10.虹とけ込む湖(イタリア北部)
~ ラテマール山の魔王が、美しい水の精に恋をした。彼女を連れ帰ろうと、これまで様々な手段を講じたが、いつも湖底深くに逃げられてしまい、失敗続き。
たまりかねた魔王は、魔女ストリアに相談し、知恵を授けて貰う。
魔女は「まず、山から湖へ最上の虹の橋を架けなされ」と、魔王に言った。
「そうすれば、虹を見に水の精が水面に出てくる。そこで、人間の商人に化け、宝飾品の入った袋を持ち、水の精に近づく。"今から虹のカケラを切り取って布に仕立てて、都の姫君たちに売りに行く。" こう話せば、水の精自ら、興味を持って近づいてくるはずじゃ」
「それを、攫え」
魔女の作戦に魔王は頷き、虹を作って水の精をおびき出した。
ところが、水の精の姿を見て喜んだ魔王は、慌てて人間に化けるのを忘れたまま彼女に近づいてしまい、水の精には、またも逃げられてしまった。
ついに魔王は激怒した。
作った虹を粉々に壊し、湖の中に投げ入れて、周辺の木々も怒りに任せて引き抜き、暴れに暴れた。
――このため、カレッツァ湖は虹色に煌めく湖面となり、また、その周囲には今も木が生えていないと言われている。 ~
◆◆◆
そんな伝説ですが、カレッツァ湖の写真検索したら、しっかり木が生えてました。新しい木かな? 良かった、良かった。
さてカレッツァ湖。さすが虹がとけ込んでいると言われただけあって、写真の水面がすさまじくキレイでした。
イタリアのドロミーティ山地。
峻険な山とは縁遠い私なので、きっと見ることはないですが、「見てみたいな」と思わせる程、魅力的な物語で気に入っています。
こちらのお話は『イタリア異界物語』にて紹介されていましたが、2006年の書籍のため、現在入手は難しい気がします。
聞き慣れない伝説がたくさん載っていて、面白い本でした。
著者様は現地取材に行き、「写真を撮るな」と断られた老婆の写真を遠くから隠し撮って気づかれ、何やら呪いのようなたくさん言葉を浴びせられたら……。帰国後、体調を大いに崩し、大変だったと語られていました。因果関係は不明ですが、著者様は「あの時のせいでは」と振り返っておられ、まじない的な文化の残る土地、というように結ばれていたと思います。
本が手元にないので、うろ覚えですけども。「ダメ」って言われたことをやっちゃイカンですね、やっぱ。
イタリアは海イメージが強いのですが、山文化も錚々たるものだと見直すきっかけとなったお話。いかがでしたでしょうか?
お読みいただき有難うございます。よろしければ評価、ご感想お待ちしています(^▽^)/