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熱帯雨林の村

 セリフィス大陸に着いた後、雲に擬態した魔物ノクシャラの生息地である熱帯雨林に来ていた。

「あ!村が見える。良かったー。大きい獣道にしか見えなかったけど、この道であってたね」

 師匠が村人を見つけ、ノクシャラが近くにいないか聞く。

「あんたらもか。昨日もノクシャラの討伐をしに来た冒険者がいたな。」

 ここの村人もそうだが、熱帯雨林に住んでいる人たちは肌がかなり黒い。

「あそこに山が見えるだろ。その辺りにいる」

「ありがとう。早速行こうか」

「あそこまでは半日くらいかかる。折角だから今日はここに泊まったらどうだ?近くの村からも結構離れてたから疲れているだろう?」

 俺にとって熱帯雨林なんて来るのは初めてのことだった。慣れない旅で疲れた状態で魔物とあまり戦いたくはない。泊めてもらえるならそうした方がいい。

「じゃあお願いします。お礼に何か手伝います」

「そうだな。今からナナバを取りに行くからそれを手伝ってくれ」

 泊まる部屋に荷物を置いて村人について行った。

「あの黄色い実を取ってくれ」

 村人は身長の何倍もある木の上の方を指さす。

「何か道具とかは?」

「このナイフを使ってくれ」

「え?これを投げるんですか?」

「んなわけあるか!上まで登って木と繋がってるところを切るんだ。俺たちが下でキャッチするから」

 この木を登る…?これを毎日やっているのか?

 あんな高いところから落ちて頭を打ったら即死だぞ…。

「無理なら私がやろうか?」

 冒険者がこんなことで怖気づいてどうするんだ。

「大丈夫です。やります」

 …とは言ったものの木の表面はツルツルしていて滑るし、登り切った後もあまりの高さに手が震えるしで思ったより時間がかかって大変だった。

 実際何度か滑り落ちた。足の裏を木の幹にこすらせてなんとか勢いを殺して大丈夫だったけど。

 ホント死ぬかと思った…。

 明日の朝までに体力戻るかなぁ。


 ある程度ナナバを取り終え、村に向かって歩いていた。

 後ろから足音が聞こえ、振り返ると少し血のついた服を着た青年がいた。

 いつの間に!全く気付かなかった。

「ドルク!狩りが終わったところか?」

「ああ。そいつらは?」

「冒険者だよ。収穫を手伝ってもらってたんだ」

 ドルクと呼ばれた青年がこちらを睨む。

「冒険者?用が済んだらさっさと村から出ていけ!」

 そう言い残して走っていった。

「すまんな、村のものが失礼なことを…。前は冒険者とは楽しそうに話していたんだがな。むしろ冒険者になりたいとすら言っていたんだ」

「何かあったんですか?」

 師匠が尋ねる。

「聞いたことはあるが教えてくれなかった。ただあいつは妹のことをいつも気にかけているから、理由があるとすればそれかもしれないな」

「ねえシック、あの子仲間にしよう」

「は!?あんな性格悪そうな奴、絶対嫌なんですけど…」

「魔力の制御が完璧だった。Sランク冒険者に匹敵する強さだと思うよ」

 リアムと戦うことを考えると仲間は増やしておきたいのは確かだ。ここは一旦受け入れるしかないか。


 村に戻った後、料理を作るのを手伝い、村人たちに食事を渡していた。

 村の皆で一緒に食事を取るのがこの村の慣習らしい。

 当然その中にもドルクはいた。

「なあ君、冒険者になる気はないか?」

 師匠が食事の載った皿を手渡しながら尋ねた。

「お前らまだいたのか?冒険者なんてクソな仕事、誰がやるか!」

「クソ?お前に何が分かるんだよ!危険な場所に飛び込んで、誰かの命を救う。そんな瞬間を経験したこともないくせに、偉そうに冒険者をけなすな!」

 誇りを持ってやっている冒険者を馬鹿にされたことが許せず、叫んでしまった。

「弱そうなチビにそんなことできるとは思えないけどな!どうせ役立たずで家から追い出されて渋々やってただけだろ」

「チビだと…!あのなぁ、お…」

 俺たちの間に少女が割り込み、ドルクの胸ぐらを掴む。

「ちょっと、お兄!この人たちずっと手伝ってくれてたんだよ!そんな言い方ないでしょ!」

「ごめん、エマネ…」

 あんなに怒っていたドルクが急に大人しくなった。

 この少女がドルクの妹か。

「ウチに謝ってどうすんの?二人に謝って!」

「分かった」

 エマネが手を離し、ドルクがこっちを見る。

「さっきは言い過ぎた。ごめん」

「いや、こっちこそ熱くなり過ぎた…、ごめん」

 謝ってすぐドルクは俺たちから離れて行った。

 師匠がエマネに質問を投げかける。

「エマネ、元々ドルクは冒険者に憧れてたって聞いたけど、なんであんなに毛嫌いするようになったの?」

「分かんない。急に冒険者なんかならないって言い出したんだ。別に冒険者に何かされた訳でもないしさ」

 それなのにあんなにキレてたのかよ。

 やっぱりあいつは仲間にしたくない…。

「昔は村から早く出て世界を見て回りたいってキラキラした目でよくウチに話してたんだよね。今は冒険者にあんな感じで当たってたけど前は村の皆にあんな感じだったんだよ」

 逆だったのか。

 とはいえずっと誰かに腹を立て続けてるのか。子供な奴。

「お兄って皆とは価値観が合わないって言うのかな。狩りを教わるとき以外はよく一人で過ごしてたんだ。あんな頭の悪い奴らといると馬鹿がうつるとか言って。大人たちもそんな様子を見て、口うるさく他の子と遊んできなとか言ってお兄が怒る、みたいな感じだったんだ」

 いいとこなしだな。

「師匠、流石にあいつをパーティに入れるのはやめましょうよ」

「冒険者を嫌う理由が分からないんじゃしょうがないか、諦めるよ」

「やっぱりお兄を仲間にしようとしてたんだ。二人ならお兄を任せられるかもと思ったんだけど…、残念」


 朝になり、村を出て一時間もしないくらいのことだった。

「そう言えば師匠、ノクシャラって空を飛んでるんですよね?どうやって戦うんですか?」

「え?そんなのシックが空を飛んで取ってくればいいだけでしょ」

「飛べるか!まさか何も考えてないんですか!?」

「海走れるなら空も飛べる気がするけどなぁ。まあ、なんとかなるでしょ」

 まったく、適当な人だ。

 話しながら歩いていると前から4人組の男女が走ってくる。

 格好からして冒険者だろうか。何やら慌てている様子だ。

「ねえ、何かあったの?」

 4人組は師匠の言葉を無視して俺たちの後ろへ行ってしまう。

 急いでいるからって一言くらいなんか言ってくれればいいのに。

「ん?なんか魔物が近づいて来てる」

 師匠が指す空には雲が浮かんでいて、風に流されているとは思えない速度でこちらへと向かっていた。

 まさか…。

「ノクシャラだ。明らかにこっちに来ようとしてる。きっと、さっきの人たちはあれから逃げてたんだね」

 そう言えば昨日村人が言っていた冒険者ってあの人たちのことかも。

「師匠、迎え撃ちましょう」

「そうしたいのは山々なんだけど、方法が思いつかないな。あの高さ、物を投げて届きそうな距離じゃない」

「じゃあ、ナナバの木に登って投げるとか?」

「それも微妙だけど、それくらいしかできなさそうだしやってみようか」

 二人でそれぞれ別の木に登った。かなり遠くにいたノクシャラは登るのに手間取っている間にすぐそこまで迫っていた。

 すぐに拾っておいた石をポケットから取り出し、ノクシャラへ何度か投げてみるが届かなかった。

 ノクシャラは俺たちの上を素通りしてあの4人組を追いかけていった。

 あれ?あの方向は…。

「まずい、ノクシャラは村の方に向かってる。このままだと村が襲われるかも。後を追おうよ」

いつか書籍化、マンガ化、アニメ化したら嬉しいなって思ってました。どうやったら実現できるか考える余裕もなく自分で決めた週間連載を続けるだけで精一杯…。

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