プロローグ
パソコンをいじってたら見つけました。
未完成のまま残っていたので、反響がありましたら随時書いていきたいと思います。
何かの音で目が覚めた。
時計は見える所に見当たらないのか、正確な時間は分からないがそろそろ日付が変わる位なのだろうか、不意に目が覚めた。
体の感覚という感覚を失っていた。
自分の肉体と脳が酷く距離があるものに感じた。
脳が命令を送ってもピクリとも反応しなかった。
まるで、神経自体に絶縁テープをぐるぐる巻きにされているような感じ。
全ての感情が不快という感情で満ち溢れていた。
しかし、俺の視界上では俺の胸の上に何かが乗っているように見える。
そのせいで体が動かないのかもしれない。
俺は漠然とそう思った。
意識をそこに集中させてみると少しだけ感覚が繋がった気がした。
その僅かな感覚に全神経を集中させているためか、俺という存在をはその部分に集約される。
「っひゃ」
自分が突然ザラリとした感触にに包まれた。未知の感覚に反射的に情けない声が出る。
まるで猫に咀嚼される餌のようだ。餌に感覚があるかということは別として。
人間は脳にだけ意識が集中するとそんなことを考えるのかとその場に似合わないことを考える。
咀嚼され続けていると突然自分自身がまるで爆発を起こしたかのように瞬間的俺の体が自由になった。
ようやく動くようになった首を動かしてそのナニかに目を向けた。
暗いのは体が自由になら前と変わらず暗いままだったため人型のような物しか乗ってるようにしか見えなかった。
目が暗闇に慣れてきたのかまだその影の姿が朧気ながら見えてきた。
年端のいかないような少女のようにも老婆にも見えた。
俺のその視線に気がついたのかソレは目線を向けた。
----大丈夫だよ。私がついてるから
幼い声だった。
少なくとも老婆の類ではなかった。
何が大丈夫なのだろうか。
そう発した俺の声はひゅっと擦れて彼女に届く前にスッと霧散した。
彼女が立ち上がると月明りに彼女が照らされた。
やはり少女だった。
俺はその格好を見て絶句する。
目の前の少女の衣服、顔、そしてその体が赤い色の何かに濡れていたのだ。
その赤い液体はポタポタとまだ固まることなく俺の服に赤い赤いシミを作っていく。
この液体がケチャップやら、赤い絵の具だったらいいな。そんなことはないだろう。
思わずそんな風に楽観的に物事を捉えてみたりしてみようとしてみたがやっぱり無理だった。
しかし、ならば説明がつかないことがあった。
もし、痛覚がマヒしているなら話は別だが、俺の体はどこからも血は出ている様子はなかった。
それどころか怪我をしている様子もない。
かすり傷一つないというのは今思えば不気味な話だったが、あの状況ではそんなマトモな感情は働いていなかった。
俺が自分のおかれた状況を確認している間に彼女は俺の体をべロリと舐めていた。
その容姿に沿わないような乱雑な舐め方で俺の体を胸から上の方へどんどんと舌が進んでくる。
少女の舌の感触は人のソレというよりどちらかと言うと猫や他の肉食獣のソレに近かった。
ザラリとした感触。
彼女が舌を動かす度に自分の何かが削られていく感触。
ザラリ、ザラリとまるでヤスリで削る音が脳髄まで響く。
そんな彼女の姿を見て俺は、あたかも俺を自分のものと主張しているようだな。と他人事のように感じた。
「お前は……」
俺の体にようやく意識が通るようになってきたのか、口を微かに動かして俺の眼前にいる少女に尋ねた。
「あ、私?」
話かけられた少女は、さもそんなことを聞かれるのが予想外であるかのように目を丸くして自分のことを指差す。
いや、もし違うのなら俺は誰に聞いているのか教えて欲しいところだ。
私は、---だよ。
彼女が口を開くと同時に意識が暗闇に吸い込まれていく。
薄れゆく意識の中で俺は彼女の唇の動きだけを見つめていた。
読了感謝です。
温かい目で見ていただければ幸いです、