4、俺って無敵だよな?
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
「でも学生は授業を受ければ、収入があるから大人よりは優遇されてるよ」
気の強そうな男子は、魚を捕ろうとしない俺に怒りを覚えたのだろう。
少し、誇張して言ったんだと思う。
その証拠に、今は申し訳なさそうな顔をして訂正した。
「へぇ~、学生の仕事は勉強をすることってことなんだろうな」
「そうだよ。みんな一人でこの街に来たから親なんていなくて大変なんだ」
一匹じゃなくて一人って言うみたいだな。
もう猫じゃなくて人間じゃん。
「みんな一人?」
「俺が知っている限りだと、そうだよ。だから、人間っていうのは珍しいけど、人間と猫のペアも珍しいんだ」
「ペア?」
「うん。一人で来たらシングルで二人で来たらペアって呼ぶんだ。聞いた話だと、親子や夫婦で来る猫もゼロではないみたいだよ」
だから、アイブにクラスメイトが集まっていたんだな。
みんな一人で来ていたら、アイブを羨ましく思う子がいてもおかしくないかもな。
「アイブ、大丈夫かな?」
「どうかな? 今までペアはいなかったから、みんな仲良しだったけど、クラスの雰囲気は変わるかもしれないし」
「アイブの所に行ってみるよ」
「場所は学校の裏山で、看板が立っているから、その通りに進めば着くよ」
「本当? ありがとう」
俺は裏山へ向かった。
看板の通りに進めば女子達が見えた。
あそこにアイブはいるはず。
「君たち、アイブはどこかな?」
「アイブちゃん? 前の方にいると思うよ」
俺は前の方へ歩みを進める。
アイブが見えた。
でも様子がおかしい。
もっと近付くと異変に気付いた。
アイブは崖に生えたキノコを取ろうと手を伸ばしていた。
「アイブ、危ない」
俺は叫んだが、その時には遅かった。
アイブは崖下へ落ちていく。
その時に、アイブと目が合った。
あの日、事故に遭った時の目と同じで怯えていた。
俺は駆け寄り、落ちていくアイブを見つけて、届くはずはないのに手を伸ばした。
その時、俺の薬指から糸が出てアイブに向かって伸びる。
蜘蛛の糸のように白くて丈夫な糸は、アイブを一周すると、糸のおかげでアイブは宙に浮く。
何が起こったのか分からない。
女子達も集まり、この状況を見ている。
これからどうすればいいんだ?
まずは、アイブを引き上げなくてはいけない。
「ごめん、みんな。引き上げるのを手伝ってくれるかな?」
それからみんなでアイブを引き上げた。
アイブと俺は、みんなに頭を下げてお礼を言った。
「アオイ。怖かったよ」
アイブは俺に抱き付きながら言った。
俺はアイブの頭を撫でて落ち着かせる。
「アイブ、危ない所に行ったらダメだろう? それに、あのキノコは美味しくないよ」
「ごめんなさい。でも美味しそうだよ?」
「美味しそうに見えても、あれは不味いんだ。あっ、これは不味そうに見えて美味しいキノコだよ」
俺はアイブの足元に生えていた、葉っぱに隠れているキノコを見つけて言った。
俺の言葉に、アイブだけじゃなくて女子達も興味津々に聞いている。
俺はフリーターで、正規雇用よりは時間があったから、興味のあることを勉強していた。
キノコ好きの俺は食べられるキノコ、食べられないキノコを図鑑などを見て、勉強していた。
他には、食べられる野草や、宝石の種類や特徴など、気になる物はなんでも本やネットなどで情報を吸収した。
それから俺は女子達が山担当の時は、強制的に山担当に配置された。
男子は、女子と一緒でいいなと羨ましそうに言っていた。
俺がフリーターだから、できた勉強が役に立ててよかった。
俺って無敵だよな?
しかし、俺から出た糸がなんなのか分からず困っている。
長に聞いたが、そんな力を使える者はいないそうだ。
似たようなもので、この街には魔法が存在する。
でも魔法とは違っていて長も困っていた。
魔法は、収入で強い魔法か弱い魔法が使える。
長のように手をかざして使うようで、白い糸なんてものは出てこない。
少しだけ魔法の使い方を教えよう。
頭の中で収入をどれだけ使うのか決める。
そして手をかざして、どうなって欲しいのか頭の中で伝える。
魔法は、誰かを傷付けることには使えない。
そして、長だけにしか使えない魔法もあるそうだ。
しかし、どんな糸なのか観察したいが、あの日から一度も糸は出てきていない。
ペアの特徴なのかもしれないと思いペアに訊きたくても俺達しかいないし、今までもペアが来たという噂はあったが本当に見たという人はいない。
だから調べることもできず、ペアが俺達しかいないということだから、ペアの特徴なんだということに落ち着いた。
ペアのどちらかが、命の危機の時に発生する糸。
その答えにたどり着いた。
みんな、あまり追究はしなかった。
なんか俺って無敵?
「あれ? 一番前の席にいた女の子は何処に?」
ある日、俺は空いた席を見て言った。
周りのクラスメイト達は元から空席だったと言う。
そんなはずはない。
アイブと気が合う女の子だったから覚えている。
アイブも、ちゃんと覚えている。
アイブは気が合う女の子がいなくなって、泣きそうになっている。
だから必ず真実を解明し、悲しむアイブに伝えたい。
しかし怪しい。
この街は何か変だ。
何か隠していることがあるはず。
俺は長に訊くことにした。
何故だか長は信用できると確信をしていた。
長の、この街の人達に対しての対応は、心からの優しさからきているように見える。
一人一人に優しく接しており、街の人達の悩みなども親身に聞いていたから。
嘘なんて言わないはず。
包み隠さず、この街がある本当の理由を教えてくれるはず。
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