表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は生き残る!  作者: なぞまる
国外追放
5/72

過去の記憶

俺はゲルンズファ。ここではないところから来た一種の精神生命体だ。なぜ、どうやってここにきたのは俺にも分からない。そもそも俺がそういうものであるということ以外、俺自身何も俺のことを分かっちゃいない。けどなぜか知識や経験は豊富にあるようなんだ。どれもこれも俺そのものの記憶じゃない気がするけどな。


まあ俺のことはどうでもいい。とりあえず生きるためにフェアリードラゴンに取り付き、今人間の女に取り付けた。人間の意思を通じて俺にもエネルギーが回ってくる。どういう理屈なのかは俺にも分からんが仕組みだけ理解できていればとりあえず生き延びることは出来るだろう。


さて、そのためにはこの人間、アクレシア・ノイラート、シアには長生きしてもらわないといけない。そのためには俺を信用させないといけない。いくら助言しようと信じてくれなければ無意味だからな。そのためにはシアの過去を見ておくのが一番だろうと思う。


彼女がなぜここにいるのか、どうしてそうなったのか。それを俺の視点で見てみることにしよう。人間の記憶ってたいしたものじゃないと思われているが、実は当人が片っ端から忘れていっているだけで、記録としては残っている。俺はそれを辿っていけばいい。シアという媒体が記録した映像を見るという感じだな。


さて、まずは……そうだな。何故シアがここにいるのか、の理由が分かりそうな場面を探すとしよう。


「あなた方! 何をされているのですか!」

「ノ、ノイラート様?! いえ、その……」

シアが芝生横の道から校舎の窓から見える女子生徒二人に声をかけていた。


「わたくしは、あなた方に、今、何をなされていたのか?と聞いているんです」

シアは大きな声なのに静かに、と言っても差し支えない調子で再び問いかけた。


「は、はい。今広場にとかげが見えましたので、魔法で退治しようかと思い、魔力弾を放ちました」

「わたくしが、いえ、誰かが隣を歩いているのに魔法攻撃をなさったのですか? それはちょっとうかつではございません?」


シアが鋭い目つきで女子生徒二人を見つめているので、二人は震え上がっているようだ。

「はい、ノイラート様のおっしゃるとおりです。申し訳ございません」


「それにトカゲが広場にいてもあなた方になんの問題もないではないですか? 校舎に侵入しようとしていたわけじゃないのでしょう?」

「は、はい。そうですね」

「今後はお気をつけになって。でないと覚えますわよ」

「も、申し訳ありませんでした!」

女子生徒二人は窓越しに深く頭を下げてから見えなくなった。


「まったく、トカゲとかかわいいのに、何故あんなに嫌うのでしょうかね……」

そんな風につぶやきながら、シアは広場に入っていってトカゲを探しだした。


「シア様、なにをされておられるのですか?」

ん? シアに話しかけてきた女子生徒がいる。


「あ、ラウラ、見てこれ、かわいいでしょ?」

シアは声をかけた女子生徒に駆け寄って、手に掴んでいるものを彼女に見せる。


「え? あ……?! きゃーーー!」

彼女、ラウラが上げた悲鳴を聞きつけ、人が集まってきた。


その中には男子生徒も含まれていて、その内二人が進み出てきた。

「なにをしているのだ? シア?」


「これはハインツ殿下。ごきげんうるわしゅう?」

「たった今、シアのせいでうるわしくなくなったがな。なぜラウラをいじめる?!」

一人だけ制服が派手なハインツ殿下がものすごい形相でラウラと呼ばれた女子生徒をかばうような立ち位置に行き、吐き捨てるようにシアに言った。


「え? わたくしはただ、かわいいトカゲがいたのでラウラに見せただけですわ」

「あのなぁ、シア。普通の女子はトカゲは怖いものなんだぞ?」

ハインツ殿下とともにやってきた男子生徒がシアをたしなめた。


「お兄様、わたくしが普通ではないと?」

「そこまでは言ってない! 人の嫌がることをするな、と言っているのだ」

「そんなつもりで……」

なおもシアは反抗しようとしたが、周りの雰囲気が完全にシアの真逆だったので心に飲み込んだ。


ただ可愛かったからラウラとその気持ちを共有したかっただけですのに……。


この記憶ではないようだ。他を当たろう。しかしラウラって聖女のことだよな。……ん? これかな?


シアが一人廊下を歩いている。周りでは主に女子生徒がシアを見て、こそこそと噂話をしているようだ。その話の中心人物がシアで良からぬ話だということはシアも気づいているが、虚勢を張って、しっかり前だけを見て歩いている。


「アクレシア・ノイラート様、皇室侮辱罪で逮捕いたします、抵抗なされるな」

ん? いきなり記憶が飛んだ? それを言ってきたのは近衛兵、だとシアは認識している人物のようだ。近くで別の近衛兵がシアの兄の抗議を力ずくで抑えこんでいるのが見えた。この場にはハインツ殿下もラウラもいなかったようだ。


この時の、シアの記憶がとぎれとぎれになっている。魔法でもかけられたのだろうか。女性近衛兵に後ろ手にされて学園内に入ってきていた馬車に無理やり押し込まれたようだ。そして取り調べもなく、何処かに監禁され、そこで首輪と腕輪をつけられた。その場所からも一時間もしないうちに再びそこから引き出され、馬車に乗せられて、国の南にある国境砦というところに連行されたようだ。


いろいろとおかしいな。シア当人は混乱していたせいか分かっていないようだが、シアの知識によるとシアの学園があった帝都から国境砦まで馬車で数日はかかる距離のはずだ。しかしシアの記憶にはその期間の記憶がない。忘れているわけでなく存在しないのだ。それにシア自身の記憶がとぎれとぎれなのはかけられた魔法の影響だとして、その移動の間の記録が一切残っていないのは何故だ? ずっと気絶していたわけでもあるまい。


その理由を推測することは出来る。ここは科学の世界ではなく魔法の世界だしな。しかしそれでもたかが一人の女子生徒を移動するのにそれを使うだろうか? 俺が思った以上にこの世界の魔法技術が発展しているのかもしれないが、少なくともシアの記憶を探るだけではありえないと思える。

……陰謀の匂いがするが、今は関係ないか。


ふむ……、続きの記憶で分かった。皇室侮辱罪とやらで国外追放を受けたのか。皇室侮辱罪のようなものはいろんな世界であるが、まともに運用されていたという実例の知識はないな。すなわち、そういうことなのだろう。


聖女ラウラに、一般女子生徒に対して、悪役のごとく振る舞っていた令嬢が、アクレシア・ノイラートだったというわけか。その顛末が陰謀の匂いのする国外追放という名の処分か。

俺は運がいいのかもしれない。シアは優良な人間だ。少々問題を起こしやすいようだが、それは人間の世界の、更に狭い学園内でのことだけだろうと思う。俺の宿主としてはたいへんすぐれているようだし、シアがこんな目にあっていなければ俺はそのまま確実に餓死していただろうからな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ