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ねぇ、みんな聞いて! 実は俺、やればできる子なの!



 目の前には異形の死体、周りには激しい戦闘後が残る中、一人の男が立っている。


 ややうつむいている彼は少し悲しそうな顔していた。


「いや、俺に任せて逃げろって言ったけどさ、もうちょっと躊躇してくれてもいいじゃない」




 さて、なんで俺がこんなことになっているかというとそれは昨日に遡る。

 早朝、ギルドで普段道理に今日はどうしようかな、依頼でも受けようかな、やっぱなんかめんどくなってきたなーとダラダラしていたら受付嬢のフィオナさんから声をかけられたのだ。


 「もし、よろしければ新人さんへの指導をお願いできませんか」

 「今日はもうアレだし、なんかもう無理かもぉ……」

 「今日ではなく明日ですよ、ほら報酬もこのぐらいで……」

 あれ、意外に報酬高いじゃん。おいしいなお仕事なのかしら。

 「まあ、お世話になってるフィオナさんのお願いなら仕方ない、お願いされました」

 「はい、では明日お願いしますね。」

 そう言ってにこりと微笑んだ。

 よし今日はもう終わり。まだ朝だけど、明日に備えて休まねば。明日のために仕方なく。そう、仕方ないね、明日の準備とかあるしね。

 

 「じゃあ、今日はこのへんで……」

 そうして、その日はお家に帰って行った。ギルドからすぐに帰ってきた俺を見て、同居している友人は少しあきれた顔をしていたが、明日フィオナさんからの依頼があってとか言い訳してたら納得してくれた。多分。



 翌日、朝にギルドに行くと例の新人たちは既に揃っており、あらヤダ遅刻かしらと思っていたが彼らも少し前に着たとのこと。4人とそれぞれ挨拶して、軽く打合せをした。

とりあえず

・俺は基本なにもしない、何かあれば適時アドバイスする

・何かあれば俺がやる。その時は俺の指示に必ず従うこと、従わず何かあった場合は俺はしらん

・本当にヤバイ時は即退却、殿は俺がやるから一目散に逃げること

この辺を4人に伝えて早速出発した。



 そんなこんなで、後ろから彼らを見ているけどこの子達ほんとに新人かな?

最初に会った時から思ってたけども、装備もちゃんとしてるし連携もできてる。初戦闘のゴブちんは斥候役がからの合図で奇襲してるし、さっきのイノシシ君だって盾役がしっかりヘイトとって危なげなく処理してるしさぁ、何なの優秀過ぎない君たち。さっきから俺何も言うことがないんだけれど、なんか言おうと思ってたけども、「やりますねぇ」とか「ほぅ、やりおる」しか言ってねえよ。

順調に進んでいるが、戦闘も有ったため、ひとまず休憩しようと声をかける


 「ここらで一旦休憩」


 そういって近くのよさそうな石に腰かけると3人が近くに寄ってくる。斥候役のレイナだけが周囲の索敵をしたのち遅れてやってきた。


 全員が揃ったところでリーダーのエイデンへ


 「……皆優秀だよね、アドバイスの一つでも思ってたけど特にいうことないわ」

 「アハハ!ありがとうございます。でも高位冒険者が同行してくれているんです。何かあればビシバシ言ってください」


 ……えぇ、どうしよう。取り合えず4人の良いとこそれぞれ伝えたところ4人とも照れてた。

なんだこいつら、カワイイな。


 「実はうちのチーム、斥候役を探してるんですが」


 なんてことを魔法使いのイザベラ言ってきたので、イザベラの隣のレイナを見ると


 「ん、私は本来斥候役じゃない、人がいないから仮でやってる」

 「マジで!?」

 「ん、マジで」


 獣人だから、斥候もこなせるのかなと思ってレイナを見ていると


 「皆ができるわけじゃない。ホラ、私はオオカミだから」


 そう言って耳をピコピコさせていた。


 いや、知らんがな。


 あと俺、お前のことイヌだと思ってたよ。ほら、わんわん感が漂ってたから、すまぬ……すまぬ……。携帯用のクッキーあげるから許して、イザベラもクッキーあげるからそんな目でこっち見ないで。


 休憩も終えてさあ、後半戦というところで


「今日のところはここまで。戻るぞ」


 というと4人とも、アレって顔をしてくる。分かるよ、順調に来てるのにもう帰るのってどうなのって思うんだろうが


 「今回が初めてだろう、初日から無理する必要はない。それに仕事は今日だけじゃなく、この先ずっとあるんだぜ」


 そして、3人は何も言わずに戻る準備を始めた。1人ほっぺを膨らませた。ほらぁ、帰ったらまたクッキーあげるから、そのほっぺはやめなさい。


 さあ、帰りますよってなったが、今日の俺は何もしていない。マジで何にもしていなにのでこのままではただのクッキーおじさんになってしまう。いや、おじさんって年齢でもないが。なので休憩が終わるちょっと前から、魔力を使って索敵しているのだが、丁度いい奴がおらへんやん。イザベラがいるから魔力を隠蔽しながら、索敵と無駄に高等技術を使ってるのに見つからんやん。


 もう諦めようかな。でもちょっと強めの魔物を見つけて「丁度いい。高位冒険者の実力って奴をみせてやる」とか言って華麗に勝利してドヤァしたいんや。ただのクッキーおじさんで終わるのは、いやなんですけど。もうちょい遠くまで探そうかな、あーもう諦めよかな。なんて思ってたらおるやん。


 ていうか、丁度いい奴どころじゃない奴おるやん。えっ……君なんでこんなとこにいるんですか、みたいなヤバイのがおったわ。


 あ……、やべぇ見つかった。めっちゃ来るやん、ヤバイ奴こっちにめっちゃ来てます。どうしよう、まだこの距離じゃあ「ヤバイのが来る。早く逃げろ」とか言っても何言ってんだこいつってなるし、目の前まで来てから共闘しようにもこの子達じゃあ足手まといだ。

 それに、報酬の高さと俺を同行に指名したってことは、暗にフィオナさんは4人を無事に帰ってこさせろってことだろうし、何かあったら、お前が何とかするんやでぇことだろ。怪我をさせたり、最悪死人を出そうもんなら怒られる。多分、めっちゃ怒られる。4人とも良いとこの子達だろうから、なんかあれば責任問題とか言われたらめんどくせー。


 「……何か」


 微動だにせず、考え込んでる俺に盾役のダミアンが声をかけてくる。


 いや、何かじゃねンだわ。お前ら大ピンチなンだわ。


 よし決めた、相手が姿見せてからこいつらに逃げるように言おう。「俺に構わず逃げろ」って言って

やろう。でもその前に


 「全員、警戒しろ」


 4人とも何も言わずに周囲の警戒をする。多分この中じゃ、イザベラが最初に奴の魔力に気付くだろう。イザベラが気付いたら俺の後ろに下がらせて、姿見えたら逃げるようにする。イザベラの様子をさりげなく、チラチラと伺って。……顔色変わったな。今だ


 「全員、俺の後ろに」


 よし、全員俺の後ろに避難完了。オオカミ娘も気付いたな、耳がへにょんってなってるわ。なんてことを考えているとそいつは姿を現した。


 種族としては所謂オーガってやつかな。力こそパワーの脳筋みたいなやつだ。でもさぁ、君ちょっと違くない、なんで赤じゃなくて黒いのかな。なんかスゲー魔力漲ってるじゃん。ワタクシ特殊個体ですが何かみたいなアピールを全身でするのはやめてくんないかな。


 「俺に構わず逃げろ」


 4人とも退却と思ったら、イザベラが腰ぬかしてるやん。……ダミアンが担いでるわ、ナイスだダミアン君。帰ったら君にもクッキーをあげよう。


 だが、そんな4人に向けて黒オーガは魔力を込めた右腕を振り下ろし、圧縮した魔力を解き放つ


 「やらせはせん、やらせはせんぞー」


 と人生で言ってみたい上位のセリフを吐きながら、横から同じように魔力をぶつけ軌道をそらしてやる。それを見て黒オーガは標的を俺に変更する。


 「こおぃやぁぁぁあ」


 「グガァァァァアー」


 両者気合十分、激しい攻防が始まるかといえばそんなこともなく、あいつらが見えなくなるまで俺は回避に専念する。コイツみたいなヤベェ相手は初手から全力で速攻ぶっ殺したいところであるが、本気を出すと、俺の秘密を見せてしまう。知っている奴もいるが、今日初めて会った相手にはできれば見せたくない。なので、あいつらが見えなくなるまでは、距離を取って回避に専念である。


 攻撃が当たらない黒オーガは距離を詰めてくるが、速さはそれほどでもないため拳が当たることはないのだが、拳に宿るくそバカ魔力の余波は俺の魔力シールドを微妙に貫通してきやがる。軽い擦り傷や切り傷程度だが、これが続くと結構辛い。てか意外とピンチなわけだが、退却組が見えなくなってある程度たったので、そろそろ本気出して良さそうだ。あっ……、右のほっぺがちょっと切れた。


 うん、もういいわな。もういいよなぁ。


 両腕からの叩きつけを回避して、少し距離を取って軽く呼吸を整える。


 「全力じゃあ、バカヤロー」


 濃密な魔力が、体から発せられ徐々に蒼い色を帯びていきながら、バチバチと爆ぜている。


 濃密な魔力は可視化することがある。現にこの黒オーガだってやっている。だが、こいつと俺とでは

色の鮮度が違うのだ。こちらは、クッキリ、ハッキリ、遠くからでも分かりますってくらい鮮明である。まあ、一番の問題は色である。嘗て英雄だとか聖人だとか言われていた人物は、蒼い魔力を帯びていたと伝説があるのだ。ナウ〇カかよ。こんなの国の偉いさんとかに知られたら、こき使われた挙句、ボロ雑巾にされ、最後は暗殺か毒殺の未来しか見えない。ヤダ、怖い。


 そんなわけで、これをできる限り人目には見せたくないわけである。久しぶりの全力でふと、そんなことをチラッと思っていたら、目の前の黒オーガは硬直している。そりゃそうだ、逆立ちしても手も足も出ない相手に喧嘩売ったんだからな。さぞ後悔をしていることだろう。許さんけども。


 「死ねよやぁー」

 

 言ってみたいセリフ上位の叫び声をあげながら、黒オーガに剣をむける。


 リーチが足りない?足りないなら伸ばせばいいでしょうがぁぁぁぁと言わんばかりに剣に魔力を込め

剣をふるう。


 ゴトリと首と胴体が離れたオーガの体は、ゆっくりと崩れ落ちていった。


 「戻るにはまだ早すぎるかな」


 あまり遅いと心配させるし、早すぎても怪しまれる。丁度いい時間になるまで近くの石に座り時間を潰すことにした。


 今日の晩御飯何にしようか、そんなことを思いながら、ふと青い空を見上げたのだった。


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