川くだり
※ なななんさま主催の「夏の涼」企画 参加作品です。
木々と岩とのトンネルを抜けると、あたりいちめんが陽の光につつまれた。水は清み、水中を泳ぐ鯉の黒い背と白い口がくっきりと見分けらるほどだった。
水の音と、鳥の声……自然の音色……、そこへ、舟をこぐおじさんの涼しげな歌声が混じった。
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やぁまの 丈夫な じぃいさまが
こつりこつこつ 斧ならぁし
ゆれるかおりは ゆぅるれゆれ
谷川くだる かぜのうち
かぁわで 健やか ばぁあさまが
つぷりつぷつぷ 水はねぇて
きもの洗って おるとこぉろ
ゆれるひのきの かぜのうち
こつりつぅぷつぷ つぷりこぉつこつ
耳をぉすましゃ 谷川ぁの
つぷりこぉつこつ こつりつぅぷつぷ
音が聞こえぇる かぜのうち
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帰りに、おじさんにすすめられた茶店でみたらし団子を頼んだ。
陽の光を浴びて金色に光るお醤油からは、口をつける前から甘いにおいがただよった。
お団子を口に入れると、目の前を緑の蜻蛉がかすめていった。
店先の風鈴が、ゆれて鳴った。