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① オタクな転生王子だけど地味に努力してます!~今日も筋トレと魔法修行~  作者: あんてな
第四章

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第三十一話

 アニマディアは、今日という日を祝うために生まれたかのように輝いていた。

 城壁を取り囲むように幾重にも張られた祝祭旗は風を受けたなびき、

 人波は巨大闘技場へと向かっていた。

 四年に一度の国家行事。

 娯楽であり、武威の誇示であり、そして未来の英雄を生む舞台。


 「さぁぁぁぁぁ皆さん!!本日より開幕いたします!

 アニマディア王国闘技大会!!」


 闘技場上空に浮かぶ拡声魔導機から、よく通る声が響く。

 実況を務めるのは王立放送局の名物司会、ルガス・フェルディオ。

 隣には冷静沈着な解説役、戦術研究家のセリア・アルマディア。

 「なんと今大会出場者は五百名以上!身分も所属も問わず…。

 いやあ…今年も荒れますよ、これは!」

 「例年より出場者のレベルが高いこと。

 特に王族四名が同時出場というのは異例です」

 ルガスが身を乗り出す。


 「第一王子アレクさま!第一王女ミラさま殿下!

 そして第二王子ルーク様!第二王女リュカ様!まさに王家総出!」


 観客席が揺れる。王族は象徴だ。

 守護者であり、支配者であり、祈りの対象でもある。

 今年は何かが起きる。

 そんな予感を、誰もがどこかで抱いていた。


 出場者控室。レオンは静かに目を閉じていた。


 ざわめきが遠い。呼吸を整える。

 胸の奥で、二つの流れが巡っているのを感じる。

 魔力と闘気。

 本来は異なる系統の力。

 だが彼には、それらが混ざり合う感覚があった。


 (今日は荒れるだろう)


 理由は分からない。ただ、空気が重い。

 視線を上げると、向かいの長椅子に座る男と目が合った。

 長身で痩躯。瞳が妙に澄んでいる。その男は微笑んだ。


 「楽しみですね」声は穏やかだった。


 だがレオンは反射的に警戒した。


 「…そうですね」短く返す。



 「それでは! 第一予選の説明です!」ルガスが声を張る。

 「本大会は三段階制!第一予選は競技用ダンジョンに潜っていただきます!

 複数の組に分け、制限時間内にゴールへ到達した

 各上位四名が本戦へと進めます!」セリアが解説する。



 そして予選が淡々と進みレオンの出場する組の番となった。

 


 選手が一斉に舞台に光のあふれる扉に入ると、視界が白に染まり

 次の瞬間、石造りの通路に立っていた。

 空気が冷たい。遠くで爆発音。すでに戦闘は始まっている。


 (まずは状況把握だ)


 その時、曲がり角の向こうから、衝撃波が放たれた。

 反射的に身を捻る。石壁が粉砕される。

 煙の向こうから現れたのは、先ほどの男だった。


 「おや、また会いましたね」


 今度は、はっきりと感じた。

 この男闘気の流れに違和感を感じる。濁りがない。

 まるで魚のいない湖のように。


 「あなた何者ですか?」

 「今はまだ、秘密ですよ…」男は笑う。


 答えは出ない。だが直感が告げていた。

 これはただの大会ではないと。



 観客席では歓声が上がり続ける。

 「おおっと!迷宮東区画で選手同士が激突!!」

 「闘気が激しくをぶつかっております!」



 レオンは拳を構える。目の前の男も、静かに構えた。


 「全力で来てください」男は言う。

 「キミの闘気、質がいい…」

 その言葉の意味を、レオンはまだ知らない。



 目の前の男が、ゆっくりと歩を進めた。


 「どうしました?」柔らかな声。


 だが、その足取りは獲物を測る捕食者のものだ。

 レオンは構えを崩さない。


 「…もう一度聞きます。あなたは何者ですか?」

 「ただの参加者ですよ。あなたと同じ。

 …名は意味を持ちます。まだ、その時ではないのです」


 次の瞬間、男の姿がぶれた。レオンは反射で腕を上げる。

 衝撃、骨に響く。迷宮の壁が粉砕され、粉塵が舞う。

 (強い……!)

 純粋な闘気の圧縮打撃。レオンは距離を取る。

 胸の奥で、魔力が反応した。

 闘気と魔力。本来なら干渉しないはずの二つの力。

 だが彼の中では、かすかに溶け合う兆しがある。

 (まだ使うな)

 理性が告げる。ここは第一予選、奥の手を晒す場ではない。


 「面白い」男は楽しそうに言った。



 「西区画でも大激突!!」ルガスが叫ぶ。

 「おおっと! 今のは強烈!あの黒衣の男、何者だ!?」セリアは映像を見つめる。

 「闘気が異常です。無駄がない」

 「天才ですかね?」

 「……それだけでは説明がつかない」



 レオンは立ち上がる。痛みはあるだが致命傷ではない。

 男は構え直す。


 「あなたを倒せば、質のいい闘気が入ります」

 その言葉に、確信が宿る。


 (前夜祭の事件はこいつが起こしたのか…?)


 「目的は何だ!」

 「この世界を試すこと」即答だった。


 一瞬。男の瞳の奥に、異様な光が宿る。


 「弱い世界に価値はない!」圧、闘気が爆ぜる。通路が軋む。


 (こいつ…)参加者じゃない、レオンは拳を握る。

 胸の奥二つの流れが共鳴する。闘気、魔力。

 混ざるなと理性が叫ぶ。だが今は必要だ。

 一瞬だけ。ほんの一瞬。二つの力が触れ合う。

 爆発のような衝撃。両手にに異質な光が宿る。

 男の目が細まった。


 「それだ」それは歓喜。

 「それをもっと出せ!」


 レオンは踏み込む。拳がぶつかる。衝撃が爆ぜ、通路が崩壊した。

 天井が落ちる視界が崩れる次の瞬間、

 二人は別区画へと強制転送された。迷宮の自動修復機構が働いたのだ。


 「……逃げられましたか」男は小さく息を吐く。


 足元の紋様が赤く光り、闘気を吸い上げる。


 「まあいい」と微笑む。


 「いずれ、すべて集まる」そう言うとダンジョンの奥へと姿を消した。



 レオンは荒い呼吸を整える。拳が熱い。先ほどの感触、

 闘気と魔力が触れた瞬間、何かが確実に変わった。


 (あれは……)


 危険を感じた、だが可能性だ。遠くで爆発音、叫び声。

 時間は刻一刻と進んでいる。



 「現在脱落者多数! 残り二十六名!」ルガスが熱狂する。

 「今年は激しい!」セリアが呟く。


 「……何かが、違う」


 第一予選は、まだ始まったばかりだ。

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