表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
① オタクな転生王子だけど地味に努力してます!~今日も筋トレと魔法修行~  作者: あんてな
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/26

第六話

 四年の月日が流れた。

  

 王都グラディアの朝は、いつもよりも少しだけ静かだった。

 まだ陽が低く、石畳の街路に長い影が落ちる。露店の呼び声もなく、

 衛兵たちが整列して道を空けている。

 五歳になった王子が“神の加護”を授かる――それは王都にとって、

 国の未来を占うほどの大事な儀式。今日は、その特別な日だった。

 王城から神殿までを結ぶ参道は、

 沿道には白い花が植えられ、淡い香りが風に乗って流れてくる。


 レオンは王妃セシリアに手を引かれながら、少し緊張した面持ちで歩いていた。

 「…お母さま、本当に、神様って会えるの?」

 「ふふ、どうかしらね。でも、心が澄んでいれば、必ずその声は届くものよ」

 「…声?」

 「ええ。言葉じゃなくても、心で感じるの。

 あなたの中に光が満ちていく感覚それが“加護”よ」

 母の柔らかな声を聞きながらも、レオンの胸は高鳴っていた。

 (光が満ちる……なんかゲームのイベントみたいだな)

 つい心の中でツッコミを入れるが、

 そんなことを言えば姉たちに笑われるだろう。


 すぐ後ろでは、王アルフォンスと第一王子ライナルト、第一王女ソフィア、

 第二王子シリル、第二王女ミリアが続いている。

 ミリアは緊張と興奮が混じった様子で、姉のソフィアに小声で囁いた。

 「ねえお姉さま、レオンはどんな加護をもらうと思う?」

 「そうね……きっと優しい神様に好かれるわ。だってレオンだもの」

 「うんっ!」

 そんな姉妹の会話が、少しだけ場を和ませた。


 道の両端で控える神官たちが、王族の一行に深く頭を下げる。

 やがて、神殿の巨大な白い外壁が見えてきた。

 聖ソルディア神殿――十二の神々を祀る、王都最大の聖域。

 高い尖塔の先端が朝陽を受け、金の十字装飾がまばゆく輝く。

 神殿の中へ足を踏み入れた瞬間、ひんやりとした空気が肌を撫でた。

 壁面に描かれた神々の壁画。

 それぞれの神を象徴する紋章が、青い光を帯びて静かに揺れている。


 「レオン様、こちらへ」

 先導する神官長が厳粛な声で告げる。

 「儀式は“光の間”にて行われます。どうか心を整え、

 神々に己を示す覚悟をお持ちください」

 「……はい」

 レオンは小さく頷く。

 けれど内心は、まるで心臓が跳ねるようだった。

 (“己を示す覚悟”って……ゲームだったら絶対ボス前のセリフだよな)

 思わず笑いそうになるが、隣のソフィアが静かに手を握ってくれた。

 「大丈夫。神様は、ちゃんと見てくださるわ」

 「……ありがとう」

 その一言が、不思議と胸の奥を温かくした。


 光の間の扉が開く。

 荘厳な香の香りが漂い、

 天井から差す陽光がまるで神の道のように床を照らしている。

 中央には白い石の祭壇――そこが、加護を授かる者の立つ場所だ。

 神官たちの詠唱が始まり、澄んだ音が空気を震わせる。

 レオンは深く息を吸い、祭壇の中央へと歩み出た。


 金色の光が床の紋章を走り抜け、レオンの小さな足元へ集う。

 温かく、しかしどこか懐かしい感覚。

 胸の奥がきゅっと締まるような、不思議な郷愁。

 (……この感じ、前にも……?)

 脳裏に浮かぶのは、あの“神様”の微笑みだった。

 転生の直前、柔らかな声で送り出してくれた存在。

 その瞬間、レオンの視界が白く弾け――世界が反転する。

 音が消え、風も止まる。

 気づけば、目の前には光の大地、神々の世界。


 「え……!?この場所は、いったい……?」

 思わず呟く、その瞬間風がひとつ吹いた。

 「やあ、小さな来訪者」

 声と同時に、軽い風が渦を巻いてレオンの前に形を作る。

 現れたのは、長い薄緑の神を後ろで束ねた青年。

 その笑みは飄々として、どこか人間臭い。

 「俺の名はヴェント、一応この世界の神の一人だ」

 「これはどうも初めまして、レオン・グラディアと申します」

 互いに挨拶を交わした。

 

 「迷子になってないか? ここの構造、ちょっと分かりにくいからさ」

 「……えっと、はい、たぶん迷ってます」

 「だよね! 俺も最初は地図欲しくなったものだ」

 ヴェントはひらりと浮きながら、指先で方向を示しながら進み始めた。

 「ここは神界。下の世界の情報を見聞きする空間だ。

 君みたいな転生者は、本来はここを経由するんだ」

 「そうなんですね、俺…僕はここに来た記憶はないのですが…?」

 「そう。君は珍しいのさ!」ヴェントは悪戯っぽくウインクした。

 「だから俺らも興味津々なんだよ」

 「ついたよ、ここが俺らの集まる会議室さ」 


 そこは円卓に十二の席が用意されている部屋だった。

 「席を用意するね」ヴェントが指をはじくとどこからともなく椅子が現れた。

 「すわって少し待ってな」そう言うとヴェントはとなりの席に座った。

 「よくぞ来られた、創生神の使徒、レオン・グラディア殿」

 声のする方を見上げれば、

 十一の光が下りてきた、ゆっくりと人の姿を取り声が響いた。

 神々との邂逅が、始まった。


 神々がどよめく。

 「おやおや、ずいぶん可愛い魂じゃないか。

 ……ふむ、創生神の加護持ちか」と神の一人が言う。

 「ほう、珍しいわね。加護付きの転生者なんて、

 久々じゃない?」深い藍色の髪の柔らかく笑う女性の声。

 「なるほど、創生神の推薦枠というわけか」

 低く響く声の、赤髪に赤い鎧をまとった男の声。

 「…つまり創生神様の領域から、直送された魂ってことだな」

 「こっちにも連絡なしで、人材送り込むんだから……」

 など、神界らしからぬ会話が飛び交う。

 (……なんだろう、めっちゃ職場感ある……)

 レオンは半ば呆れ、半ば感心していた。

 前世でサラリーマンだった彼には、

 この神々の会議がなぜかしっくりくるのだ。


 やがて中央にいる神が口を開いた。

 金の髪を持つ男神は、静かにレオンを見下ろしながら言った。


 「この子の魂は、創生神の加護を持ち、

 この世界の理を壊さぬよう調整済み……。

 ならば、我らも干渉を恐れる理由はないだろう。

 各自、必要とあらば加護を与えなさい。」


 そう言うと三人の神が席を立ちこちらへとやってきた。


 一人目の神は、深い藍色の髪を風に揺らす女性だった。

 その瞳には星が宿り、衣は夜空を織り込んだような紋様を持つ。

 「私はミストリア。魔法と叡智を司る神。

 あなたの魔力の波が、私の領域によく響いていたわ」

 「…ミストリア様?」

 「そう呼ばれるのは久しいわ。可愛い声ね」

 微笑む彼女に、レオンはただ呆気にとられる。

 (な、なんか神様ってもっとお堅いと思ってたけど…親しく感じる)


 隣に並んだのは、炎のような赤髪の男。

 屈強な体に獣のような瞳を光らせ、声は朗々としている。

 「我はアグレオス!戦と勇気の神なり!

 ハハハ、面白い魂よな! 幼子にして戦士の目を持つとは!」

 「は、はあ……ありがとうございます……?」

 「礼は戦場で示せ!剣を握る時が来たら、我が加護を燃やせばよい!」

 (この人、テンション高い……でも嫌いじゃないな!)


 最後はヴェントだった。

 笑うと春の陽のような穏やかさが広がる。

 「やあ、改めまして。俺はヴェント。風と自由の神さ。

 君、ずいぶん真面目そうだけど…たまには風に流されるのもいいものだよ?」

 「……風に、流される?」

 「そう、肩の力を抜くってこと」

 彼の言葉に、レオンは思わず笑ってしまった。

 (……この神様、ちょっとだけ俺の前世の上司に似てるな。

 仕事できるけどマイペースなタイプ)


 ミストリアが腕を前に出す。

 「あなたに私の加護を授けるわ」

 アグレオスが拳を打ち鳴らす。

 「我の加護を授けよう。恐れず進め、小さき戦士よ!」

 ヴェントが微笑みながら風を舞わせる。

 「僕からも加護を。君が迷ったとき、風が導くだろう」

 三つの光が、ゆるやかにレオンの胸に吸い込まれていった。

 暖かく、やわらかく、それでいてどこか懐かしい感覚。

 「…ああ、これが、加護なんだ…」

 そう呟いた瞬間、セレスティアの声が響く。

 「その心を忘れぬこと。加護は贈り物ではなく、共に歩む約束なのです」


 加護を渡し終えると他の神々も次々と声をかけてきた。

 穏やかに頷き神、涼しげな笑みを見せる神。

 気難しそうに腕を組む神、全てを見通すようなまなざしを送る神。


 やがて、白衣をまとった男性が一歩進み出た。

 「レオン殿。私はソルディア。この十二神を束ねる神です。

 あなたはこの五年、清らかな心で成長してきました。

 この場に招かれたのは偶然ではなく、あなた自身の選択の結果です」

 「…ぼくの、選択……?」

 「ええ。努力を怠らず、他者を思い、

 己を律するそれは神々の理にも通ずる道」

 ソルディアの声は柔らかく、けれどどこか父のような温もりを含んでいた。


 ソルディアは静かに微笑んだ。

 「創生神様は、あなたの世界からこの地へ魂を繋いだ存在。

  あなたをここに送り出したのは、単なる偶然ではありません」

 「創生神様は、あなたに新しい可能性を見たのです。

  そして我らもまたあなたを見て、同じ光を感じました」

 十二の光が淡く揺らぎ、世界が再び白く染まりはじめる。

 神々が最後に優しく囁いた。

 「また逢いましょう、レオン殿」


 レオンがゆっくりと目を開けると、

 目の前には母と神官長、それに兄姉たちの姿があった。

 みんなが、まるで何か奇跡を目にしたように口を開けている。

 「レ、レオン様……」

 神官長の声は震えていた。

 「先ほどの光……三つの光が、同時に……!?」

 彼の胸の奥では、三つの光が確かに脈打っていた。

 (夢……じゃない。ちゃんと、もらったんだ)

 王妃がそっと彼の頭を抱く。

 「レオン……とても綺麗な光が、あなたを包んでいたわ」

 レオンは小さく微笑んだ。

 「うん……すごく、あったかかった」

 彼の瞳に、ほんの一瞬、風のような光がきらめいた。


 その笑顔に、母は安堵の息を漏らした。

 だが、神官たちは互いに視線を交わし、ざわめきを抑えられない。

 「まさか、五歳で三柱の加護を……!」

 「記録にない……こんなことは千年ぶりでは……!?」

 光の間の中心では、まだわずかに残滓のような輝きが漂っていた。

 青、赤、そして緑――それはミストリア、アグレオス、ヴェントの象徴色。


 王アルフォンスが一歩前へ出て、息子の前に立つ。

 「レオン。……いま何が見えた?」

 父の声は厳かだったが、どこか優しい。

 レオンは少し考え込みながら、素直に答える。

 「えっと……すごく明るいところに、十二人の神様がいたんだ。

  みんな、すごく綺麗で……でも怖くなくて。

  それで、三人の神様が加護を与えるって言ってくれたの」

 「十二人の神々……?」

 神官長が顔を上げる。

 「それは、どんな方々でしたか?」

 「一人は青い髪の女の人。名前は……ミストリア様。

  もう一人は赤い髪の男の人で、アグレオス様って言ってた。

  あと、風みたいに優しい笑顔の人……ヴェント様、だったかな」

 その名は、古来より伝わる神々。

 神官たちは息をのんだ。


 王アルフォンスはしばし沈黙したあと、

 ゆっくりと膝をつき、息子の肩に手を置いた。

 「神々の加護は望んで得られるものではない。

  それは、神が“この子に未来を託す”と決めたときに授けられる。

  おまえは……この国の未来の礎になるだろう」

 父の声は静かだったが、その奥に深い誇りがあった。

 だがレオンはその言葉に、わずかに眉をひそめる。

 (未来の礎……って、また責任重大ワードきたな。

  いやいや、俺まだ五歳だぞ!?)

 内心でツッコミを入れながらも、胸の奥では確かな熱が灯っていた。

 それは、三柱の加護がもたらす力の残響。

 光の鼓動が、心の奥に微かに響いている。

 その時、床の紋章が淡く光った。

 しかしその光は穏やかで、

 誰も傷つけることなく、やがて空気に溶けるように消えた。


 儀式が終わり、一行は神殿を後にする。

 外に出ると、昼の陽射しが王都の屋根を照らしていた。

 ソフィアがそっとレオンの隣に立つ。

 「ねえ、レオン。さっきの光……あなた、とても綺麗だった」

 「そ、そうかな……?」

 「ええ。まるで神様たちが微笑んでいたみたい。……おめでとう、レオン」

 姉の微笑みは、まるで春のように温かかった。

 レオンは胸の奥で、そっと誓った。

 ――この力を、誇るためじゃなく、守るために使おう。

 その小さな心の誓いを、風だけが静かに聞いていた。


 その夜。

 王城の一角、レオンの部屋には柔らかな灯火がともっていた。

 昼間の儀式の喧噪が嘘のように静まり返り、遠くで夜警の鐘がひとつ鳴る。

 ベッドの上には、今日も愛用の絵本が置かれている。

 けれど、今夜ばかりは文字を追う気になれなかった。

 胸の奥が熱くて、眠気よりも――考えたいことがたくさんあった。

 「……ミストリア様、アグレオス様、ヴェント様」小さく呟く。


 レオンはそっと目を閉じ、天井を見上げた。

 その瞬間、心の中に淡い光が灯る。

 昼間に感じた三色の光、青・赤・緑が、

 ゆっくりと胸の奥で交じり合い、ひとつの白い光に溶けていく。


 扉が軽く叩かれた。

 「レオン、起きているかしら?」

 入ってきたのは母セシリア。

 手には温かいミルクの入ったカップを持っていた。

 「寝る前に、少し落ち着けるようにと思って」

 「ありがとう、母上」

 彼女はベッドのそばに腰を下ろし、レオンの髪を撫でる。

 その手の温もりは、どんな加護よりも心を安らげた。


 「今日は本当に、立派でしたね。……神々も、あなたを見ておられたわ」

 「うん。でも、少しだけ怖かった」

 「怖かった?」

 「うん。たくさんの神様がいて、

 すごく優しいのに、すごく遠い感じがして……。

 もし間違えたら、もう会えないような気がした」

 セシリアは微笑み、静かに言った。

 「大丈夫よ。神々の力は、あなたの中にもう宿っているわ。

  遠いようでいて、ちゃんと見守ってくださるの」

 「……ほんと?」

 「ええ。だから、信じて。あなた自身を」


 母の手が髪を撫でるたび、胸の奥の光が少しずつ落ち着いていった。

 ミルクを飲み終えたあと、母は静かに立ち上がり、部屋を出ていった。

 扉が閉まる音がして、再び静寂が戻る。


 レオンは窓辺に立ち、夜空を見上げた。

 雲の切れ間から、星々がちらちらと瞬いている。

 その中に、まるで見覚えのある三つの星が並んで光っていた。

 「……あ、あれだ」

 昼間の神々がいた光景と、星の並びが重なる。

 まるで彼らが空から覗いているようだった。

 「神様たち、俺、がんばるよ」


 その言葉を吐いた瞬間、風が静かに吹き抜けた。

 カーテンが揺れ、

 部屋の灯が一瞬だけ細くなり、そしてまた穏やかに戻る。

 レオンの頬を撫でた風は、たしかに“応えてくれた”気がした。


 その夜、レオンは深い眠りについた。

 夢の中で――

 白い光の大地に、十二の神々が立っている。

 その中心には、昼間と同じ三柱。

 ヴェントが笑い、アグレオスが腕を組み、ミストリアが静かに頷く。

 「お前の歩む道は、光と影が交わる道だ」

 「だが心配はいらぬ。光があるかぎり、影もまたお前を導く」

 レオンが聞き返そうとした瞬間、夢の景色が風に溶けていった。


 朝が来る。

 窓の外では、鳥のさえずりが聞こえる。

 レオンは静かに目を開け、青空を見上げた。


 「今日も……いい日だ」


 胸の奥で、加護の光が静かに脈打っていた。

 それはまるで、神々の鼓動がひとつ宿ったように。

【名前】レオン・グラディア

 【年齢】5歳

 【職業】グラディア王国第三王子

 【レベル】5 経験値 0/255

 【体力】 :113

 【魔力】 :17900△

 【持久力】:100

 【筋力】 :136△

 【耐久力】:103△

 【知力】 :306△

 【精神力】:218

 【敏捷】 :125△

 【技量】 :103

 【幸運】 :1843△


 【スキル】:魔術王 鑑定 状態異常無効 精神異常無効

 【加護】 :創世神の加護 魔理神の加護 戦勇神の加護 風翔神の加護

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ