社員並びに委託職員32名のうち、事件発生時に体調不良のため有給休暇を取っていた1名と、販売促進のため会社外に営業に同行した2名。計3名以外の所在については現在行方不明となっており、関係各所が全力で捜索に当たっています。
ですが、『ワールドエンド・コーポレーション』の正面および裏口、『ワールドエンド3』開発本部入口の監視カメラには29名の出入りは確認できておりません。
ですが日本時間**月**日**時**分に『ワールドエンド3』開発本部入口の監視カメラに、『フルクリア』にて確認できた発光現象と非常に酷似したものを確認しております。
推測でありますが、29名の関係者も『ハーメルン事件』に巻き込まれた被害者である可能性を考慮している次第です。
……はい、はい。
ただいまのご質問2点につきましてお答えさせていただきます。
まず1点。事件発生より3日が過ぎまして、被害者の全体数がかなり把握できてきてまいりました。
現在被害者数は被害各国で確認できただけで51万4027名となっています。
これは現在の数字であり、おそらくこれにあと数千ないし、万に届く数字が追加される可能性を危惧している次第です。
マスメディアでの報道でも一部ありましたように、被害対象者の年齢は10代より80代までと幅広くなっていますが、光を浴びたにもかかわらず拉致被害にあわれていない方も存在を確認しています。
あくまで推論ですが、年若く自己での判断の出来ない人物や、年配の方のうち認知症などで判断能力が衰えている方が除かれている印象です。
この点から、この件が不特定多数を狙ったものではなく、意図的に被害者を選別した悪意を感じています。
……はい、そういうことになります。
各国政府ともに、今回の事件は何者かの意思による非人道的な悪辣な行為であることは間違いないだろうと考えています。
そして2点目でございますが、現在我々も含め被害各国の警察・軍・民間を含めまして解決の糸口すらつかめていない状況でございます。
恥ずかしながら、この事件において従来の捜査方針が正しく成果を上げることができるのかすら、わからないと申し上げます。
これがオカルト的なものであるのか、未知の技術によるものであるのか、またはそれ以外の我々の想像のさらに外側にあるものなのか。
今回会見を開かせていただいたのは、この件に関して情報を広く集めるためでございます。
これに関しては被害各国全てで同様の情報収集を行うことを決定しております。
この忌まわしき事件。これを我々は『ハーメルン事件』と呼称することといたしました。
我々は情報を求めています。
どんなことでも構いません。
その情報が使える・使えないは問いません。
どうか、糸口となる情報を我々に提供ください。
我々、いや、あなた方も含め、世界全ての力でこの非人道的なこの事件の解決を成し遂げ、必ずさらわれた50万を超す人々の笑顔を取り戻す。
そのための『全て』を我々は、求めています」
20**年**月**日
『ハーメルン事件』日本対策部本部長 稲山勉 第一回定例会見より抜粋