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NGワードゲーム②

 青樺「よくも弘前くんを……。妹二人も、さらには真弓の友達まで……。全部お前の仕業かっ?」


 リア「そうだ。特に四つん這いの女は厄介だったよ。光線のせいで、危うく脳が丸焼きにされるところだった」


 青樺「天胡を一方的に取り押さえるなんて、相当な手慣れだ。お前ら、能力者狩りのプロなのか?」


 リア「なんだ。能力者狩りという言葉を知っているのか?」


 青樺「秩父に行ったとき、能力者に出会ったんだ」


 リア「……花袋(かたい)か。あいつ、余計なことを言いやがって」


 青樺「仲間なのかよ」


 リア「まぁいい。能力者を捕まえたんだ。あとは何の能力も持たないお前をじっくりと痛めつけるだけだ」


 青樺「それが終わったらどうするんだ? 少数の能力者を犠牲にしたユートピアを作るのか?」


 リア「そのつもりなんだが、その言葉はわたしが言いたかった。悔しい」


 青樺とリアが話しているそのとき、青樺の背後から虎屋浩大が殴り掛かった。しかし青樺は、右足を後ろに蹴り上げると、虎屋の胸に命中させた。


 虎屋「グファッ……、こいつ……」


 青樺「邪魔するんじゃねえよっ!」


 リア「そうだぞ、虎屋。この女のパワーとスピードは並大抵のものじゃない。わたしには匹敵しないが」


 虎屋「しかし……、今こいつを倒せれば……」


 リア「それはわたしの役目だ」


 青樺「はっきり言うが、リア(この女)以外はわたしの相手じゃねえ。殴ろうと思えばいつでも殴れる。雰囲気でわかる」


 リア「これは本当だ。余計な手出しをすればやられるぞ」


 虎屋「しっ……失礼しました」


 リア「わたしの言うことが聞けないなら、一生バードウォッチングでもしていろっ!」


 虎屋「はい……」


 彼は大人しくなった。そしてリアは足を下ろした。


 青樺「戒めは済んだか?」


 リア「あぁ。それじゃあ、ユートピアに近づかせてもらうぞ」


 青樺「な~にがユートピアだよ。ディストピアまっしぐらじゃねえか」


 リア「お前、柏竜治という男を知っているか?」


 青樺「⁉ ……いや、知らない」


 リア「やっぱり……お前、知ってるな?」


 青樺「知らないっつってんだろっ!」


 リア「そうかー、父親なのかー」


 青樺「何故それを⁉」


 リア「もう薄々察しているだろうが、わたしの能力は、視界に入った人間の心を読むことだ」


 青樺「わたしの心はスケスケだったということか。まるでレースカーテンのように」


 リア「既に妹の心を読んで知ってはいたんだけどな」


 青樺「で、親父がどうした?」


 リア「柏竜治は、能力者たちを管理する組織の所長をしているから、わたしは会いたいんだ。お前も柏竜治に会いたくないか?」


 青樺「会いたい。会って一回殴りたい」


 リア「そうか。わたしもだよ」


 青樺「それで、どうやって親父に会うんだ?」


 リア「簡単だ。お前らを人質(エサ)にして、柏竜治をおびき寄せる」


 青樺「それってつまり、今ここでわたしが負ければ、親父に会えるかもしれないってこと?」


 リア「そうだ。乗ってみないか?」


 青樺「乗るわけねえだろっ! 何でお前の言いなりにならなきゃいけないんだ」


 リア「何だ? 会いたいんじゃなかったのか?」


 青樺「そりゃ会いたいさ。だからわざと人質になるのも悪くはないな、って最初は思ったよ。だがな、人質にする目的の下、わたしの妹に危害を加えたことは、何があろうと許せねえっ!」


 リア「しょうがねえだろ。あの天胡とかいう奴が能力者なんだからよー。多少乱暴にもなるだろ」


 青樺「じゃあ真弓までやる必要はないだろっ!」


 リア「お前、あんな豊満で傲慢な奴、嫌気が差さねえのか?」


 青樺「そんなわけねえだろ。胸が豊満で何が悪い。それに、真弓がいなかったら、誰がわたしの教科書に名前を書いてくれるんだ?」


 リア「自分でやれよ、それぐらい」


 青樺「あとお前ら、勝手にこの家に侵入したよな? いくら心がグレートバリアリーフのわたしでも、二回目の不法侵入はブチギレるぞっ!」


 リア「逆に過去一回は侵入されたのかよっ!」


 青樺「天井裏に住み着いてた」


 リア「ネズミかっ!」


 青樺「そんなわけでな、お前の言いなりになって柏竜治に会うつもりはない。お前を倒し、お前を研究材料として親父に差し出す」


 リア「ずいぶんと威勢がいいな。また拳を突き合うか?」


 青樺「それはいいかな。なぁ、わたしから一つ、ゲームを提案したいんだが、どうだ?」


 リア「NGワードゲームだと⁉」


 青樺「お前、心読むんじゃねえっ! 当たっているけどさ。そうだ。チーム対抗のNGワードゲームだ。わたし一人 対 お前ら五人で戦う。わたしはお前ら五人にNGワードを言わせたら勝ち。お前らはわたし一人にNGワードを言わせたら勝ち。勝った方は負けた方をどうしようが構わない。わたしの妹たちも含めてな。どうだ? そっちがかなり有利なはずだぞ」


 リア「わたしの能力で心が読めることを知った上で仕掛けるのか。当たり前だが、お前の目論見も筒抜けなんだぞ」


 青樺「じゃあ、その目論見とやらを当ててみろよ」


 リアは青樺を凝視した。


 青樺「キャー、見ないで」


 リア「うるせー。というかお前、何の策もないのかよっ!」


 青樺「策は咄嗟に練ればいいんだよ。どうだ、この好条件は?」


 リア「いいだろう。みんなはどうだ?」


 リアは部下四人に確認を取ると、そのうちの一人、安岡敦男(やすおかあつお)が青樺に訊いた。


 安岡「肝心のNGワードのテーマは何だ? それだけが気がかりだ」


 青樺「こればっかりは、わたしの最も得意なジャンルでいかせてもらう」


 安岡「ふざけるな。それだったら反故にさせてもらうぞ」


 と言った瞬間、リアは青樺を見て笑った。


 リア「お前、おもしろい奴だな」


 青樺「こいつ、脳内ストーカーすぎて気味が悪いんだが」


 安岡「慣れろ、そんなもん。早くテーマを言え」


 青樺「あぁ。テーマは、性癖だ」


 場は一瞬凍り付いた。


 安岡「はぁっ⁉ お前、もっとマシなテーマ用意しろよっ!」


 青樺「と言っても、波戸野リアは大ウケだぞ」


 リア「当然だろ。このテーマならわたしだって得意分野さ」


 安岡「リアがよくても、俺が嫌なんだが。恥ずかしいだろっ!」


 リア「うるせえなぁ。お前は、子宮の中を突き進む精子の如く、上司に逆らう気か?」


 安岡「なんちゅう例えを持ち出すんだよっ! 俺が精子で、リアが子宮⁉」


 リア「やらせてくれよ。わたしだって日頃の()()()()を晴らしたいんだ」


 安岡「鬱憤(うっぷん)だろっ! まだ始まってもいないのに飛ばしすぎっ! トニーさんはどうなんですか?」


 トニ「まぁ、リアがいいって言ってるんだし大丈夫じゃないかね。もちろん、()()()()の不安は過るが」


 安岡「一抹(いちまつ)の不安だっ! あんたも乗り気になるなっ!」


 虎屋「あの……、僕、NGワードゲーム初心者なもので心配なんですけど……」


 青樺「別に気にすることはないぞ」


 リア「性癖NGワードゲーム界隈は初心者大歓迎だからな」


 安岡「廃れちまえっ! そんな界隈」


 虎屋「よかったぁ。安心しました」


 安岡「するなよっ! 最後まで歯向かえよっ!」


 リア「あと、あんたはどうなんだ?」


 リアは、部下のチャルプス・ヴァルプルギスにそう訊くと、チャルプスは目を何度も瞬かせながら、


 チャ「わ……私は、リア様がいいと仰るならいいと思います。リア様が勝てそうなら……それで」


 彼女の悲しい目に、部屋の誰もが反論できなかった。


 リア「決まりだ。わたしらは乗ってやるよ、青樺(おまえ)淫靡(いんび)テーションに」


 青樺「うわー、いい言葉」


 一方、一連のやり取りを気絶したフリをしながら聞いていた弘前は、


 弘前「やめてくれ。これ以上、青樺が他人に弄ばれるのを見たくないんだ……(あと下品なところも)」


 青樺「弘前くん。わたしを信じて。絶対に負けないから」


 弘前「青樺…………」


 青樺「弘前くん…………」


 リア「何だよお前ら、イチャイチャしやがって」


 青樺「いいだろ別に。せっかく彼氏にパワーを充電してもらったんだ。たっぷり放電したいんだよ」


 リア「なら来い。今すぐな!」


 ゲームの準備開始。まずは全員の名刺交換を行った。次にリアたちは、輪になって話し合い、青樺のNGワードを一つ決めて紙に書いた。青樺は、五人分の名刺と雰囲気から各々のNGワードを決め、同時にリアを倒す作戦も考えた。その様子を弘前は黙って見つめていた。


 リアたちのNGワードは次の通りである。

リア→『口腔』

トニー→『キャベツ』

安岡→『乳房』

虎屋→『尻』

チャルプス→『アナフィラキシーショック』

青樺→???


 皆は、NGワードの書かれた紙を頭上に掲げると、環状に集まり、胡坐をかいた。

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