表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

九州大学文藝部・2021年度・初冬号

歴史にIFが許されるならば

作者: クラリオン

 一九四一年十二月。太平洋にて、日米両軍合せて三二の艨艟が激突した。開戦劈頭の大海戦において、日本側は勝利を掴み、その後しばらくは優位を保ったまま戦争を進めた。しかしながらやがて国全体の工業力の差により、その優位は覆る事になる。海軍の主力を担っていた八八艦隊の艨艟達は、次々に就役してきた米軍の新型戦艦に打ち破られ、水底にその骸を横たえていく。


 最終的に日本側は十三号艦型巡洋戦艦と大和型戦艦──すなわち四六センチ砲搭載艦群を中心とした艦隊決戦を挑み、勝利する事で辛うじて講和を結ぶ事に成功、ここに四年に渡り繰り広げられた太平洋戦争は幕を閉じた。








 削除。安直に過ぎる、ネタが使われすぎててパクリにしか見えない。








 一九四一年十二月。帝国海軍は保有する六隻の正規空母全てを投入した真珠湾攻撃に失敗、空母四隻を喪失した。これに伴い帝国海軍は全ての作戦計画の見直しを余儀なくされる。








 削除。この風呂敷畳めるほどの戦略眼は無い。








 一九四五年八月九日。長崎への原爆投下は、その日試験飛行中だった局地戦闘機により編隊が全滅した事により失敗に終わる。撃墜されたB29の残骸から回収された新型爆弾を材料として日本はアメリカと講和を結ぶ事に成功した。








 削除。試験飛行中なのに防空戦した挙句に重爆三機喰って原爆回収も出来るのは少々流れが都合良すぎる。








 一九四四年七月二十日。東プロイセンにおいてクラウス・フォン・シュタウフェンベルクによって決行されたヒトラー暗殺計画は、爆弾が一つしか持ち込めなかった事、その爆弾が椅子の影に押し込まれた事などにより失敗。ヒトラーは生存し、シュタウフェンベルク他関係者は処刑された。


 結果として欧州での戦争は一九四五年五月、ヒトラー自殺後、停戦命令が下されるまで続く事となる。








 駄作だなあと、PCに結びの文章を打ち込みながら、我が作品の事ながら、ただ漫然とそう思った。締まらない。一応最新作で、一応過去最高に時間も手間もかけた作品ではあるのだが、どうもぱっとしない作品になってしまった。本当に大学と部活の名を背負ってネットに放流して良い代物かと聞かれると正直悩む。これならトンデモでも良いから日本が跳ね飛んでる話でも書いた方が良かったかもしれない。


 なぜなら書いてる私からして、この話はつまらないとは言わないが楽しい作品ではないのだ。この、ヒトラー暗殺計画の失敗という話は。


 じゃあなんで書いたのかと聞かれれば、私がモノを書くときの一つの信条のようなものを守る為だ。自分で広げた風呂敷は自分で畳め、という一つの決まり事を。








 架空戦記、というジャンルの小説は、簡単に言ってしまえば歴史というものを原作としてその再構成を行う二次創作のような何かだ。


 二次創作というからには【原作】とは異なる要素がある。それは未来人であり宇宙人であり史実にない敗北であり史実にない勝利であり史実にない同盟であり史実にはない条約である。


 そしてこの作品をとりあえずの最新作とするシリーズにおける其れは、史実にあった気付きである。クラウス・フォン・シュタウフェンベルクが書き残し、そして後世における検証で恐らくそれが成否の境だった、と称される『気付き』。暗殺に用いる爆弾の片方の時限信管が作動していなくとも、もう片方が起爆すれば誘爆するだろう、という気付き。


 史実においては副官が気付いたそんな単純な事実に、焦りから二人とも思い至らなかったら。それについてはもう何度か考証され、暗殺は失敗した可能性が高いと推定されている。


 で、あるならば。あの日爆殺された欧州の独裁者が生きていたならば、果たしてその後欧州の戦況はどのように推移しただろうか。そしてその結果は極東にどのように波及しただろうか。


 それが、私が今まで書いていた作品群のうち新しい方の四作品が属する世界観である。つまり私が今書いている作品が、私自身が広げた風呂敷そのものである。そりゃあ私が畳まねばなるまいよ。ましてや部内にも、そしてあるいは恐らく部誌の読者にも、架空戦記の読み手書き手はいないのだ。この物語を畳めるのは今のところ私だけだ。


考察が甘い? 自覚してるわそれを言えるならむしろ君の作品を読ませてくれ私は質の高い架空戦記が読みたいんだ。さあ来ると良い。我らが倶楽部へようこそ、諸君。


とはいうもののまあ中々そんな人材は来ない。数代前の先輩にはいたらしく学年が被っていない事が悔やまれるが、彼、推定で彼、はSF系の書き手だったようなので果たして趣味が合うかと聞かれると多分合わない。


 逆に言えば弊学文芸部において私はとりあえず今のところ、何を言われる事もなく、歴史に妄想の翼を羽ばたかせる事が許されているとも言える。それもどんな翼でも良い。緻密に編まれた精巧な翼でも、蝋で固めただけで高くは飛べない翼でも。




南北に分断された我らが祖国、日本。遠く異国の地で友好国・同盟国の為に散っていった誰か。歴史上にありふれた悲劇ではあるけれど、それが祖先・祖国の辿った歴史であるならばそれは大きな悲劇に相違ない。そしてその梢々にこそ我々の今があるのだ。それはいくら言葉を並べ立て飾り付けようと変えようがない事実だ。血と汗と屍を積み上げた先に私達の今がある。まあそれは人類共通の歴史であるのだが。




それはそれとして。小説や漫画の二次創作のように、ゲームの別選択肢のように。似たような、でも確かに違う世界があったなら。




 敗戦と荒廃、焼け野原。社会主義国家と民主主義国家との代理戦争。核の軍拡競争。とてもとても、現実そっくりの、でもどこかが致命的に違う世界。冷戦をよそに順調に復興する祖国。複数回の五輪。分断も統合もなく、穏やかに繁栄と平和を謳歌するどこかの世界の日本。


北からの脅威は若干遠く、大義名分に欠ける故に戦争の危機もやや遠く。それでも史実と変わらず朝鮮戦争による特需はあるのだろう。ベトナム戦争への出兵は恐らく無いだろうがどこかの時点で自衛用の軍備は解禁されるのだろうな。アメリカは多分、一応の同盟国がただただ守られているだけの関係を容認するような国ではない。早ければ朝鮮戦争で、国内の予備戦力として整備されるかもしれない。


憲法九条で「戦争と武力行使の放棄」と「戦力保持と交戦権の否定」を設定してしまったのでその辺りをどう潜り抜けるのか興味はある。ぶっちゃけここが設定の一番大きな穴というか連作にするつもりがなかったものを連作にした弊害というか。


 最初は南北に分断されていない戦後日本を書きたかっただけなのにどうしてこうなったのやら。


 まあ良いか。これも創作の醍醐味。書いてて楽しくはなかったがまあそれも次回以降の反省点に出来るだろうし、自分の信条に則った結果であるので文句はない。もっと小っ恥ずかしい話も部誌には出している、今更と言われればそれまでだ。


 歴史にIFを考える事が許される。それは何だかんだ言いながら危うい均衡を保ち、それでもなお平和な国に住む人間の特権だ。ありがたく行使しておくとしよう。




 オペラツィオーン・ヴァルキューレ。ワルキューレ、あるいはヴァルキリー。戦乙女、その役割は戦死者を選ぶ者。私達の世界では彼女達は、謀反者に微笑み、独裁者を選定した。この作品では逆となる。彼女達こそが世界の分かれ目。ならばタイトルには彼女達を冠しておくべきだろうな。








 タイトルも決まった、文章も締めた。後は編集に怒られないうちに出すだけ。


PCを操作して提出先のオンラインストレージフォルダを呼び出しながらふと思う。


私が描いた世界の日本にも、私のように架空戦記に心惹かれ、自分でも筆を執った学生は居るのだろうか。恐らく現実と一緒でマイナーなジャンルだろうけど。


 私は実物の兵器から太平洋戦争の架空戦記に入ったクチだが、その学生は違うかもしれないな、と自分で書いておいてなんだが彼あるいは彼女に少しだけ同情した。旧軍艦艇の実物がほぼ残ってないなんて悲しいにも程がある。同時に出来ればその悲しみをバネに何か生み出してほしいなとも思う。存在しないのならば自分で創れば良い、私はそうした。


 いやまあ、彼あるいは彼女はそもそもこの世界を知らないから私の抱く悲しみと同じものである確証はないが。








 未だ見知らぬ、そして恐らく今後生涯でも会うことはないだろう同志よ。どうか貴方の創作活動が貴方自身にとって楽しいものでありますように。未だ誰も知らぬ、貴方の描く歴史のIFを読みたい人間は確かにここに一人居る。


 貴方の健闘を祈る、オワリ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ