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① オタクな転生王子だけど地味に努力してます!~今日も筋トレと魔法修行~  作者: あんてな
第一章

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第二話

 ―眩しい。

 やわらかな陽光が、天蓋つきのベビーベッドを優しく照らしていた。

 窓の外からは小鳥の声、香り立つのは花とミルクと陽だまりの匂い。

 レオン・グラディア、生後三ヶ月。

 この世界で目覚めてから、早くも九十日が過ぎていた。


 自分が赤ん坊であることには、もう慣れてきた。

 毎日泣いて、ミルクを飲んで、寝て――そして考える。

 考える、という点では赤ちゃんらしからぬ努力型ベビーである。


(えーと、現状の筋肉量は……相変わらず皆無、

 腹筋も腕もぷにぷに。寝返り訓練も失敗率80%

 魔法もまだ使うだけの技術がない……くっ)


 今日もレオンは心の中で筋トレと魔力操作のメニューを組みながら、

 天井を見つめていた。他にやっている事と言えば観察である。

 例えば、寝室の構造。天蓋付きベッドは純白で、縁に金糸の刺繍。

 窓際にはおそらく魔石で光るランプが据え付けられていて、

 夜になると淡い光を放つ。壁には、王家の紋章を刻んだ盾と剣。

 それと前の世界と同じ感じのカレンダーと思われるもの。

 後は毎日の王城の散歩で得られる情報の数々。

 ……うん、完全にファンタジー王国仕様。RPGの王都スタート地点って感じ。

 

 それらの情報を元に、俺は自身のオタク的知識を総動員して、

 この「赤子チュートリアル」を徹底的に満喫することにした。


 「あら、起きたのね、レオン。今日もいいお天気よ。お散歩日和ね。」


 やさしい声が聞こえた。金糸のような髪、空のように澄んだ瞳。

 母、セシリア王妃。この人の抱き方は、いつも不思議だ。

 ふわりと包まれる感覚があって、息がしやすい。

 きっと何百回と子を抱いてきた経験の深さなんだろう。


 「今朝もごきげんね。……まぁ、笑ってくれるの?かわいい子。」


 俺は腕をばたつかせる。


 「あー、うー。」


 ――ああ、喋れない。転生者あるある、赤子ボイス問題。

 心の中では冷静なツッコミをしているのに、外に出るのは赤ちゃん語。

 このギャップが地味にストレスだ。


 「ふふ……やっぱりレオンは、笑うのが上手ね。誰に似たのかしら。」


 母がそっと額にキスをした瞬間、胸の奥に暖かい何かが広がった。

 “努力しても報われなかった前世”の空っぽだった心が

 少しずつ埋まっていく気がした。


 ――ああ、今度こそちゃんと生きよう。

 新たな家族を悲しませないように。

 そんな決意を胸に、俺は手足をぶんぶん動かす。

 筋肉、魔力。トレーニングは裏切らない。

 たとえ赤子でも、将来のために特訓だ!



 朝食後、寝室を出て母との城内散歩に出かけた。

 散歩して分かったことは、

 この世界は、想像していたよりもずっと穏やかだった。

 朝は侍女たちが静かに動き、

 昼には中庭から騎士たちの剣の音が聞こえる。

 遠くで子供たちの笑い声。


 (この世界、わりと平和そうだな……)


 中庭は花々であふれていた。

 噴水の水音が心地よく響き、白い鳥が舞う。

 王妃セシリアは椅子に腰を下ろし、

 レオンを膝に抱いたまま空を見上げる。


 「昔ね、この国を創った王様には、不思議な力があったのよ。」

 (お、出た。世界設定っぽい話!)

 「“光の加護”と呼ばれていてね、王家に生まれる者の中でも、

 とても稀にその光を受け継ぐ子が現れるの。」

 (それはあの神様の加護のことかな…?)


 母の声は穏やかで、少し物悲しげでもあった。


 「でも、その力を持つ人は、

 同時に大きな試練を背負ってしまうことが多いの。」

 (神様からは特にそういう話は言ってなかったけど…

 何か起こってしまうのだろうか…)


 不安がよぎったがレオンの中ではすでに

 「努力して最強になって恩返しするシナリオ」ができあがっていた。


 しかし、今の彼にできるのは「ぐーぱー」運動くらい。

 その小さな手を母は愛おしそうに包み込む。

 「レオンもきっと、いつか強くなれるわ」

 俺の心読まれてない?と思った。



 お昼、ミルクと昼寝の後。

 部屋の静けさの中で、誰もいない事を確認して、

 (ステータス)と心の中で唱えた。


 

 【名前】レオン・グラディア

 【年齢】0歳

 【職業】グラディア王国第三王子

 【レベル】1 経験値 11/50


 【体力】 :24

 【魔力】 :10000

 【持久力】:20

 【筋力】 :12

 【耐久力】:11

 【知力】 :100

 【精神力】:100

 【敏捷】 :13

 【技量】 :15

 【幸運】 :1000

 

 【スキル】:魔術王 鑑定 状態異常無効 精神異常無効

 【加護】 :創世神の加護


 初めて見た時にも感じたがステータスがチートである。特に魔力次いで幸運。

 異常系無効のスキルもヤバい。スキルをもらったのは魔術王だけだと思ったが、

 おそらく加護の効果でスキルの追加が行われたのであろう。

 神様ありがとうございます。


 鑑定のスキルで家族や城で働いている人々、

 出入りしている人々の数値を参照したところ、

 数値の桁は子供は2~3桁、大人は3桁~4桁が平均だった。


 (よし、ステータス確認完了。経験値もちょっぴり増えてる!)


 今日も今日とて鍛錬である。

 だが赤子の身体では動きが制限されすぎる。

 せいぜい指を握るか足を動かす程度。

 でも、俺の頭の中ではすでに「基礎メニュー」が組まれていた。


 (①呼吸法:赤子でもできる瞑想。

  ②筋トレ:バタ足と手を振り上げる運動で筋刺激。

  ③魔力操作:体内を流れる“魔力”に意識を向ける。)


  …うん、赤ちゃんがやることではないな。

 だが俺は早く魔法が使いたいのだ。


 しかし、人が来る気配を感じたので寝たふりをした。

 ドアが開き、部屋に足音が響く。

 セシリア王妃、第一王子ライナルト(10歳)、第二王子シリル(6歳)、

 そして第一王女ソフィア(8歳)、第二王女ミリア(4歳)。

 今日はどうやら“兄姉来訪デー”らしい。

 俺は今起きた風に起きる演技をした。


 ライナルトはベッドの傍に立ち、真剣な表情で覗き込んだ。

 レオンは精一杯、笑顔を返す。


 「……ふふっ、なんと穏やかな瞳だ」

 「レオンはお兄さまが好きみたいね」


 ライナルトは少しだけ口元を緩めた。


 「この子が、我が国の未来の希望か……。立派に育てねば」

 (いやいや! まだ首もすわってないよ!?)


 母が軽く笑いながら「あなたももう立派な兄ね」と言うと、

 ライナルトは照れたように姿勢を正し、


 「必ず、弟たちの手本となりましょう」と答えた。

 (まじで優等生タイプだな…)


 次に覗き込んできたのは、銀色の髪を持つ少年。

 ライナルトとは違い、目元に知性の光を宿している。

 彼こそ第二王子、シリル・グラディア。


 「ふむ…今日も魔力の残滓がありますね」

 (やべぇ練習してたのバレてる!?)


 シリルは赤子レオンをじっと観察し、

 なぜか懐からノートを取り出した。


 「興味深い。魔力反応が常に微弱に循環している。

 つまり潜在的な魔術適性が――」

 (観察モード入った!?)


 兄は赤子相手に真顔で魔力解析を始めた。

 母が笑いながら止める。


 「シリル、あまり怖がらせてはだめよ」

 「いえ、観察するだけです。ほら、興味深い結果が――」


 シリルは赤子レオンをじっと観察し、懐からノートを取り出した。


 「興味深い。魔力反応が常に微弱に循環している。

 つまり潜在的な魔術適性が――」


 次の瞬間、俺はくしゃみをした。

 ぽふっと小さな魔力がほとばしった。

 シリルは一瞬でノートを閉じ、目を輝かせた。


 「出た!自発魔力放出!やはりレオンは魔法が得意なようだ!」

 (くしゃみで魔法!? いやそれ偶然だから!)

 「これは貴重なデータです。レオン、将来は私の助手に――」

 「シリル、それは早いわ」母の穏やかな一言が刺さる。

 兄は咳払いをして立ち上がる。

 「……ともかく、彼の将来が楽しみです」


 「レオ~! ミリア、きたの~っ!!」

 風のように覗き込んでできたのは、小さなピンクのドレスを翻す、銀髪の少女、

 第二王女ミリア・グラディア。


 「ミリアは待てませんのっ! レオ~、起きてる? 起きてるよねっ!?」

 (ミリア姉さん、テンションMAXである……!)


 俺は必死に手足をばたつかせる。――彼女の熱量に応えるために。

 するとミリアが目を輝かせた。

 「きゃーっ! 笑ったのっ! レオ笑ったぁ!!」

 いや、笑ってない。たぶん筋トレの反動だ。

 でも彼女は完全に信じてしまったらしい。

 「もうかわいすぎますの……っ!

 お姉ちゃんがぜーんぶ抱っこしてあげますの!」

 「ミリア、それはまだお危ないです!」

 ライナルトの制止もむなしく、ミリアは小さな腕で俺を抱き上げ――

 「よいしょっ……わっ、わぁあああ!!」ぐらり。

 (おい、重心! 赤ちゃんの命がかかってるぞ!)

 すぐさま王妃が支えて事なきを得た。その後、ベッドに戻された俺。


 「ミリア!もう危ないんだから!」

 きっちりまとめられた金髪、淡い水色のドレス。

 母の横で腕を組み、少し眉を寄せたのは――第一王女ソフィア・グラディア。

 「お姉ちゃん、ちがうのっ! レオが笑ってくれたのよっ!」

 「それは“反射”って言うの。気をつけなさいよ!」

 (あ、理屈っぽいタイプ来たな)ミリアは頬をふくらませる。

 「ソフィアお姉ちゃんはいつも難しい言葉ばっかりなのっ!」

 「難しいことじゃありません。王族として当然の教育を――」

 「はいはい、はいそこまでー」セシリアが間に割って入る。

 (すごい……この人、姉妹バトルにも慣れてやがる)


 俺はベビーベッドの上で小さくガッツポーズをした。

 これが、噂に聞く“平和な家庭”ってやつか……!


 「おお、みんな揃っているな!」

 豪快な声が響いた。

 扉の向こうから入ってきたのは、王――アルフォンス・グラディア。

 鍛え上げられた体に王のマント。髭を整えた顔は威厳に満ちているが、

 笑顔は少年のように明るい。

 「おお、レオン! 今日も元気そうだな!」

 俺を覗き込みながら、ガハハと笑う。

 (音圧が強い……! いつもテンションが高い!)

 「あなた、声を抑えてくださいませ。まだ赤ちゃんですよ」

 「おっと、そうだった! ハッハッハ!」

 (この人、豪快だけど憎めないタイプだな……)


 広い部屋に、王と王妃、四人の兄姉、そして俺。

 全員がそろい、笑顔で俺を囲む。

 「レオンも、この家族の一員ですものね」

 「当然ですの!」

 「王族として、立派に育てよう」

 「いや、育てようというより育つかもな」

 (……なんか今、変な方向に期待してません?

 笑い声が部屋いっぱいに広がった。

 俺は小さな手を動かし、必死に空をつかむように伸ばす。

 その仕草に、家族がまた笑う。

 (俺は……この世界で、この家族の中で生きていくんだ)

 (努力して、少しずつでも強くなって――いつか、この笑顔を守れるように)

 そう誓いながら、赤子レオンは再び小さな拳を握った。

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