追われる身
ずっと何かに追われていた。仕事では納期に追われ、趣味の創作も締切に追われていた。時間だけではない。最近どこへ行くにも視線を感じるようになった。
ストレスのせいだろうか。そう思い私は休みの日は早めに床に就くことにした。
「それ」は夢の中で実体化した。長く暗い廊下を、訳も分からず走っていた。そこにあったのは焦りと恐怖。何せ後ろからはっきりと足音が重なるのが聞こえるからだ。そしてその足音は、確実に大きくなっていく……。
「篝」
そう声をかけられ部屋の灯りが点けられる。声の方へ顔を向けると、そこには氷のように美しさと冷たさを併せ持つ男性が立っていた。
「大丈夫かい? うなされてたようだけど」
大丈夫なわけないじゃない。そもそもあなた、誰なのよ……。