表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/26

16

「アンタ、コバルトファイヤードラゴンの肉、食べたことある?」


「は? そんなのないに決まってるじゃん。こんなときに何言ってんの?」


ママはキッチンから包丁をかざす。窓から差し込む光に反射して、刃の部分が妖しく光った。


「普通のファイヤードラゴンの肉は固くて不味いけど、コバルトファイヤードラゴンの肉は神戸牛や松阪牛に勝るとも劣らない超貴重な肉」


「は? こうべぎゅう……? まつざか……? は?」


「しかもスペアリブは蕩けるような旨さ」


「すぺあ……なに?」


「肝はフォアグラ」


「もう何言ってるかわからないよ」


「マリちゃん、今すぐこれに着替えなさい」


バサリと渡された服は水色でひらひらとした可愛いワンピースに白のエプロン、そしてブーツ。無言の圧力の元、大人しく着替えたわたしは完全にウェイトレス姿だ。


「はい、これ付けて」


腰に巻かれるベルトはまるで勇者の剣を納める鞘を固定するような……。


「って何これ?」


わたしの左腰には小さな鞘。そこに刺さる柄を抜いてみれば、刃渡り三十センチはあろうかという包丁だった。


「さて、元勇者のマリちゃん。お手並み拝見と行こうじゃないの。コバルトファイヤードラゴンの肉をゲットしに行くわよ!」


「えっ? 嘘でしょ?」


ママはいつもの丸首の白いエプロン(割烹着というらしい)に、いつの間にか両腰に包丁を四本も携えている。滑り止めの付いた手袋までして完璧装備だ。


……いや、待て待て。

何で包丁が装備なの。ありえないでしょう?


「ママ、正気?」


「当たり前でしょ。この機を逃してなるものですか。ほら、行くわよ」


「ひっ、ひぇぇぇぇぇ~」


わたしはママに首根っこを掴まれ半ば引きずられるように森まで連れてこられた。ママはがたいがいいのに見かけによらず走るのが速い。引きずられているはずなのに、まるで空を飛んでいるかのような気さえした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ