探偵事務所は今日も平和です
探偵事務所は今日も平和です
俺は名探偵だ……と言えればよかったんだが、今はしがない探偵さ。
「暇だ~!!」
バタバタ
知名度も人気も皆無。それに事務所があるのは、まず人の入らない旧市街地だし
「どうしてかっこいいとかそんな理由で旧市街地に事務所建てちまったんだよ俺!!」
「……神無月さん、うるさいです!!」
「ごっ、ごめん」
俺を怒鳴ったのは助手の柏木千夏。どうしてかは知らないが俺に憧れたらしい。
そんな素振り三年間一回も見たことないが、本当なのか?
ガチャ……カランカラン
「あの、ここが神無月探偵事務所で合っているでしょうか?」
久しぶりにお客が来たぜ、やった!!
「はい! そうです、合ってます、ここが……」
「食いつきすぎ怖がったらどうするの!」
バチン
「うちのがすみません。安心してください合ってます」
「…………」
引かれてる、肌で感じるぞ。俺はお客に……引かれている。
この人ちゃんと依頼してくれるのかな、別のところに行かないかな?
不安なのがバレているのか、千夏ちゃんに小声で怒られてしまった。
「あの、依頼をしたいのですが……」
俺は久しぶりに来た依頼に舞い上がるのを我慢した。
ドン
「痛っ!?」
「変なポーズするからですよ、まったく」
身体の方が我慢出来ていなかったのか、まったく俺の身体は正直だなもう
「来るところ間違えたのかしら?」
やばいこのままだと依頼を受ける前に帰ってしまう!!
「安心してください、このバカは仕事はきっちりこなしますので……普段はこんなバカですがね」
「一応歳上だよ俺……バカバカって酷くない?」
「こほん、それでは依頼内容をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
スルーされた。
……そういうことか。
「その依頼内容ってもしかして父親を殺した犯人を見つけてほしいで合ってる?」
「何を言ってるんですか失礼すぎますよ神無月さん!!」
「……どうして分かったのですか?」
「だって君から血の匂いがするから」
「それだけだとわからないじゃないですか。当てずっぽうですか、これでは信用できません帰ります」
「帰るなら返り血の付いてる靴ぐらい持って帰れ。変に疑いをかけられてもこっちが困るんだよ」
「返り血の付いてる靴? これは元々こんな色ですよ」
「…………そういうことですか」
千夏ちゃんも理解してくれたみたいでよかった。
「その靴はアルヴィスの新作だろ、それぐらい知っている。だからおかしいんだ、そんなに赤いのが」
「そうですけど、なにかおかしいところでもあるんですか?」
「あるんだよ。今年のアルヴィスが出した新作の色はホワイトレッドしかない」
「間違えることぐらい人なんですからありますよ」
「そうだよな、この時間は雨が降らないとか言ってた天気予報なのに雨が降ってるんだもんな」
「本当にそうですよ!!」
「その天気予報を言ったのは昨日の七時三十五分のラッキーモーニングの秋田正敏しかいない。それに秋田正敏は必ず外れることで有名な天気予報士だ、この国ではな」
「なっ、なにを言って」
「動揺するなマゼンタ・サンラズ」
「私の名前をどこで知った!!」
「普通にアンタのジャンパーの右ポケットに入ってるパスポートでだけど」
「……こんな隙間で見えたっていうのですか?」
「まあそれは置いといてマゼンタさんパンツ脱いで」
俺の発言を聞いた千夏ちゃんはなぜか俺を叩いた。
「変態さん、言い方ってものがあるの分かってますか」
「千夏ちゃんに言ってないでしょ、なんで叩くの」
「自分の胸に聞いてください。マゼンタさんでしたっけ、下着の中に隠してる物を出してください」
それを聞いたマゼンタさんは逃げ始めた。
ドンッ!!
「マゼンタさん、逃げないで!!」
ガサゴソ
「ありました!!」
「この睡眠薬を使って眠らせてその凶器の義足で蹴り殺した。極めて単純な手口だね。千夏ちゃん、もう少し抑えてて」
「言われなくても分かってます」
十分後
サイレンの音が聞こえ始めたあたりから暴れていたマゼンタさんは諦めたのか大人しくなった。
そしてマゼンタさんを警察に引き渡した俺はというと盛大に嘆いていた。
「平和な依頼がほ~し~い~!!」
「でしたら安心してください。チラシを準備しています」
「おぉ!! おぉ? 何この化け物」
「ばっ、化け物とはなんですか!? 猫ですよ猫、ほら見てください可愛い尻尾に耳それにモフモフですよ。どう見ても猫じゃないですか!!」
「……そういうことにしておこうかな?」
神無月探偵事務所は今日も仕事はなく平和です
「それと神無月さん、先々月のお給料ちゃんと振り込んでください」
「暇は嫌だぁぁぁぁぁ!!」
俺は全力で逃走したっ!!
ドスン!!
「逃しませんよ、一緒に足で稼ぎましょう。別にお給料は急いでませんから、逃げないでください。私は神無月さんとのこんな時間が過ごせれば十分ですから!!」
「……千夏ちゃん。分かったよ……あれ、何をするんだっけ」
「頭を打って忘れましたか? 私と付き合うんですよ(うん? 待って待って待って今なんて言った私!!)」
「そうか、そうだった……か!? 俺と千夏ちゃんが付き合うって言ったのか、聞き間違いか!!」
「……きっ、聞き間違いじゃありません。足で稼ぐのに付き合ってもらうって言ったんです。かっ、勘違いされても困ります。早く行きますよ、神無月さん」
ほのかに頬を赤らめ走って行った千夏ちゃんを追いかけた。
「待ってよ千夏ちゃ~ん!!」
『知名度もなく人気も皆無、その上人通りの少ない旧市街地に存在する。
それが神無月探偵事務所、どんな依頼でも引き受けます!!』
おしまい
見つけて読んでいただきありがとうございます!!
ミステリーとは言えないと思います




