エピローグ
「……よし! バッチリ撮れてるな」
「おしまい?」
「おう。おつかれ、おりか」
保存された動画データにミスはない。おりかがVirtualボーカリストとして歌う姿がしっかり記録されていた。
そのおりかが、不満げに頬を膨らませる。
「……燐はケチ。散々メンバー面しておいて、にぃにが動画を提出するのはまた別の話だなんて。にぃにはすごく頑張ったのに」
「燐らしいっちゃらしいけどな」
「…………にぃには燐の肩を持つんだ」
「いやそういうわけじゃないって。拗ねないでくれよ」
「……拗ねてないもん」
今はほぼ直立で歌っているだけのこの動画データを編集して、きちんと背景なんかも付けて、きちんと見れるミュージックビデオにする。それをこれから数日で行わなければならない。
「……でも、ワンコーラスでいいの?」
「いいんだよ。フルバージョンを作るにはどう考えたって時間足りないからな。全体がスカスカになっちまう。だったら一分半の中に出来る限りのクオリティを詰め込む方が、断然いいものが出来るだろ? 時間切れの可能性も下がるし、仮に時間切れが来ても、低クオリティにはならないはず……って、夏々華先輩のアイデアなんだけどな」
「そうなんだ。じゃあわたし、にぃにのお手伝いするよ」
「お、やってくれるか? ちゃんと出来るのか?」
「むぅ。出来るもん」
おりかには出来ることが増えた。きっとこれからも増えていくことだろう。そしてそれを支えるために、俺も色々覚えていくことになるんだろうな。
まぁなんとでもなる。なにせ、一ヶ月で作曲とシーケンスが出来るようになったんだ。必要に迫られれば、さすがの俺でもやれないことはないさ。
……それより。
「なぁ、おりか。もしかしたら、また小牧のヤツなんかが嫌なことをわざわざ言いに来るかもしれない。その……大丈夫か?」
それが不安なんだ。おりかの話では、あの暇人がまたやって来る可能性は大いにある。アイツは特に痛い目を見たわけでもないしな。いつか絶対に、二度とおりかに嫌がらせ出来ないようにしてやる。燐辺りと一緒に。そう決めてはいるが。
だが、俺の心配に、おりかは問いを返してきた。
「ん……わたしがにぃにのお手伝いしたら、時間、出来るよね?」
「え? ま、まぁそうだな。そしたらまた新しい曲とか、動画とか……」
「違うの。そういう時間じゃなくて……」
おりかは少し不安げに、上目遣いで問う。
「にぃにと一緒にいられる時間、出来るよね? 燐と夏々華と、バンドじゃないお喋りも出来るよね?」
「……ああ。そうだな」
俺はそれに当然笑みで返し、
「なら……わたしはもう、大丈夫だよ」
おりかもまた、微笑みを返してくれるのだった。
最後までお疲れさまでした。




