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焦燥と月下のマギア(上)  作者: Sy
槍の王 第3部
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第16章 七袖への勅命

七袖ナナソデ、久しぶりだね。元気にしているかい?」と王は七袖に言った。


相変わらず王は優しく、そして微笑を絶やさない。


もし七袖が騎士を目指していなければ、きっと王に恋い焦がれるどこぞの婦人達と一緒であっただろう。


「はい。王からの大恩に報いるため、日々精進を絶やしておりませぬ。」


「うーん、堅いなあ七袖。君は本当に美しく育ったし、騎士にするにはもったいないよ。」


と王はまたいつもの様にウィンクをする。


中年小太りの裸の王様が言う台詞セリフならば、全く違う展開になるところだ。だが、相手はあの見目麗しいカナン王である。


「そっ、そんな!私は騎士になると誓った身、どうか思い直しを!」と七袖が叫ぶ。


七袖を面白そうに眺めながら、今度は少しだけ低い声で王は答えた。


「ふふ、さて本題に入ろうか。」


「はい。コルテバ様から大体のことは聞いております。」


「君は承諾してくれたのかな?」


「もちろんです!」


そう七袖が勢い良く答えると、今度は王は真剣な眼差しで答えた。


「君とハヅキの正体を祖国で暴かれるのは非常に危険だ。こちらとしても十分な根回しはしているが、それでも何か予期してなかった事態が起こるかもしれない。」


「はい、そのために私がハヅキ様の警護を。お任せください。」


「ふふ、君は強いからねえ。その辺の護衛をつけるよりよっぽど安心だよ。」


「そ、そんな。またお戯れを…」と言いながら七袖は頬を赤くする。


「ハヅキを頼んだよ。そしてこれはコルテバには言っていないのだが、君にもう一つお願いがある。」


「はい。」と七袖は即答した。


どんな命令であろうと、王のためならば。と七袖は元々決意しているのだ。


「ハヅキには双子の姉がいたはずだね。」


そう王が言うと、七袖は顔を青くして答えた。


「ど、どうしてそれを…」


「おっと、心配することはないよ。僕は好きな女性のことは大体何でも知っているのさ。」


王は続ける。


「ハヅキの姉、ミツキ。彼女を探し出し、救出しなさい。君たちの手で。もちろん手は貸そう。もしもの時は我が国の正式な大使たる使徒アポストロスを頼るといい。」


この王は全てを見通しておられる。と七袖は思った。


「それと、君の改名の話だけれど。先日僕も書類に目を通しておいたよ。」


「お、王直々にでございますか?申し訳ありません。未だ眷属契約もできず…」と七袖の心は一気に沈んだ。


「ふふ、一応僕が君の後見人だからね。心配することはない。きっと祖国に行くことで君が得る力もある筈だ。成長した君たちをまた迎えるのを楽しみにしているよ。」


そう言って王はまた優しく微笑んだ。


その笑顔や声、王の優しさは七袖の心の不安や淀みを瞬く間に溶かし、そして彼への忠誠をまた堅固なものとした。

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