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ぎゃふんの方向性が違ったんだが

「カミラ!おまえとの婚約を破棄する!」


舞踏会。爛々と耀くシャンデリアの下。

これからぎゃふんと言わされそうなテンプレ台詞を吐いたのは、この国の皇太子ユーリだ。

本当はユリウスハルト・フォン・メイリオンという立派な名前があるのだが長いのでみんな愛称で呼ぶ。


(ふひゃひゃひゃひゃ!!よし、カミラ俯いたまま何も言ってない。

ここまでの人前でやったことは今までなかったもんな。通算7回目の破談話、今回こそ成功だぜ!)


ユーリは色気むんむんな男爵夫人の肩を抱きながら自身の婚約者にドヤ顔をした。

夫の葬式で涙を流していた夫人にハンカチを渡したところから始まった恋。




(思えば、今までの片想い相手にはフラれたり相手が行方不明になったりばっかりだった...。

独断の婚約破棄だから父上にはあとで怒られるかもしれないけど関係ないね!ようやく成就した俺の恋、ここから始まる桃色の日々!)


既にお気付きの方も多くいらっしゃるだろうが、ユーリは頭が少し残念だった。

だから頭が良くて完璧なご令嬢と謳われる公爵令嬢のカミラのことが嫌いだった。あと、たまにちょっと怖いのも嫌だった。



婚約破棄宣言から俯いたままだったカミラがすっと顔をあげ、ユーリのことをまっすぐに見つめた。


「な、なんだ......!文句あんのかよっ?」




「なら国家転覆します、殿下」



(えっ)



「国家転覆したのち殿下を誘拐し監禁しわたくしの愛を受け入れてもらいます。それでもわたくしを拒絶するなら殿下を殺害のち後追いをして心中します。

わたくしが殿下をお慕いし始めたその日からこの想いを惜しみなく伝えてきたつもりでしたが、努力不足だったようですね......。」



(えっえっ)



「既に国家転覆できるだけの武力はあります。ご心配なさらないでください、殿下。

......ああ、大丈夫。貴方は何も悪くないのですよ。

わたくしがうっかり虫を捕り逃したのが悪いのです。

今までのように殿下の想い人を脅したり消したりし損ねたから......!」



「なにそれ知らない」



発覚した婚約者の今までの行いにガタガタと震える俺。コワイヨコワイヨ。

真横で宙を飛ぶ男爵夫人の首。迸る血飛沫。


夫人の体がカーペットの上に叩きつけられる。あっけなく事切れてしまった想い人に俺は愕然として言葉が紡げなかった。


カミラの魔法だ。そういえば彼女は座学も実技もイケるタイプの万年首席だった。






「婚約破棄を撤回しとくれ、ユーリ!!

頼む!」


「ち、父上ー!?」


王座から転げるようにして俺のもとまで来た父上が涙目でこちらを見上げながら縋ってくる。


「このままだとガチで国家転覆されてしまう......!カミラ嬢はつよつよなのじゃ!!」


(カミラは一体何者なんだよ!?!?)







「ご安心を、殿下。速やかに国家転覆いたします!」


(今一番安心できないのはお前の存在だよ?!)


「うええぇぇん!!わしはまだ王様でいたいんじゃー!!」


(もう少し威厳を持ってくれ父上ー!)




「あーもう!!

分かった!!分かったから!!もーー!!


婚約破棄はやめだ!!やめ!!」


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