君が止めねば
中原田狭間には三分以内にやらなければならないことがあった。それは、三分後に自爆するロボットの停止ボタンを押すことである。
しかし狭間の身体はすでに自由に動かすことができるほどの状態でなく、足も棒のように使い物にならない。それでも、止めなければならない。このロボットが爆発すれば、恐らく日本は壊滅状態に陥る。
残り172秒
まず腕を動かす方法を考えなければ。というか、それができなければボタンを押すことができない。狭間はよく考えた結果、もう腕は治らないことを覚悟した。
残り160秒
狭間は一つアイデアを思いついた。確か、この研究所にはサポートアームがあったはずだ。それを探すことにした。あれさえあれば、思考から動作へと繋げられる。ボタンを押せるはずだ。なんとか、首を動かして視覚情報からアームの位置を探った。しかし、なかなか見つからない。
残り130秒
なんとか立ち上がることができた狭間は、とうとうアームを見つけることができた。それは、開発机の上にあった。しかし、狭間はいわば立っているのも不思議な状態、足に爆弾を抱えてる状態だ。がくがくと視界が揺れ、まともに歩くこともままならない。
ふらつく足だけでは動けず、体を捩って机に近づく。体がざらざらとした床に擦れた。
残り85秒
狭間はようやく机にたどり着いた。なんとかの思いで立ち上がる。アームを頭、本質的には脳を近づける。
「開発者の脳波を検知。アームを装着します」
自動音声がそう告げると、アームの右腕と左腕が連結し、繋ぎの部分にプロペラが出現した。プロペラが回転し始める。ぐわんぐわんと歪んだ視界のせいもあり、その螺旋を見ていると吸い込まれるように感じた。
残り52秒
アームは狭間の頭部に装着された。あとは今にも爆発するロボットの、動作停止ボタンを押すだけだ。脳内で、狭間はひたすらにロボットのボタンを押すシュミレーションをし続けた。何回も、何回も。一分を切り、ロボットの自爆へのカウントダウンは始まっていた。そしてついにアームは動く。
残り16秒
アームが油の切れたように鈍い動きをしながら、ロボットのボタンへと向かう。アームは狭間の首の後ろあたりを押し、狭間は解放されるように倒れた。自爆へのカウントダウンもなくなり、研究所は静寂を取り戻した。