超能力発覚②
【前回のあらすじ】
天胡は超能力者であると診断された。
◇
帰宅後。時刻は正午。
家族全員が机の前に集まった。
竜治「突然だが、天胡は超能力者で、ビームが撃てるらしい」
天胡「おい、父さん……。秘密を守るとは何だったんだ。父さんはそんなにすぐ放尿するのか?」
竜治「しょうがないだろ。これは今後の家族計画に関わる一大事何だぞ。身内に超能力者がいるとなったら、臨時の家族会議は開いて当然さ」
真弓「それより超能力が使えるっていうのは本当なの?」
天胡「本当。この前も薪に光線を撃って火を点けたし」
真弓「結構、有用性高そう」
青樺「すっげええぇえぇ。超カッコいいじゃん!」
天胡「カッコよくないよ。有用性もそんな高くないよ。エネルギーの消費も激しいし。まぁ、撃ってみるのはおもしろいけど……」
青樺「いいなー、いいなー。わたしも能力ほしいィ~。誕生日プレゼントに頂戴!」
天胡「あげられないよ。あげられたらどんなにいいことか」
青樺「気持ちとしてはいらないのな。何でだ? 能力があるっていいことじゃないか」
天胡「いいわけないじゃん。私は今後、普通の人間ではなく、超能力を持った人間として、蔑みと憐みの目で見られるかもしれないんだよ」
真弓「そんなことないよ。天胡が能力を無暗に使わなければ、誰も天胡を色眼鏡で見ないよ。そもそも偏見が生まれようがないんだし」
青樺「天胡を狙う奴がいたら、わたしと真弓が守ってやるよ」
天胡「姉さん……、ありがとう」
真弓「とりあえず、その光線を撃たないように気を付けな。今のままじゃ、撃てば撃つほど天胡の体がボロボロになってしまうと思うの」
それは天胡自身も強く感じていることであった。自分の能力が、自分の裁量次第で人を殺す凶器にもなり得ることを自覚していながらも、その能力で何ができるかを試そうとする好奇心に侵食されてる天胡がいることも確かだ。
◇
翌日の夕暮れ。
中学校の帰り道。天胡は、畑の猪を食い荒らした作物とばったり遭遇した。
作物は、天胡に構うことなく、彼女に背を向けて走って行ったが、道路には泥の跡が、まるで猪の怨念のようにべっとりと付いていた。
天胡は、農家の気持ちを踏みにじった作物が許せなくなったご近所さんの声を聞き、怒りを指に込めた。そして、周りの誰も自分を見ていないことを確認すると、両手を組み、人差し指を突き出して、力いっぱい光線を放った。仄かに青い筋が宙を貫き、作物をただの灰にするほど焼き尽くした。もちろん、食った猪も食った痕跡が残らないほど粉微塵にされた。
天胡は、自分の力が上手く制御できなかったことで足が竦み、辺りをあちこち見回して、動揺を抑えようと努めた。両手には滝のような汗が流れ、組んでいたのが自然と分かれた。
立ち止まる天胡の後ろから、農家のおばちゃんが作物を追いかけて来たが、燃えカスを眼前に唖然としていた。
天胡(あぁ……なんてことだ。私は、あのおばさんが作物を殺す機会を奪ってしまったんだ……)
天胡は膝から崩れ落ちた。
その後、作物の燃えカスに混じっていた猪の死体は、農家のおばちゃんによって畑に埋葬された。不作をもたらすはずの害獣の末路が、豊作をもたらす土と化すとは、猪も報われないだろう。
◇
天胡が慌てて家に帰ると、引き攣った顔をしながら姉二人に相談をした。
天胡「あの……私、このままじゃ力に溺れそう」
真弓「この前、根本的な話をし忘れていたけど、光線ってどうやれば撃てるの?」
天胡「人差し指を合わせて念じると撃てる」
真弓「じゃあ人差し指を合わせないようにすればいいんじゃない?」
天胡「でも、拍手するときなんかでも人差し指は合わさるよ」
青樺「裏拍手すればいいじゃん」
真弓「縁起悪そうなこと言わないでっ!」
天胡「人差し指を合わせるなは無理がある」
真弓「じゃあ撃とうとしなければいいのよ」
青樺「そうそう。気持ちだよ、気持ち。でも別に撃ちたければ撃っていいと思うけどね」
天胡「本当⁉」
真弓「だけどこれだけは約束して。絶対に人に当たるように撃たないで。僅かでも人に当たったら取り返しのつかないことになる。天胡の指は、裁量次第でどんな銃器にも勝るのだから。そのことを肝に銘じなさい」
青樺「多分、ずっと溜め込むのが良くないと思うの。適度に発散させな」
天胡「うん。難しそうだけど頑張らないと……」
超能力の扱いについてまだまだ未熟の天胡だが、姉のアドバイスによって、重くのしかかった気が楽になったのは確かだった。少しは自分の今後の生き方を探れたのかもしれないと思えると、思わず姉二人を抱きしめたいと思うようになった。
この日を境に、天胡の歩むべき道が決まった。彼女は能力者として、しかし一人の人間として姉と共に暮らしていくのだった。
そしてもう一つ。この日を境に柏竜治は、家へ帰って来ることがめっきり減った。勤め先だった雀天堂病院からもいなくなった。やがてメッセージの応対すらもなくなり、家には一年に一度、姿を現すだけとなった。
全ては、天胡が能力者であると判明したあの日から始まったのだ……。
◆◇◆◇◆
三年後。天胡の光線は、クジラ星人の顔の真横を貫いた。
真弓との約束は、未だ健在。




