幼馴染恋愛事情
「俺の事好きだって言えよ」
幼馴染の洋子の顔は夕陽に照らされてオレンジ色に見えた。
生まれつき明るい髪はそれを受けもっと明るく茶色く光っている。
洋子は俯いて首を横に振り、それから意を決したよう俺を見る。
「ごめん、修くんの事は嫌いじゃないけど、でも……」
でも、の先に続く言葉を俺は知っている。
その名前を洋子の口から聞きたくなくて舌打ちをすれば怯えた目をして洋子は俺を見上げた。
小学生の頃は全く変わらない程背丈は一緒だったのに、数年でこんなに小さくなっちゃうなんて、さ。
卑怯だよ。
そんなの、好きになるに決まってるじゃん。
なのに。
「洋子」
俺の背後から聞こえる俺より早く変性期が過ぎた大人びた声が響く。
ばっと後ろを向くと坊主頭に俺より頭ひとつデカイ男。
「新くんっ!」
洋子の熟れた果物を剥いた瞬間に溢れ出る果汁のような声に胸が打たれた。
昔は俺の事も好きだって言ってくれたじゃないか。
それなのに、どうして、どうして新也なんだよ。
どうして俺じゃ無いんだよ。
二人から逃げるよう新也の脇を抜けて歩き出せば背後から彼が俺を呼ぶ声が響いた。
俺より先に大人になったようなそれに感じるのは強い嫉妬で、けれど、それだけが洋子の心を掴んだのではないと知っている。
そういう事じゃないんだ。
俺も新也も洋子の幼馴染でずっと一緒に居て。
ただ、ほんの小さなすれ違いで俺は洋子に選ばれ無かっただけだ。
洋子、ごめんな。
でも、俺を本当に選んで欲しかったんだ。
だから、言わなかったんだ。
知っていて言わなかった俺を新也はあいつなりの気遣いだとか言うだろう。
それを大好きな新也に言われたらきっと洋子は信じる。
だから、俺は、待ってる。
洋子が新也に告白し、新也がその事実を言うその時を。
ごめん、俺、カノジョが出来たんだ。
洋子が新也の中に入る隙なんて無いって分かるその日まで、俺は、待つよ。
三角関係が書きたい!と思って思い付きで書いてみたら案の定暗い悲恋になりました。
またチャレンジします。