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フードを外した彼女が気の済むまで私を堕としに来た  作者: 進道 拓真


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第一三話 一体どこから


 佳澄との相合傘、車にはねられた雨水を被ったことによる体調不良未遂。

 そしてそこから波及して日依が佳澄と共に何故か入浴をすることになり、さらにこれまたどういうわけか彼女から……その、色々なことをされてしまったわけだがその後の後処理は一応上手く済ませられた。


 まず何よりも佳澄につけられてしまった首元の歯形であるが、いくら何でもあれを堂々とは晒せないので応急処置として学校にはマフラーを巻いて登校。

 それ以外ではシャツのボタンをきっちり上まで留めることで人目には触れないよう徹底し、数日も経つ頃には痕も消えてくれたので一安心だった。


 季節が冬間近であったことも幸いし、多少厚着をしていても何らおかしくは見られなかったのでそこも誤魔化しに一役買ってくれていたのだろう。

 仮にこれが夏であったらどうしても恰好は薄着になってしまうので、かなり危なかったところだ。


 ともあれ、そんなこんなで佳澄の『お礼』によるどさくさの痕跡は隠滅することに成功して再び穏やかな日常が戻ってきた。

 …まぁ、相変わらず佳澄は日依の家で自由気ままな雰囲気を露わにしているのだが。


「これも結構いけるなぁ…やっぱりこの近所のチェーン店はハズレが少ないよ」

「…毎日毎日、よく食べるね。というかそんなに食べてたら飽きない?」

「それが不思議なことに、全く美味しさが途切れる気配がしないからもうしばらくは問題なく続けられそうな感じはしてる。日依もお一つどうぞ」

「どうも…」


 今日も今日とて、家にやってきた佳澄を出迎えたわけだがその手にはまたしても近隣の店で買ったのだろうジャンクフードの袋がある。

 本日は以前との宅配ピザとは異なってハンバーガーを調達してきており、そのボリュームも明らかに一人分に収まるものではない。


 その証拠に、適当に掴み取ったバーガーを日依に慣れた様子で手渡してきたので向こうも最初から彼女一人で消費しようと考えていたのではないのだろう。

 これも今に始まった事ではなく、直近の数日間はずっとこんな調子だ。


 最近は佳澄が訪れるとほぼ例外なく何かしらの食べ物を購入してからやってきて、しかもそのボリュームも毎回一人分など優に超える量を確保してくる。

 無論、そうなると食欲は人並み程度の範囲に留まる佳澄だけでは消費しきれるはずもないので日依も申し訳なく思いながらも共に食べるのが今の日常だ。


 しかし、こんな生活が毎日のように続くと日依としてはどうしても()()()()()というのが出てきてしまう。

 今まではそれ以外のポイントに意識が誘導されてしまうことが多く、どこかスルーしてしまっていた雰囲気もあるにはあったが多少の月日を経たことで彼女とも少しは気兼ねなく話せるようになってきた……と思う。


 少なくとも、日依はそう思っている。

 …正確には、佳澄の『お礼』を通じて遠慮なく迫ってくる姿勢のせいで緊張を解かざるを得なかったと言うべきであるがそこは置いておこう。


 兎にも角にも、日依には前々から佳澄に一つ尋ねてみたいことがあった。

 今までは何となく聞くタイミングを逃してしまっていたことから後回しになっていた事項であるが、この機会なのでその疑問を晴らしてしまうのも悪くない。

 ゆえに日依は特に深く考えることはせず、彼女の中に漂い続けていた疑問点を解消しようと軽い心境でその話題へと踏み込んでいった。


「──ねぇ、佳澄さん」

「ふぁい? …んぐっ。何かな」

「少し前から聞こうとは思ってたんだけども…佳澄さんって毎日のようにこんな感じの物買ってくるじゃん? 失礼かもしれないけど、()()()()が無くなったりはしないの?」

「……んん? あ、そういうことか」


 そう、日依が聞きたかったこととは要するに佳澄の()()()に関して。

 ほとんど連日の如く何かしらのテイクアウト商品を購入して持ち込んでくる彼女であるが、そこには当然ながら相応の金銭というのも必要になってくるはずなのだ。


 だが彼女に関してはそんな事情などまるで関係ないとでも言わんばかりにまとまった量を調達し、それを日依と分け合って食べることさえ珍しくない。

 普通はそんな生活を続けていたら、高校生が自由に使える範疇の金額などあっさり超えそうなものだというのに佳澄はその気配すらなく継続していた。


 正直わざわざ問いかけなくとも大して問題が無いと言われればそれまでの事なのだが、どうしても気になってしまったのでこの際にはっきりさせておきたいと思い質問を投げかけていた。


「もしかしてアルバイトしてるとか…でも、毎日ここに来てるしそれはないか…って、ごめんね。無理に聞き出したいわけじゃないから答えたくないならそれでも──」

「……う~ん。そう、だなぁ……ま、日依なら大丈夫だよね…いいよ。教えてあげる。といってもそんな凄い事情があるわけじゃないからそれでも良いなら、だけど」

「え、本当?」

「ここで嘘はつかないよ。あんまり面白い話じゃないから期待されても困るけどね」


 すると、予想していたよりも佳澄は断りもせず多少悩む素振りを見せるくらいで事情を明かしてくれると言ってくれた。

 まさかこんなにも簡単に聞き出せるとは思っていなかっただけに目を丸くしてしまったが、彼女の様子からして楽しい理由があるわけでは無いらしいことを何となく日依も察した。


 どことなく歯切れが悪いとでも言うのか、これを本当に話してしまって良いのかを迷うような素振りを見せる佳澄の姿が珍しく思えるも…日依はあくまで話を聞く姿勢に徹する。


「何て言ったらいいのか悩みどころだけど…まぁ結論から言っちゃうと、私が自由に使えるお金は日依が言ってた通りアルバイトをして稼いだわけじゃないよ。単に()()()()()()お小遣いってだけ」

「…っ! …そ、そっか」


 すると彼女から暴露されてきたのは、ここでも予想外な事実。

 表に出ている感情こそ穏やかな態度そのものであるが、発言を受け取った日依はそれを聞いて内心の動揺が思わず出てきてしまった。


 …前々から気にはなっていた、佳澄の使う金銭はどこから手にしていたのか。

 しかしその事実はとても簡潔なもので…そして、彼女の事情を顧みればマズいことに踏み込んでしまっただろうかという懸念が浮かび上がってきてしまう。


 以前にも一度だけ聞いたことはあるものの、どうやら日依は佳澄にとっても浅くない家庭事情にまつわる事項。

 彼女の実家に関して──意図せず話題を振ってしまったらしい。


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