彼女の場合
知りたかった。
あなたの好きな人を。
あなたの好きな人は誰なの?
聞きたいのに、言葉が逃げてくんだね。
どうしてかな、わからないよ。
好きなのに……。
何を話せばいいんだろう。
いつから心に迷いが生まれたんだろう。
いままでなら、なんでも話せたのに。
あなたは優しいから。
だから話せないんだよ。
きっと、何も言わない。
責めないんだよね。
こんなに傷つけたのに。
でも、それ優しさがつらいよ。
いつものカフェ。
いつもの席。
話したいのに笑えない。
笑いたいのに泣きたくなる。
あなたの顔が見えない。
きっとあなた、あのころみたいに笑ってくれるでしょ。
つらいのに。
わかってるよ。
私を見てはいないんだって。
さみしさが膨れていく。
あなたに似合う彼女になりたくて、
なりたくて、
なれなくて……。
もう……。
いつからか離れていくの知っていたよ。
無理をしているんだって。
傷つけたくない。
もう、無理をしてほしくない……。
だから、
もうあなたの隣には……。
手を繋いで、
そのぬくもり……。
抱きしめて。
そのぬくもりあたたかくて。
でも心がつめたくて……。
……ねぇ。
あなたの好きな人は誰なの?
今回は、短編連作になっています。
彼女と彼。
互いに想う気持ちを綴る形になります。
二人の間にある“距離”が生む時間がどうなるのか。
よろしくお願いします。