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① オタクな転生王子だけど地味に努力してます!~今日も筋トレと魔法修行~  作者: あんてな
第四章

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第二十二話

 フィリアが来て一週間が過ぎた。

 朝の王城は、静かだった。

 高い天井に差し込む光は柔らかく、白い石畳を淡く照らしている。

 磨き上げられた廊下を歩く足音が、やけに大きく響くのは、

 この時間帯がまだ人の少ない刻だからだろう。

 レオン・グラディアは、王城の一角に設けられた訓練場で、

 一人魔法の調整を行っていた。

 「……よし」

 短く呟き、開いた掌に浮かぶ淡い光をゆっくりと収束させる。

 詠唱はほとんど不要。魔力の流れも安定している。

 五歳で授かった神々の加護。その恩恵は、

 今も常に体の奥に脈打つように存在していた。


 (頼り切りには、なりたくないんだよな……)


 レオンは、わずかに眉をひそめる。

 神々の力は確かに大きい。だが、それは「借り物」でもある。

 自分が積み上げてきた努力や工夫、試行錯誤

 それらが霞んでしまうような感覚が、どこかで引っかかっていた。

 そのときだった。


 「レオン様」


 控えめな声とともに、訓練場の入口に一人の文官が姿を見せる。

 手には、装飾の施された封筒。


 「アニマディア王国より、書簡が届きました」


 嫌な予感がした。

 レオンは魔法を完全に消し、深く息を整えてから文官に近づく。

 封を切った瞬間、目に飛び込んできたのは、異国の紋章だった。

 獣の牙と爪を象った、力強い意匠。


 「…アニマディア王国」


 人間の王国の王子。

 若くして多数の神々の加護を持つ異例の存在。

 ダンジョン事件、エルディア王国での異変解決

 その噂は、すでに獣人の地にも届いているのだろう。

 そう理解した時、不思議と心は落ち着いていた。

 中身を読んだ後、父上に報告へ行った。


 「……獣人王国から、武闘会の招待か」


 父王は書状に目を通し、低く唸るように言った。


 「断ることもできる。強制ではない」

 「はい」

 「だが行けば、お前はグラディア王国の顔になる」


 父王は視線を上げ、まっすぐにレオンを見る。


 「勝てとは言わん。だがどう動き、どう退くかは

 ……王族としての資質が見られる」


 その言葉は、重かった。

 勝敗以上に、振る舞いが問われる。

 それが、異国の武の祭典であっても変わらない。


 「…分かっています」


 レオンは静かに頷く。



 お昼、机を挟んで向かい合うのは、アルフォンス国王と

 冒険者ギルド長ガルド、そして父の横に座るレオン。


 「ガルド」父王が低く名を呼んだ。

 「お前は、アニマディア王国の武闘会に出場したことがあったよな?」

 「あぁ。もう…二十年ぐらい前だがな!」


 ガルドは懐かしむように目を細める。

 その反応だけで、レオンは気づいた。

 ただの大会ではない。


 「レオンが出場するにあたり、

 あの国と武闘会について、お前の口から話してやってほしいのだ」

 「もちろんいいぜ!」


 ガルドはグッドサインを出すと、視線をレオンへ向けた。


 「まず、アニマディア王国だが…」


 ガルドは腕を組み、ゆっくりと言葉を選ぶ。


 「獣人たちの国だ。この国から見て西の方にある、

 山岳と草原に囲まれ、土地は痩せているが民は強い」

 「強いとは…?」


 レオンが問う。


 「生き方そのものがと言ったところだ」


 ガルドは即答した。


 「彼らは狩り、闘い、鍛錬。それを誇りとして生きています。

 武を恥じる文化ではない。武こそが、その者の在り方を示すもの」


 父王が静かに頷く。


 「故に、武闘会が国の象徴となる」

 「武闘会は、単なる娯楽じゃねぇ」


 ガルドの声が少し低くなる。


 「国の威信、部族の誇り、王族の威厳

 すべてが懸かった場です」

 「殺し合い…では、ないですよね?」


 レオンが慎重に尋ねる。

 ガルドは苦笑した。


 「表向きは、命までは奪わない。だが…死んでもおかしくない」

 「……」

 「力を抑えるという発想があまりない。全力を出すことが、最大の敬意さ!」


 レオンは無意識に拳を握った。


 「そして」ガルドは一拍置いてから、核心を告げた。

 「レオン、あの国で戦う者は、皆が闘気(オーラ)を使う…」

 「……闘気(オーラ)?」

 「魔法とは違う。体の内から燃え上がる力だ」


 ガルドは自身の胸に拳を当てる。


 「命の力、精神…それらが一つになったもの、と言えばいいか」

 「魔力とは別物ですか?」

 「あぁ。似ているようでまったく違う」


 ガルドははっきり言った。


 「魔力は干渉する力。闘気は溢れ出す力だ」

 「俺が初めて闘気を浴びた時」ガルドの視線が遠くを見る。

 「息が詰まった…」

 「……え?」

 「魔法の圧とは違う。ただそこに立たれているだけで、

 こちらの心身が削られる」


 レオンの背筋に、ひやりとしたものが走る。


 「闘気を極めた獣人は、剣を振らずとも、相手を圧倒します」

 「魔法で、防げるのですか?」


 ガルドは一瞬、言葉を探した。


 「…防げるが、簡単ではない」

 「闘気は意志の塊だ。生半可な魔法は、弾かれるか、ねじ伏せられる」

 「レオン」


 ガルドの声が真剣になる。


 「武闘会で、魔法を使うこと自体は禁じられていねぇ。だが」

 「?」

 「魔法だけでは、勝てねぇ」


 父王が静かに口を開く。


 「レオン理解する必要がある。彼らの強さの尺度を」


 レオンは深く息を吸い、頷いた。


 「……闘気を、学べと?」

 「あぁ、使えるに越したことはない」

 「それができなければ、あの闘技場では立っていることすら難しい」


 沈黙が落ちる。

 レオンは、胸の奥がざわつくのを感じていた。

 魔法では測れない力。理論で割り切れない強さ。


 (……面白い)


 そう思ってしまった自分に、少し驚く。

 父王は、そんな息子を見て微かに笑った。


 「まだ一か月ある、その時間を、無駄にするな」

 「はい!」

 「基礎なら俺が教えてやれる!」

 「ありがとうございます!ガルドさん!」


 こうして闘気(オーラ)の修行が始まった。

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