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焦燥と月下のマギア(上)  作者: Sy
槍の王 第3部
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第10章 留学生選抜試験

ハヅキはその日、留学プログラムの選抜試験会場に立っていた。会場は多くの観客を集め、まるでお祭り騒ぎだ。観客席を眺めると応援に来ているソフィアと目が合った。ハヅキが不安そうにソフィアを見上げると、声の届く距離ではないためか、ソフィアが応援のジェスチャーをした。


ソフィアは両手を上げ、ハヅキに手を振った後ガッツポーズを送る。加えて、今度はその両手を下におろし、ゴリラの様に胸をドコドコと殴り始めた。


「ぷっ、何それ。」とハヅキが吹き出す。


だがハヅキの緊張感はだいぶほぐれた様だ。


するとハヅキを含め、会場に整列するマギア聖学院とサピエンティア神学校の生徒達の前にある女が現れた。彼女は会場を見渡すことのできるバルコニーから学生達に優雅に手を振る。


「ま、マジかよ。あれ教皇様じゃないか?」と周りの学生達が騒ぎ出した。


「これってそんなに重要な試験なのかな?」


「名前を売るチャンスだせ。」


と生徒達の声が、教皇を称える観衆の声に飲み込まれてしまう。


「皆さん、今日は存分に日頃の鍛錬の成果を披露なさい。結果はどうあれ、最後まで私が見届けます。期待しているわ。」


教皇が選抜試験開始の挨拶を終えると、学生達は試験内容の説明を再度受けた。


簡単に言うと今回の選抜試験は、学生達によるトーナメント方式の一対一の勝ち抜き戦である。しかし王族や貴族はシード権などが与えられ、公平性については疑問が残った。仮にも王族の1人であるハヅキも難なく上位戦まで一気に駒を進めることができる。


このトーナメントの順位により、留学希望の国への選択権が授与される。またこの大会において示した魔力や体力、能力に置いて審査を受け、その結果を留学選抜以外の用途で使用される事にもなっていた。


「よし、つまり全力出せってことよね。」とハヅキは自分自身に言い聞かせた。


かなりチートなシード権を与えられたとは言え、ハヅキの対戦する相手は歴戦を勝ち抜いた強者に違いない。


そこで一際黄色い歓声を送られている2人の参加者を見つけた。


七袖ナナソデとセレステである。


「きゃあ、七袖様よ!」


七袖はいつもの剣術の稽古の道着と、院外では常時帯刀している細身の長剣を手にしている。長い黒髪を後頭部で纏めた姿が凛々しい。ハヅキに気づいた七袖は軽く頷きながらハヅキにエールを送った。


「セレステ様ー!こっち向いてー!」


そのシルバーブロンドの長髪を惜し気もなくかき揚げ、セレステが慣習に手を振る。彼女は銀色の胸当てと小手、軽装化した鎧の装備にいつもの白銀のレイピアを装備していた。


華麗な2人の登場で、マギアだけではない観客達の歓声が治る様子は無い。



ーーーーーーーーー


そしてトーナメント開始から瞬く間に各試合は進み、ハヅキの出番が迫っていた。


それはハヅキが七袖を探し、試験参加者の控え室をうろうろしていた時だった。


「あっ、あの。次の試合、僕とですよね?」


と後ろから話しかけたが、振り向いてもハヅキはその声の主を発見する事ができなかった。


「こ、ここです!」と下から声がする。良く見ると、ハヅキよりもさらに小柄の男の子が前に立っていた。


「えっと、あなた。お母さんを探しているの?」と迷子を発見してしまったと焦るハヅキ。


だがその男の子は顔を赤くして叫んだ。


「ちっ、違う!僕があなたの次の対戦相手ですっ。」とグーにした両手を自分のお腹に当てながら言った。


それでも納得するのにしばらく時間のかかったハヅキは、一応手を差し伸べて自己紹介する。


「驚いた…あなたみたいな小さな子も参加してるなんて。ハヅキよ。」


相手が小さな子供のせいか、ハヅキのいつものスーパー人見知りが発動していない。


「が、ガブリエルです。どうぞよろしく。」


そう言って亜麻色の栗毛がさらに幼さを際立たせている少年が丁寧にお辞儀をした。


サピエンティアの学生用の法衣を着ている。


(ラッキー。ら、く、しょ、う?)と黒ハヅキが頭の中で囁く。


そしていよいよ、ハヅキとガブリエルをコールする対戦カードが切られた。

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