黒土信仰
クロツチと呼ばれる御神体を崇拝する、特定地域の土着信仰、及び周辺の村の風習。
クロツチとは、川や海といった浄化作用・流れを持った自然が無いその土地に於いて、ゴミ・生活排水や汚物・猟で収穫したケモノの残骸・村人の死体や欠損部位などを、村の住人で決めた場所に廃棄を始め、その堆積が時を経て穢れ・悪臭を放ち、土地・土が黒く変色したもの。
その悪臭を放つ見た目や、土の変色した経緯を畏れた一部の者たちが【クロツチさま】と擬人化し、崇拝を始めたのが発端とされている。
転じて、人の悪い感情・恨み、嫉妬、噂、悪口などといった形而上の穢れも、この地域ではクロツチとされている。
この信仰には御供があり、その見返りがあるとされている。
各時代にクロツチさまと呼ばれるエネルギー体と繋がれる神子がおり、男性を男神子[オミコ]、女性を女神子[メミコ]と呼んだ。
神子に託された願いは、相応の対価と交換でエネルギー体が提供する。
これにより、山奥の吹き溜まりの痩せた村で五穀豊穣を実現し、子子孫孫を殖やした実績と歴史があることが伝えられている。
この黒土信仰が衰退した理由は二つある。
対価の独占と、その影響力の大きさである。
神子しかエネルギー体との対話が出来ないため、神子は特別扱いを受けており、住居・食物・金銭に於いて、村の人間がいくら困ろうと贅沢な暮らしをしていた。
これにより、飢饉の時代などは村人の恨みや妬みが募り、皮肉なことにクロツチさまを更に逞しく増強したとされる。
しかし、神子の人格により村の繁栄が左右され、神子の意のままに人が減り人が増える、この神の如き御業と影響を畏れた当代の領主から、神子たちは隠密里に処分されていった。
そして、今ではごく一部の者しか、クロツチさま・黒土信仰を知る事はいなくなり、過疎の村の更に奥深くにクロツチさまを祀っていたと思われる、苔むした社があるだけとなっている。
ーーークロツチさまは神ではなくエネルギー体である。
クロツチさまという神が、生贄を指定し願いを叶えているのではない。
クロツチさまとはいわば、それを知る者たちの羨望や妬み恨み口に出した穢れの数々が、その者たちがクロツチさまと呼ぶ概念に集まった、呪いの貯金のようなものである。
神様であれば思考を持ち、天災を与えていても「神子たちの願い」を聞けば【そうか。ではヤメてやろう】ともなるだろうが、クロツチさまは思考を持たないエネルギーのカタマリである。
ダムが決壊したとして、ダムに「ヤメて!」と叫んでもどうにもならないように、クロツチさまの災いも対価も止めることはできない。
クロツチさまが太り過ぎれば量を減らす=エネルギーを願いに交換する。痩せすぎたら生贄を捧げる=目減りした貯蓄を取り戻す。といった調整弁の役割が神子にあるが、この役割を満たしていた神子はただの1人も居なかった。
神子として選ばれるのは、悪意をバラまくために生まれた、道徳心が欠如した者である。
通常の観念を持ってすれば、悪魔と言ってもいい。
その悪魔はいつの時代も己の欲望だけを満たし、気に入らないモノをクロツチに入れ、死ぬまで享楽を求めて、生きてながら地獄へ堕ちた。
この村の言い伝えによると【神子を探すならば、黒眼が極小さいものを選別にかけよ】と記されている。




