NGワードゲーム④
【NGワード】
リア→『口腔』
トニー→『キャベツ』
安岡→『乳房』
虎屋→『尻』
チャルプス→『アナフィラキシーショック』
青樺→???
【三回戦】
[生存者]
リア、トニー、安岡、青樺
トニ「あのなぁ、みんなNGワードゲームの極意をわかっていない。いきなり性癖の話に入るのはダメだ。まずは世間話をして、和やかな雰囲気にしてから落とさないと」
青樺「快楽に?」
トニ「ゲームからだよ。君はもっとマシな堕とし所を考えなさい」
リア「青樺に世間話キャンセルされたぞ」
トニ「悲しみの渦に溺れて死にたい」
リア「勝手に死んでろ」
青樺「御託は済んだか? それじゃあリア、お前が質問を考えろ」
リア「わたしでいいのか。じゃあ、唐揚げといえば、何の肉を思い浮かべる?」
青樺「鶏だろ」
安岡「俺も鶏がすぐ思いついた。他に何がある?」
トニ「カエルとか?」
安岡「それ思いつくのトニーさんだけだよ」
リア「ごめん質問が悪かった。どこの部位かで答えてくれ」
青樺「基本は下腹部靭帯周辺を使うだろ」
安岡「腿って言えよ」
青樺「NGワード対策だよ」
リア「他にないか?」
青樺「あとは翼の付け根部分とか?」
安岡「普通に手羽先でいいだろ。絶対、性癖じゃないぞ」
青樺「どうでもいいが、わたしは天胡が美味しそうに唐揚げを頬張りながらご飯をかき込む姿が好きだぞ」
トニ「私もわかる。美味しそうに食べる女はいいよな」
青樺「共感してくれるのは嬉しいが、気持ち悪いからテメーを唐揚げにしてやろうか?」
トニ「真面目に話盛り上げようとしているのに酷くない? ひょっとして私、バラバラにされる?」
青樺「してやろうか? 少なくとも話のネタはできるぞ」
トニ「鶏の話を広げろよっ!」
青樺「広げたくねえよ。わたし、鶏より魚の方が好きなんだよっ!」
リア「鶏の方がいいだろっ! お前もそう思うだろ? 安岡」
安岡「俺もまぁ……鶏派かなぁ」
青樺「何でだ? 魚の方が解体してもグロテスクじゃないだろっ!」
安岡「味ベースで考えろよっ!」
トニ「別に解体ベースでもいいだろう。マグロの解体ショーとか、人間に例えたら緊縛ショーと同じだぞ」
安岡「全然違うだろっ!」
トニ「緊縛はソフトなリョナ。解体はハードなリョナ。こういうことだ」
安岡「なに真面目に語ってんの? こういうのに乗り気な人だなんて知らなかった」
青樺「でもわたし、マグロ嫌いなんだよね。寿司のネタで一番調子乗ってると思う」
安岡「乗ってねえだろっ! 脂が乗ってるから支持されてんだろっ!」
リア「わたしも寿司が嫌いだから気持ちはわかる」
青樺「別にわたし、寿司が嫌いなわけじゃないんだよ」
リア「わたしは嫌いだ。女が寿司を握れない世の中はおかしいと思うんだ。『チ◯ポでも握っていろ』とでも言うのか?」
青樺「それはな、女は男より体温が高い傾向にあって、寿司を握るとネタが温かくなるんだ。だから寿司が美味しくなくなり、職人には向かない場合がある」
リア「クソッ、やはり熱いチ◯ポばかり握っているからか」
安岡「絶対違うよっ!」
青樺「というか、最近は女性の寿司職人も増えてるぞ。お前が寿司食ってないだけだろっ!」
リア「あぁ……、知らなかった。鶏肉の方が食べてたから、つい……」
青樺「鶏の話は飽きただろ。だって卵生だぞ」
リア「逆に胎生生物ならいいのかよっ!」
青樺「いい。鶏はもう萎えた」
リア「萎えるモノもねえ性別のくせによく言うよ」
青樺「鶏だって萎えるモノねえぞ」
安岡「次、その話広げるの?」
リア「今更だけど、たしかに鶏って交尾をするイメージがないよな。ぺ◯スの商人から買ってないのか?」
安岡「ベニスの商人みたいに言うなよっ!」
青樺「ぺ◯スの商人とか、考えただけで気持ち悪いんだが」
トニ「わかる。不快感あるよね」
リア「意気投合すんなよ」
青樺「普通に考えればわかるだろうけど、他人の生殖器はグロいからな」
リア「生殖器って言い方がそう感じさせるんだよ。チ◯ポでいいだろ」
安岡「幼児言葉すぎるっ!」
青樺「男のアレは他にどんなやつがある? 女のソレだと、アワビみたいなやつ、とかあるけど」
トニ「それはちょっと下品なニュアンスが含まれているだろう」
青樺「いいだろ、別に。これ以上、椿の花弁をどう言い換えればいいんだ?」
トニ「下ネタ的なのは?」
青樺「それがいいと思うなら言えよっ!」
トニ「嫌だね。牡丹の蕾状のソレは生命の神秘、上品であるべきなんだ」
青樺「そんな肉の扉なんか下品だろっ!」
トニ「いや、採れたての芽キャベツみたいなものは……」
青樺「アウトだ」
トニ「はっ⁉」
リア「…………バカ」
リアは思わず顔を手で覆ったが、トニーは咄嗟に手で覆う間もなく、青樺に股間を殴られた。
青樺「紳士として上品に振舞いたかったんだろうが、お前は上品すぎた」
トニー・ジキルトハイド 脱落
安岡(…………怖ェ……)
リア(トニーと青樺が官能小説表現に長けているとか知るわけねえだろ。キャベツって女のソレの婉曲表現だったのかよ……)
青樺はリアを見つめると、
青樺「どうした。お前にしては珍しく表情に落ち着きがないぞ」
リア「……お前の心の声が渋滞していて、狙いが分からなかった。まさか、こんな誘導でトニーを仕留めるとは……。無念だ」
青樺「だろうな」
悶えるトニーは、遺言を残すかのような沈痛な面持ちで、
トニ「リア。それと安岡も。こんな官能小説の能無しに、我々が負けることなどあってはならない。お前たちで奏でるんだ。青樺に対する……鎮魂歌を……」
トニーは気を失った。
リア「……やるさ。わたしたちは、幾度となく風呂場を潜り抜けてきたんだから」
青樺「修羅場だろっ! お前ら、風呂好きなの?」
安岡「事務所に風呂がないから、近くの温泉によく行ってるんだ」
青樺「そこで、覗きを?」
安岡「してるわけないだろっ!」
リア「混浴だぞ」
青樺「……そりゃあ覗きなんていないなぁ。すまない。わたしが無知だった」
控えの弘前は、思わず首を傾げた。
青樺「というか、お前、安岡だっけ?」
安岡「そうだが」
青樺「お前、全然ゲームに乗り気じゃねえだろっ?」
安岡「そんなことないよ。ただ、お前やリアの圧に押されて……」
青樺「言い訳なんかいらねえよっ!」
安岡「いや、ちょっとォ……」
青樺「恥ずかしがってんじゃねえっ! 男なら、一皮剥きやがれェエエッ!」
この声は、窓の外、アパート一帯に響き渡った。
◇
一方、その頃。路地を散歩中の満子と沈子は、聞きたくもない青樺の叫び声を聞いてしまった。
満子「まぁ、最近の若い人は、言葉に品が無いわねえ」
沈子「本当よね。年々、日本人の言葉遣いが悪くなっているように感じるわねえ」
満子「五十年前とは大違いよォ」
沈子「さっきの声の子は大丈夫かしらぁ?」
岡田「大丈夫ですよ」
満子「あら、岡田泉成。お久しぶり。無事に釈放されたの?」
岡田「はい。お陰様で。捕まったので今は丸裸になってますけど」
沈子「でも生きているだけで偉いわぁ」
岡田「えへへっ。満子さんと沈子さんも元気そうで何よりです」
満子「よかったわァ。ところで、さっきの声の子は本当に大丈夫なの?」
岡田「大丈夫ですよ。青樺さんに淫語で勝てる人なんていませんから」
◇
そして柏家では、青樺とリアのしょうもない口喧嘩が繰り広げられていた。




