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ぐきゅるるるる~


ひどく大きな音が耳を突き抜けた。

自分のお腹を擦りながらトボトボと歩くことが虚しい。ていうか、自分のお腹からこんなに大きな音が出るなんて知らなかった。


「はぁ~」


ため息だけが抜けていく。

まさかこんなに飢える日が来ようとは。


今日は最悪な一日だった。


わたしはヨロヨロと倒れこむように路地裏へ入った。懐から財布を取り出し中を確認すると、寂しく銅貨が一枚のみ。

これがわたしの全財産だ。


「お腹すいたよぅ……」


日々安い果物で食いつないできたけれど、それももう限界だ。銅貨一枚でどうしろというのだ。どうにもならない、どうかしている。……決してダジャレではない。


わたしは勇者として悪いモンスターを倒し、その報奨金で日々生計を立てている。だけど今の私は装備はボロボロ、お金もない。モンスターが巣食う洞窟に入ったものの、ぼろ負けして帰ってきたのだ。こんなわたしを助けてくれる人は誰もいない。


「ああ、神様はわたしを見放すのですか!」


まるで悲劇のヒロインを演じるかのごとく、わたしはヨロヨロと壁にもたれかかった。

と、鼻をくすぐる美味しそうな香り。

この路地裏のどこかにレストランでもあるのだろうか。


いいなぁ。食べたいなぁ。お腹すいたなぁ。

きっと銅貨一枚じゃ無理なんだろうなぁ。


じわっと涙が滲む。

この先どうしよう。わたしは飢えて死んでしまうのだろうか。


「もう……無理……」


ああ、空はこんなに青いのに。

風はこんなに穏やかなのに。

十六歳にして人生を終えるなんて……。


「ちょっと、ねえ、ちょっとアンタ!」


呼びかけられていることに気づきわたしは目を開けた。


「こんなところで何してるの?大丈夫?」


「え……も、モンスター?」


「はぁ? アンタ喧嘩売ってんの?」


大柄なシルエットがいかにもモンスターのようだったからそう呟いたのだが、その人は怒り狂ったようにわたしの首根っこを掴んでズルズルと引きずっていった。


……こ、殺される!



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