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第15話 井尾玲〜美濃田虚洲の迷宮③

 女鹿蘭(メガラ)は自分のスマホを取り出して、出井亜寧羅(デイアネイラ)に声をかけた。

「マップ共有して。わたしのスマホを空玲須(クレス)に貸すから。」

「えっと、どうやるんだっけ?

 設定から、あれ?」

「貸せ。

 …ほら、顔認証!」

 必歩流帝(ヒッポリュテー)は二人からスマホを取り上げると、あっという間に設定を完了した。

「…チームでも、マップ共有よくやるから。ラチられる奴もいるんでな。」

 空玲須(クレス)は、三人が何をしているか分からないけど、黙っていました。…説明されてもどうせ分からない。

「空玲須(クレス)。

 これ持ってって。画面消えてもいいから。そしたら、わたしたちにどこにいるか伝わる。」

 必歩流帝(ヒッポリュテー)がさえぎります。

「いや、画面は出しとけ。

 空玲須(クレス)。使い方を覚えろ。絶対、これとこれには触るな。

 …いいか、これが出井亜寧羅(デイアネイラ)のスマホ。お前の位置はここ。今は同じところにいる。

 迷ったらこれを見て、出井亜寧羅(デイアネイラ)のスマホに近づくように歩くんだ。そしたら脱出できる。

 いいか、もう一度言う。

 二つだけ。これとこれには、絶対触るな。触ると画面が消える。お前には戻せないだろうからな。」

 長い説明は分かりませんが、触ってはいけないところは覚えました。

「女鹿蘭(メガラ)。画面オフの制限時間を無限に変えろ。ついでに音声通話もオン。」

 女鹿蘭(メガラ)は頷いて設定を変え、スマホを空玲須(クレス)に手渡しました。キュッと、空玲須(クレス)の手を握りしめます。

「逃げてきても、誰も文句言わないよ…。

 いいえ、わたしが言わせない。だから。」

「ありがとう。行ってくるよ。

 外のみんなを頼む。」

 空玲須(クレス)は女鹿蘭(メガラ)のスマホを手に、黒く染まった校舎に入っていきました。出井亜寧羅(デイアネイラ)は、空玲須(クレス)とそれを見送る女鹿蘭(メガラ)をじっと見ていました。


 校舎内は真っ暗です。でも、スマホが煌々と光るおかげで、足元は見えていました。

 空玲須(クレス)は改めて「すまほ」を見ました。

 光る画面に赤い点。出井亜寧羅(デイアネイラ)の位置です。まだそんなに離れてはいません。たいまつより明るく、相手の場所も分かる。

「何か、すげえ道具だなコレ。」

 その光を頼りに、校舎を歩き回ります。しかし、様子が違いすぎます。廊下は狭く、すぐに行き止まりに突き当たります。普段の校舎では、こんなことはないはず。

 迷いに迷います。

「空玲須(クレス)くん、大丈夫?迷ってない?」

 突然の声に、空玲須(クレス)は危うくスマホを落とすところでした。

 …どうやら、スマホから出井亜寧羅(デイアネイラ)の声が聞こえてきます。

「聞こえてる?

 …あ、通話オンだから喋ったらこっちに聞こえるよ。」

「ああ、真っ暗だ。道も変わってる。」

 空玲須(クレス)は、半信半疑で返事をしました。

「空玲須(クレス)!無事で…よかった。」

 女鹿蘭(メガラ)の声もします。泣いてる…?

「んとね、空玲須(クレス)くんはまだ本棟の端っこぐらいにいるよ。ちょっと歩いてみて。」

 出井亜寧羅(デイアネイラ)の声に従って、道を進む空玲須(クレス)。

「あ、わかった。その方角で合ってる。行き止まりとかで向きが変わったら気をつけて。」

「わかった。」

 空玲須(クレス)は正直何も分からないけど、そう返事をしました。

 アイツらに任せれば大丈夫。そんな気がしたからです。

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