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第19話 尾牟派麗子〜目堂冴①

 夏休み。

 水泳部は、合宿です。

 書道部は、文字と向き合う時間です。エアコン付きです。

 レディースは、総会後、休息です。

 …女鹿蘭(メガラ)は、オムライス弁当を作っていました。

「夏休みなのに、呼び出しだって?

 大変だね。しかも弁当持ち指定だなんて。

 …はいこれ。

 お弁当作っといたから、持ってって。」

 女鹿蘭(メガラ)は、詰め終わった弁当を空玲須(クレス)に渡しました。

「おお!

 …ありがとう、女鹿蘭(メガラ)。

 母さんに言うの忘れてたから、弁当なし覚悟だったんだ。」

「暑いから、保冷剤も入れといた。

 後で洗って返してね。」

「ああ、ありがたや。

 必ず綺麗に洗って返します。」

 女鹿蘭(メガラ)に見送られて、空玲須(クレス)は夏休み中の学校にでかけていきました。


 生徒玄関には、張り紙がありました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

            三組 空玲須(クレス)へ。


   打ち合わせ場所の変更について。


 本日の打ち合わせについて、以下のように変更する。


         記


 1.場所  聖リディア女学院 会議室

 2.時間  午前10時


 ※ 携帯がなく連絡手段がないため、

   ここに張り紙をしておく。

 ※ 場所、移動手段については下の図で

   確認の上、遅れることのないように

   すること。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「………。」

 理不尽な変更にも、空玲須(クレス)は不思議と腹も立ちませんでした。何だか、昔からこういう感じだったような…。

 張り紙を取って、バス停へ向かいました。


 聖リディア女学院。

 高所得層の子女ばかりが通う、いわゆる「お嬢様学校」です。登下校は全て送迎。セキュリティ万全の敷地内は、一般人は侵入できない、ブラックボックスと化していました。

 空玲須(クレス)は、バス停からダッシュして、何とか午前10時までに校門に着くことができました。しかし、固く閉ざされた門に行く手を阻まれます。

 ガン!

 校門を叩いてみました。

 ぶぁーん、ぷぁーん…。

 けたたましくサイレンがなり、壁のあちこちに設置された赤色燈が回転しました。たちまちガードマンに取り囲まれた空玲須(クレス)。

「あの、ここの会議室に呼び出されたんですけど。」

 空玲須(クレス)は、持ってきた張り紙をガードマンに見せました。詰所のインターホンで、ガードマンの一人が、何やら話します。

「…こちらへ。離れないでついてきて下さい。決して他の場所に立ち入らないように。」

 ガードマンに囲まれたまま、空玲須(クレス)は廊下を進みました。会議室の前で、ガードマン一行はビシッとと止まります。

「お入り下さい。」

 空玲須(クレス)が会議室に入ると、そこには小学生ぐらいの女の子と、眼鏡をかけた女性が座っています。女の子が席を立って自己紹介します。

「わらわが、聖リディア女学院の生徒会長、尾牟派麗子(オムパレー)じゃ。

 そちが、或呉巣(アルゴス)高校の空玲須(クレス)じゃな。

 ようこそ、と言っておこうの。」

「初めまして。空玲須(クレス)です。」

 空玲須(クレス)は、立ち上がって礼をしました。

 もう一人の女性はカタカタと文字盤を押し、一言もしゃべりません。

 尾牟派麗子(オムパレー)は、席に座り直し、話し始めました。

「突然でびっくりしたじゃろうが、そちにさせたい仕事がある。」

  空玲須(クレス)も座り直し、改めて尾牟派麗子(オムパレー)を見ます。

 …幼い顔立ちと体つき。テーブルからは肩がかろうじて出るくらいの身長。どう控えめに見ても、中学生になったばかりか、それよりも下。

 そして、その「年配者の喋り口調」。自分のことを「わらわ」とか…。もう、気になって仕方がありません。

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