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2 招かれ人

「ええと……」



「ぶははははは!!!」



 時が止まったままの私を見て大笑いするジュリー。

 涙目になりながら私に紅茶を勧める。



「まあ飲めや」



 目の前に置かれたティーカップ。

 この香りは……



「美味しい」



 懐かしい味がした。

 はじめて飲んだあの紅茶の味。



「アールグレイ?」



 カップを置きながらジュリーを見る。



「多分な」



 多分て。



「この世界には茶葉の名前がないのよ。紅茶は紅茶でひとくくり。色んな茶葉があるんだけどな」



 え、なにそれ。

 アールグレイやセイロンとか名前も香りも味も違うのに紅茶ってひとくくりにされちゃうんだ。



「変なの」



「な、変だよなー」



「いやいやいや、それより何よりここはどこ?ジュリーは……本当にジュリーなんだよね?」



 夢なのか現実なのかまだよくわからない。

 そんな空気をよんでかジュリーが苦笑いしながら答える。



「本当にジュリーです。ここは……」



 カランカランカラン



 話の途中でお店のドアが開いた。

 ベルと共に男性の声が聞こえた。



「こんにちはジュリー」



「いらっしゃいませ」



 洋画に出てきそうなダンディーなおじ様。

 シルクハットが良く似合う少し白髪混じりのスーツ姿は品の良さがにじみ出ている。



「ス……ステキ」


「おいおい」



 あきれたように言うジュリー。



「おや?こちらのお嬢さんは……!?」



 はっとし、そして頬を少し染め視線を私からそらすおじ様。

 どうしたのだろうと思うとジュリーがあわてて私に言う。



「夢子、こっち来いこっち」



 席を立ちカウンター内へ。



「その服はまずい。この世界、女性は脚を見せてはいけないんだよ。ちょうどいい服があるから待ってろ」



 ジュリーが用意してくれた服は深いグリーンのスマートなロングスカートワンピース。

 2階にあるジュリーの部屋で着替える。

 このティールームの前任者がバイトの子に制服として着せていたらしい。

 サイズもまぁちょっと大きいかなくらいで問題なかった。

 クラシカルなデザインでとてもオシャレ。



 にしても脚見せたらダメなのか。

 特別短いスカートではなかったんだけどなあ。膝くらいのスカートだし。

 さっきの紳士なおじ様に謝らなきゃなー

 醜いものを見せてしまった……



 お店の方に戻ると紳士なおじ様はジュリーと話しながらお茶を飲んでいた。

 カウンター内に行き頭を深々下げる。



「先程は失礼しました」



「いやいや、こちらこそ良いものを……ゴホン、いや、うん、失礼をしたね」



 ははは、と苦笑いをし何事もなかったかのようにお茶を飲む。



「そうそう、夢子さんは招かれ人だってね」



「招かれ人?」



 なんだそれ?



「この世界には時折俺や夢子みたいに突然違う世界からやってくる人がいるんだと。そういう人を招かれ人と言うんだとさ」



「へー……」



 ん?

 待てよ。それって……!!



「じゃあ、私……もう家に帰れない……?」



 目の前が真っ暗になった。

 3年前に失踪したジュリー。

 この世界に来たから、だから帰れなかったんだ……

 自分もそうなるのかと思うと鼻の奥がツンと熱くなり、涙が滲んでくる。もう帰れない。帰りたくても帰れない。家族にも、会えない。

 もう2度と。




「あ、帰れるから。普通に」



「え?」



 あんだって?

 今なんつった?



「帰れるのよ、実は」



 帰れるって……帰れるですって!?

 私の一瞬のセンチメンタルな気持ちどうしてくれよう。

 なんか……なんか、恥ずかしいじゃないか!



「え、でもじゃあなんでジュリーは帰ってこないの?」



 ジュリーは少しだけ寂しそうな顔で答えてくれた。



「俺はこの世界で生きていくと決めたからだよ」

お読み下さりありがとうございます!

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