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7.海外の反応集(笑)

その夜、大陸で最も星空に近いと言われる小国、ルミナスの王立天文台は、一人の老学者の叫び声に揺れた。

「ありえん……星図のどこにも存在しない星が……いや、違う、あれは星ではない!」

 大陸中の天文学者や魔術師たちが、夜空に起きたその小さな、しかし致命的な異変に気づくのに、そう時間はかからなかった。

 周期運動を無視して、一点に留まり続ける、動かざる光点。

 高位の観測魔法が、その正体を冷徹に暴き出す。

 遥か成層圏の彼方に浮かぶ、巨大な「城」。

 おとぎ話の中だけの存在、数千年間、誰の目にも触れることのなかった伝説の遺産、『天空城アークノア』の再臨。

 その報は、恐るべき速度で大陸全土を駆け巡り、世界を大きく揺るがし始めた。

【グラドニア帝国 帝都ヴァイス】

 大陸最強の軍事力を誇る帝国の玉座にて、皇帝ゲルハルトは、魔法の水晶に映し出された城の姿に、猛禽のような鋭い眼を輝かせていた。

「素晴らしい……! まさに天佑! 神々は、この我に大陸を統べよと、天から梯子を降ろしてくださったわ!」

 玉座の間に集う将軍たちもまた、興奮を隠せない。

「主兵装は、大陸の一部を消し飛ばす威力と聞き及んでおります!」

「あれさえ手に入れれば、抵抗を続ける西側諸国など、一捻りですな!」

 皇帝は満足げに頷くと、高らかに宣言した。

「全ワイバーン部隊に通達! 編隊を組み、天空城へと向かえ! 何としてもあの城を確保し、我が帝国の覇権の礎とせよ! これは命令である!」

 帝国にとって、天空城は手に入れるべき「究極の力」以外の何物でもなかった。

【アルテア連合王国 賢者の円卓】

 打って変わって、魔法と調和を重んじる連合王国の円卓会議では、重苦しい沈黙が支配していた。

 議長である老エルフ、賢者ルシウスが、震える手で古代の文献を紐解く。

「……伝承は記しておる。天空城は『過ぎたる力』。人の手に余る、災厄の引き金である、と。かつてこの地に栄えた古代文明が、一夜にして地上から姿を消したのも、この城が原因だと……」

 一人の賢者が憂慮の声を上げる。

「好戦的なグラドニア帝国が、既に動き出したとの報せも入っております。万が一、あの力が彼らの手に渡れば……」

「大陸は、血と炎に沈むであろうな」

 彼らの結論は、帝国とは真逆だった。

 天空城は、誰の手にも渡ってはならない「封印すべき脅威」。連合王国は、伝説に残された古代の封印術を再現すべく、大陸中の賢者たちを密かに招集し始めた。

【??? 地下神殿】

 一方、地上のどこか。蝋燭の光だけが揺らめく地下神殿で、フードを目深にかぶった謎の一団が、祭壇の水晶が放つ天上の光にひざまずいていた。

「ついに……ついにこの時が……」

「永きに渡る我らの祈りが、天に届いたのだ」

「『管理人』様は、きっと我らをお導きくださる……」

 彼らは天空城を「崇拝すべき聖体」と見なしている。その正体も目的も不明だが、彼らもまた、新たなる「管理人」との接触を求め、影の中で静かに動き始めていた。

【天空城アークノア 内部】

 そんな地上の大騒ぎなど、露ほども知らず。

 俺、カインは、あてもない散歩の末に、巨大なガラス張りのドーム状の空間へとたどり着いていた。

「うわ……」

 思わず、感嘆の声が漏れる。

 そこは、まさに楽園と呼ぶにふさわしい場所だった。

 地上では見たこともない、七色に輝く花々。淡い光を自ら放つ植物。水晶のようなキラキラとした実をつけた木々。完璧に管理された生態系が、そこには広がっていた。

 この城が、本当に兵器なのかと疑うほどの、圧倒的な美しさ。

 俺は、その光景にすっかり心を奪われていた。

「すげぇ……なんだここ。最高の散歩コースじゃないか」

 そして、俺は頭の中に響く声に、最高の提案を投げかける。

「……なあノア、この辺に昼寝にちょうどいい、ふかふかのベンチとか作れないか?」

 世界の運命を左右する城の主の、あまりにも平和で呑気な一言が、花々の甘い香りに満ちた温室に、静かに響いた。

――ここまで読んでいただきありがとうございます!

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これまだ止まりません

次回もお楽しみに!



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