【第37話】Coffee Break『麻生家の食卓 with モモ』
当作品は女子生徒と女性教師の二人の視点から交互(1〜2話毎)に話が進んでいきます。
なおサブタイトルの見方は、
Spring①(生徒・菜美視点)
その話(内容)における大まかな季節
通し番号
生徒と先生どちらの視点(語り)か
視点(語り)側の名前
という構成です(第1話を例にしています)。
また時折挟まる『Coffee Break』は、本編で出てきたエピソードの詳細や本編には出てこない彼らの日常を会話主体で描いた小話です。飛ばして頂いても差し支えありませんが、本編と一緒にお楽しみ頂けたら幸いです。
登校日の翌日。麻生菜美の家に遊びに来た百瀬裕太。
「こんにちは、麻生ちゃん、麻生ママ。本日はお招きありがとうございます。あ、これ差し入れのケーキです。麻生パパの分もあるよ!」
「モモ、いらっしゃい。わざわざありがとう。」
「モモちゃん、久しぶり〜!ささ、上がって上がって〜。」
「はい!お邪魔します!」
三人はリビングへ。そこには既にたくさんの料理が並べられていた。
「今日はモモちゃんの大好物であるからあげをメインにしました〜!」
「ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しい!しかもポテトサラダに卵焼きにタコさんウインナーまで!何だかピクニックみたい!」
「ご飯とお味噌汁もあるわよ〜。あともし苦手でなければ自家製のぬか漬けもいかが?…ちなみにね、卵焼きは菜美ちゃんが作ったのよ。」
「麻生ちゃんが?」
「お母さん!!」
「そう。実はこの子ね、今まで料理というものをほとんどしてこなかったの。私は食べる専門だから!…みたいな感じでね〜。でもモモちゃんをお招きするって決めたその日から毎日のように練習したのよ。だからすぐには呼べなかったの。ふふっ、少しでも美味しく作れるようになりたかったみたい。」
「…そうだったんだ。」
「本当はからあげを作りたかったみたいだけど、さすがに目玉焼きとゆで卵しか作れない娘にはハードルが高いだろうからまずは卵焼きになったのよ〜。」
「……わざわざ言わなくたっていいのに。」
「菜美ちゃん、照れないの。誰かの為に一生懸命頑張ろうとするのは素敵なことよ〜。」
「…麻生ちゃん、ありがとう。じゃあ卵焼きからもらうね。…いただきます。」
「……ぁ。」
「…うん、凄く美味しいよ!感動レベル!」
「……そこまで言ってもらえるものじゃないよ。端っこを切り落として味見したけど予定より砂糖入れ過ぎちゃっていたし、所々焦げが強いし、綺麗な渦巻きになっていないし……。」
「それでも美味しいものは美味しいの!…頑張って作ってくれてありがとう。俺、この卵焼きの味一生忘れないよ。」
「…モモ、大袈裟過ぎ。」
「ふふっ。頑張って良かったわね〜菜美ちゃん。モモちゃん、他にも色々あるからたくさん食べてね!からあげも足りないようなら追加で揚がるわよ〜。」
「はい!ありがとうございます!」
モモ帰宅後。
「ふふっ、やっぱり男の子は食欲旺盛ね〜。たくさん作っておいて良かったし、何より食べっぷりが気持ち良かったわ〜。」
「うん、そうだね。」
「…卵焼き、結局モモちゃん一人で全部食べちゃったわね。」
「…うん、そうだね。」
「…菜美ちゃん。料理に限らず何事も練習や経験の積み重ねよ。今すぐ完璧にしようなんて無理無理!それに得手不得手だってあるんだから、あなたはあなたのペースで良いのよ。千里の道も一歩からって言うじゃない。それに今回で終わりではなく今回が始まり!…でしょ?」
「…そうだね。またモモを家に呼んで食べてもらえるように頑張るよ。次はもう少し自分で納得できるものを、さ。」
「それもそうなんだけど〜。菜美ちゃん、いずれはモモちゃんと結婚するんでしょ?だからこれから少しずつ、ゆっくりと料理を覚えていけばいいのよ〜。だいじょ!菜美ちゃんがもう少し上達したらからあげの作り方もちゃんと教えてあげるわよ〜。」
「な…っ!何でそうなるのよ!!」