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 彩未視点


 晴佳の綺麗な顔を見上げれば、サッと目を逸らされた。

 晴佳は私から少し距離を置いて立っていて、手を伸ばせば届きそうなのに、一向に合わない視線が手を伸ばすことを躊躇わせた。


 私と同じように頑固だし、一筋縄じゃいかないということは分かっていたけれど、晴佳から距離を置かれるなんて初めてでどうしたらいいのか分からない。


 晴佳と離れて、存在の大きさに改めて気がついたし、晴佳の変化に気づけなかった自分は今まで何を見てきたんだろう、って落ち込んだ。


 晴佳はいつだって私の変化に気づいてくれていたのに。


 1度だけ、真剣な表情で私にしておきなよ、と言われたことがある。その時は晴佳をそういう対象に見たことは無かったし、彼氏に振られたばかりで、恋人っていう関係の脆さを実感していたこともあって、無意識に深く考えるのを避けて軽く流してしまった。


 元彼と別れてから、別れる時に言われた言葉がずっと頭の中を巡っている。


『本当は言いたくなかったけど、これ以上可哀想な男を増やすのも何だから……彩未は、幼なじみのことを話す時が1番優しい顔をするし、無意識に幼なじみと俺を比べてる。キスをしても、抱いても心は手に入らない。幼なじみが引越してから不安定な彩未を支えられなくて、俺じゃ役不足なんだって突きつけられたようで悔しかった。彩未が本当に求めているのは誰?』


 振られることが多かったけれど、歴代の彼氏たちも、同じように感じていたのかな。

 言われて気づいたけれど、私は無意識に元彼と晴佳を比べていたんだ。


 あの時晴佳を選んでいたら、また違った今があったのかな……


 避けられているし、今も目を合わせてくれないし、きっともう遅いと思うけれどちゃんと気持ちを伝えよう、と思った。


「晴佳が居なくなって、初めて気づいたことがあるんだ。元彼よりも、晴佳の方が大切だった」

「……うん??」


 どういうこと?? と言いたげな晴佳と目が合った。


「やっとこっち見た」

「いやいや、どういうこと??」

「ふふ」


 思ったままの台詞が聞こえて思わず笑ってしまった。あ、ちょっとムスッとした。

 こんな顔を見るのも久しぶりで、なんだか嬉しかった。


「別れる時に元彼から、無意識に幼なじみと比べてる、って言われたんだ。自分では無意識だったんだけど、確かに、デートしててもこんな時晴佳ならこうしてくれるのにな、とか晴佳ならこれを選ぶだろうな、とか考えてて」

「……??」


 ここまで言っても、まだ伝わってないみたい。


「前言ってくれたことが本気だったのかも分からないし、晴佳にそのつもりは無いかもしれないけど、次誰かと付き合うなら、相手は晴佳にしたい。私の事を好きになって??」

「……は!?」


 一応、告白したつもりなんだけど、は!? って酷くない?? 結構恥ずかしいんだけど……泊まるつもりでお風呂にも入ってきたけど、晴佳の反応がいまいちだから帰った方がいいかな。やっぱり遅かったのかな……


「じゃ、明日気をつけて帰ってね? 明日からは、私からも連絡するから、晴佳からも連絡貰えたら嬉しいな。おやすみー」

「うん、おやすみ……っていやいや、待って!?」


 固まる晴佳の横をすり抜けてドアに手をかけようとすれば手を引かれてグッと抱き寄せられた。やっぱり晴佳に抱きしめられると安心するな……って違う。


「晴佳?」

「付き合ってくれるの?」

「え?」


 いや、私が告白したんだけど?? 伝わってなかった?? 遠回しすぎた?


「付き合ってくれるのか、くれないのか、どっち!?」


 なんか怒られてる?


「付き合いたい、けど……」

「けど!?」

「晴佳は私のこと恋愛の意味で好きじゃないでしょ?」

「……はぁー」


 深いため息を吐いて、私の首筋に顔を埋めて動かなくなってしまった。


「晴佳??」


 呼びかければ、顔を上げた晴佳に見下ろされた。


「私の初恋は彩未だって知ってた?」

「え、知らない」

「多分、知らないのは彩未だけ。うちの両親も、彩未の両親も知ってる」


 初恋が私?? しかもどっちの両親も知ってる??

 お母さんが意味深なこと言ってたのってそれを知ってたから……?


「ちなみに、過去形じゃないから」

「うそ……」

「鈍感」


 私って鈍感なのかな……両想い、ってことだよね?


「付き合う……?」

「付き合う!」


 生まれて初めて、彼女が出来ました。お母さんに泊まるって連絡しておこう。晴佳に許可取ってないけど、お互いの家に泊まるなんて珍しくないしいいよね。



「ねぇ、初恋っていつから?」

「物心ついた頃から……? 幼稚園の頃からもう好きだったと思う」

「幼稚園!?」


 待って?? 私のことを好きな晴佳に元彼の話をしてきてたってこと? いつだって穏やかに聞いてくれていたけど、なんて残酷なことをしていたのか……


「ごめん……」

「何が?」


 ドアにもたれかかった晴佳が不思議そうに聞き返してくる。


「元彼の話をしたり、色々」

「あぁ。気にしなくていいよ。私が勝手に好きだっただけだし。それに、私がちゃんと捕まえてればもうそんな話聞くことは無いし?」


 ちょっと照れくさそうに笑っている晴佳が可愛い。抱きつきたいのに、遠い……ベッドに座っている私とはかなり離れている。さっきまで抱きしめてくれていたのに、ベッドに座るように誘導されて、晴佳は離れてしまった。

 付き合うことになった2人の距離感じゃないよね??


「ねぇ……晴佳遠いんだけど」

「そうだねー」

「そうだねー、じゃなくて……疲れない? こっち来て座ったら??」


 そもそもここは私の部屋じゃないけど。


「ううん、疲れてないし大丈夫」

「そこは来るところじゃないの!? 恋人の距離感じゃないよ!?」


 じっと見つめれば困ったように視線をさまよわせている。もう私から近づいちゃうからね。


「あの、近いんですけど……」

「嫌なの?」

「嫌じゃないけど、触れたくなるというか……」

「え、かわい……どうぞ??」


 そんな理由?? 触れてくれればいいのに。両手を広げて待ってみたけれど、何かを悩んでいるみたい。


「いや、やめとく」


 あ、もしかして……? 抱きしめる、くらいかと思ってたけど違う?


「晴佳と私ってどっちが攻めだろう?」

「はっ!?」

「女の子同士じゃん? どうやって決めるの??」

「何言い出すの!?」


 疑問を口にすれば真っ赤になる晴佳が可愛くて、ちょっと調べてみようかな、なんて思ってしまった。

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