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第11話 顔の赤い理由

 俺が部屋に戻ると、顔を赤らめている莉那とそんな莉那を楽しげに見ている優がいた。

「何が、あったんだ?」

 状況をつかむことができないので、まず、莉那のほうに聞いてみる。俺が部屋を出るときは結構怒っていたのに今はおとなしくなっている。

「な、なんにもなかったよ……」

 莉那は慌てたようにそう言うと顔を俯かせてしまう。

 莉那はああ言っているが何もなかったとは思えない。なので、今度は優に聞いてみた。

「優、何かあったのか?」

「あったにゃ。莉那がにゃ。雅渡のことを――――」

 そこまで言って優は真っ赤な顔をした莉那に口を押さえられた。喋られたくないことを喋らせないため、といった感じだった。

 俺はその光景を不思議に思いながら眺めるしかできなかった。

「本当になんにもなかったよ。わたしたちは外に出てるからその間に着替えてよ」

 莉那は優の口を押さえたまま外へと出て行った。

 あそこまで、何もなかったと強調されてしまえば何かあったと思ってしまう。それに、何もなかったのに顔が赤くなってたり優を黙らせるために口を押さえるというのものおかしい。

 まあ、とりあえず早く着替えなければいけない。着替えるのが遅くなってしまったら俺が着替えている途中に莉那が戻ってくるということになりかねない。なので、俺は早々に着替えることにした。


「えっと、雅渡、着替え終わってる?」

 着替えが終わり学校に行く準備も整ったとき、少し遠慮がちな莉那の声が聞こえてきた。

「ああ、もう着替え終わってるよ。だから、入ってこいよ」

 俺は莉奈に部屋の中に入るように言う。

 その直後に窓の横の壁からゆっくりと莉那が入ってきた。何故だかぐったりしている優を抱いて。

「なんか優がぐったりしてるみたいだけど何かあったのか?」

「え、な、なんでもないよ。そ、それよりも、学校行く準備終わった?」

 莉奈は顔を赤くしながらすごく慌てたようにそう言った。

「あ、ああ。もう終わってる」

 何を隠してるんだ、と聞こうと思ったが聞くのがためらわれるほどの慌てぶりだったので聞くことが出来なかった。

「り、なは、まさ、と、が――」

 ぐったりとしていた優が弱々しい声で何かを言おうとしていたが顔を真っ赤にした莉奈にまた口を押さえられてしまった。

 何をそこまで恥ずかしがっているのかはわからないがそんなに恥ずかしがっているとなんだかこちらまで恥ずかしくなってしまう。

「さ、さあ、雅渡、は、早く学校行こう」

「そ、そうだな」

 そんなふうに不自然に言葉を交わして俺たちは家を出た。


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