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DISTANCE  作者: ひろゆき
4/6

 彼の場合 (2)

 ぬくもりを感じていたのに。

    いつかからか辛くなっていく。

 なんでだろう?

 宙に舞う問いが散っていく。


 言葉が積み重なっていくのが楽しかった。

 あの子に教えてもらった小説。幾千の詩が彼女の声とともに沁みていく。

 彼女と話がしたい。


 あのころから始まった。

 読むほどに彼女に近づけた。


 彼女の小さな手。

  ぬくもりにずっと触れられる。

 ……はずだった。


 なんで無理するんだろう。

 どうして?

 自分の知らない彼女が膨れていく。

 自分の知らない彼女が背を向けてしまう。

 離れていく。

 つらそうにしか見えない。

 笑ってほしい。笑ってほしいのに……。


 もっと話したかった。

 あの図書室で教えてほしかった。

 彼女の好きな言葉。好きな詩を。


 華やいでいく。

   艶やかになる。

    でも、無理していく。

 メガネを外した彼女は……。


 いつからだろう。

 彼女の手をぬくもりを感じなくなったのは。

 彼女は誰かに何かを言われたんだろうか。

 わからない。

 離れないといけないのかな。

     離れたくないのに。

 どうしたらいいんだろう。

 わからないよ。


 あのとき、彼女に初めて発した言葉。

 心を絞られたみたいに苦しかった。

 でも、言えると心が晴れてあたたかくなっていった。

 いまは……。 いまは……。


 彼女に話しかけるのが怖くなっていた。

 言葉を噤んでしまう。また臆病になってしまう。

 離れたくないのに。


 離れていく。

 それなのに引き留められない。


 彼女の手を握れなかった。

 砂が舞っていくように、遠退いていく。

 背中が小さく……。

    追いかけたいのに……。

      追いかけたいのに……。

 時間が重なるほどに離れていく。

    無理をしていることがわかるから……。

      追いかけられない。

   変わっていく。

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