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王女の成人式典

「部屋の明かり暗くするね」

 天井の明かりが弱まっていく。

「早速始めようか。ここに触れてカティアのことを思い出すんだ。生きていれば壁に何か映るはず…」

 師匠が魔道具に触れる。

「カミラ…」

 魔道具は何も映さなかった。

「私は大丈夫。これではっきりしたならそれでいいんだ。次はシックの番だね」

 師匠は平気なフリをしていた。

 こういうとき何て言えばいいのだろう…。

 結局何も言えず魔道具に触れた。

 すると地面に座り込んでいる人たちの姿が映し出された。

 弟のライ、妹のレイスとシルフィア、それに父さん、母さん…。

 良かった、皆生きてる!俺の記憶より少し瘦せているようにも見えるが…。

「もう手離していいよ!後はボクが操作するから見たいところがあれば教えて」

 どうやら村人たちは全員無事のようだった。瘦せて牢屋の中にいるのが無事といえるのかはさておき。

 その後は牢屋まで辿り着くのルート、見張りの配置などを確認した。

「この魔道具凄すぎませんか?」

「そうでしょ、そうでしょ!これが一般に出回ったら世界が変わっちゃうよ!売る気ないけど!」

「何でですか?」

「ボクの魔道具で不幸な人を増やしたくないからさ!ボクの目がないところでは使わせる気はないよ!」

 トルミさんに別れを告げ、ドルクたちと合流した。

 

 エルシド王国へと戻り、現在首都エルドラーナにいた。

 最近のリアムの動きなど情報を、兄がお世話になった兵士ガードナーさんから聞くためだ。

「はぁ~、すげえな王都って。でかい城もあるし、こんなに街が広がっているも見たことねえぞ」

「お兄、今日お祭りでもあるのかな?こんなに人がいっぱい」

「この香り間違いない、パンだ。あそこの店だね。あれ絶対美味しい店だよ。私の鼻がそう言ってる」

 この人食べ物を見つけるとうるさい。ずっと話しかけてくるのだ。だったら食べ物を買い与えてしまった方が静かになるというのが分かってきた。

 それにドルクのおかげで魔物の素材を沢山持ち運べるようになり、お金には余裕も出てきていた。

「はいはい、じゃあ行きますよ」

「やったー!」

 嬉しさのあまりスキップを始めた。

 子供か?


 店の全種類のパンを買う羽目になった。この人に遠慮とか期待しちゃだめだなと改めて思った。

「お買い上げありがとうございました!」

「お姉さん!今日祭りでもあるの?」

 エマネがパン屋の店員に尋ねる。

「今日はないけど、明日王女様の成人式典があるのよ」

「え?じゃあいつもこんなに人がいるの!?」

「そうね。初めて王都に来る人は皆驚くわ。楽しんでね」

「うん、ありがとう」


 兄がお世話になった兵士ガードナーさんの元を訪れていた。

「君がセレスの弟か」

「はい。シックと言います。何か変化はありましたか?」

「軍は動かせないままだし、リアムに関してもあれから何もない。ただし、協力してくれる冒険者が見つかった」

「本当ですか?」

「本当だ。しかも最近注目されているパーティなんだ。溶岩竜の討伐、エカルシア迷宮の踏破、魔族のタウロスから村を救うなど数々の功績を短期間で挙げているんだ」

 溶岩竜やタウロスはAランクに相当する。さらに俺が死にかけたエカルシア迷宮を踏破ってことは、あのボスを討伐したってことか…。

 それが事実ならドルクと同等かそれ以上の強さだろう。

「しかも功績が認められて王女様の式典で護衛として抜擢されたらしいんだ。つまり国が認めるほどの冒険者ということだ。俺も実際会ってみたが若いながらしっかりした性格だった」

 そんな冒険者が協力してくれるなら願ったり叶ったりだ。

「護衛の任務が終わり次第、合流してもらうでいいか?」

「ええ。ありがとうございます。それでお願いします」


 協力者と会うまで王都に滞在することとなった。

 折角だし王女様の成人式典を見に行こうとなり、王都の中央広場へと足を運んだ。

 広場は王女様を一目見ようと人で溢れかえっていた。

 待っている間近くにいた二人の男から話し声が聞こえてきた。

「皆、興味津々って感じだなあ」

「そりゃ、血まみれ王女が気になるんだろうさ」

 血まみれ王女?

「気に入らない人間を魔物を使って殺して、血だらけになったから血まみれ王女だっけか」

「ああ。王族だからって何しても許されるって考えてやがるんだろ。さっさと王国から出て行ってほしいが、そんなことがあっちゃ結婚なんて無理だろうしな」

 嫌な話を聞いた。

 ラッパの音が鳴り響き、王女様と護衛の冒険者が現れた。

 協力してくれるという護衛の冒険者の顔を見ておこう、と考えたが…。

 え…?どうして…?

 現れた冒険者は俺の元パーティメンバー、アルノとエリナだった。

「あれがアルノ・フレイヤとエリナ・スノウかあ」

「初めて見たな。すごく強い冒険者って話だろ」

 手を振る王女様の隣に立つ二人とそれを下から眺めるだけの俺。

 師匠に教えてもらえばいつか二人を追い越せると思っていた。でも現実は違った。

 呆然と二人を見ていたときだった。

 空から王女様に向かって一つの小さな玉が勢いよく飛んで行った。

 二人が王女様を守ろうと動いたとき、王女様の前に赤い爪を持った熊の魔物が姿を現した。

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