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絵画④

 不安を煽るような耳障りな音を立てながら隠し扉は再び姿を現した。イーサンとロシュは扉の中にそっと入る。そこには今までと同じような細長い通路、だが絨毯は引かれておらず夜空のような壁紙も無い。

広がるのはただの無機質な船内。扉が閉じると先程までの耳障りな音も無くなり、いっそ不気味な程の静寂が辺りを包んでいた。

耳鳴りがして来そうな程静かな空間に自分たちの息遣いと足音だけが響く。少し進むと階段が見えて来た。

先程レイが言っていた通りだとすれば、あと二階ほど降りれば多くの熱源にたどり着ける筈だ。

だがその熱源が探している女たちだとは限らない。分かるのはそこに熱反応があるという事だけ。もしかしたら使用人がいるだけかもしれないし、形的にあまり現実的では無いが船の動力源が発する熱という可能性もある。

なんにせよ行ってみなければ分からない。イーサンは緊張の面持ちで階段を降る。

コツコツと二人分の足音が響く。耳飾りを模したチャックの発明品から仲間の話し声が聞こえてくる。

『そこを左に進んだ先だ。だがその辺りは船が水に沈んでいる辺りだからか明確な距離まではよく分からない。こちらの表示の熱源が膨張したり収縮したりと上手く定まらないんだ。細かい支援が出来ずすまないな』

久しぶりに自分たちに話しかけて来た声。イーサンはレイの呼びかけにビクリと肩を揺らす。集中するあまり神経が過敏になっているようだ。

ロシュはそんなイーサンをチラリと見ると、先立って左に曲がる。ノソノソと歩く姿はよく見慣れたもので、足取りは着実で落ち着いている。

イーサンいつの間にか緊張で上がっていた心拍数が少しだけ下がるのを感じた。

と、その時目の前を歩く赤毛が突然歩みを止める。ロシュはチラリと振り向くと、視線だけで前方を示した。

通路の突き当たりに扉があり、その前に置かれた椅子の上で警備兵が眠りこけていた。固そうな椅子の背に頭を預け、不安定そうに揺れている。

警備兵の居る扉の左右は道になっておりここからでは道の先に人が居るかは分からない。

ちょうど丁字路のような通路になっていた。

ロシュは手招きして無言でイーサンを呼び寄せる。

“泣いてる”

“え?”

ささやくロシュの言っている事がよく分からなくて緑の瞳の男は思わず聞き返した。

“泣いてるって言ったんだ”

“それは聞こえてる。誰が?”

“女だ”

“女?”

イーサンは眉を顰めた。どこにも女なんていない。

“扉の向こうから聞こえる”

“ホントに?何も聞こえないぞ”

“静かにすれば聞こえる”

イーサンはじっと耳をすませる。だが、仲間の話す声に遮られてよく分からない。ごくごく小さい音ではあるが、聞こえない音を探す時にはいささか邪魔だった。

“俺には聞こえないけど、あの中に女たちがいるんだな”

“うん”

赤毛の返事にイーサンは力強く頷いた。ロシュは自分よりも五感が鋭い。彼が居ると言うのならきっと居る筈だ。

警備兵の胸元に何か光る物が見える。おそらく扉の鍵だろう。起こさないようにそっと取るか。いや、ロシュなら起きないように確実な道を選ぶかもしれない。彼の事だから殺しはしないだろうが、絞め落としはするだろう。

ゆっくりと警備兵に近づく赤毛を見ながらイーサンは次の行動を考える。

「ねぇ、お兄さんたちお宝の場所知らない?」

突然の音。声。気配。

イーサンは弾かれたように振り返った。

そこに立っていたのは着飾った美しい女。

肩までのダークブラウンの髪に同じくダークブラウンの瞳、小さな鼻と口がちょんとくっ付いたどこか幼い顔を傾けて害の無さそうな笑みを浮かべていた。

「え、」

イーサンが困惑の声を上げたのとロシュが振り返ったの、眠りこけていた警備兵の体が椅子から大きく傾いたのはほとんど同時だった。

ガシャーン、ドサッ、

静かな空間に椅子の倒れる音が爆音で響き渡り、それに重なるように座っていた警備兵が床に崩れ落ちた鈍い音が続く。

警備兵の男は小さくうめき声をあげるが起きる気配は全く無い。

「そっちのお兄さんは私の事触ろうとしたから眠って貰ったの」

女はやれやれと言った感じでそう言った。

「失敗しちゃったなぁ。お宝の場所聞いてからにすれば良かったぁ」

頭を掻く女は能天気そうな表情を浮かべる。右手首のブレスレットに通路を照らす弱々しいラピスの光が反射してキラッと光った。

「誰だ、」

「えー?そんな事よりアタシの質問に答えてよ。高そうなネックレスは見つけたけど、これだけじゃわざわざ危険を犯して入った意味がないんだよね〜」

女がそこまで言った所で遠くから誰かが走って来る音が聞こえる。人数からして三人ほどだろうか。

「くそっ、マズい!」

イーサンは悪態をつく。ロシュは足音の方に鋭く視線を飛ばすと丁字路の曲がり角まで一足飛びに戻って来て曲がり角に身を隠した。

「ん?なんで焦ってんの?」

女は小さく独りごちたと思ったら、ニヤァっと嫌な笑みを浮かべる。

「あは、さてはアンタたち本物の船員じゃないね?」

「何言ってっ、」

「イーサン隠れろ」

ロシュは二人の言葉を遮るように言うと、曲がり角から飛び出して来た警備兵に襲いかかった。赤毛は警備兵の鳩尾を的確に狙う。突然の攻撃に息が出来ず、警備兵はうめきながらうずくまろうとした。しかし赤毛はそれを許さず、警備兵の頭を掴むと思い切り膝で蹴り上げた。

一人目が倒れる頃には、赤毛はすでに二人目に攻撃を移している。

勢いをつけて走って来た二人目を軽く避けると、走って来た勢いをそのままに頭を掴んで壁に打ち付けた。

ゴッという鈍い音を合図にするかのように二人目の警備兵は白目を剥く。赤毛はそれを確認するや否や三人目に視線を移す。視界に映った三人目は背中に掛けた腕ほどの長さの銃を正面に回している所だった。

赤毛はそれを見ると、一気に距離を詰める。その動きは猫のようにしなやかでいて、獰猛な獣のように荒々しかった。

赤毛は銃身を素早く掴むと、警備兵を引き倒すように手前に強く引く。バランスを崩した警備兵は勢いよく床に叩きつけられる。起き上がろうとする背中を強く踏みつけて阻止すると、髪を掴んで一度頭を持ち上げ、床に叩きつけた。

再び静寂を取り戻した通路でゆっくりと上体を起こしたロシュは友人を振り返る。

「野良犬の方が強い」

「そ、そうか、」

イーサンは、これ程の事をやった癖にいつもとなんら変わらないロシュに苦笑する。一方で女の方は呆けたように小さく口を開けていた。

「ヤッバ、強すぎでしょ」

「で、お前は誰なんだ?」

ロシュは幼い子供がやるみたいに小首を傾げる。

「、、、はぁ、アンタには勝てないね。でも捕まんのは勘弁だよ!」

女はそう言うと、壁際に埋め込まれていた石を力強く押し込んだ。途端、途轍も無い音量で警鐘が鳴り始める。

女が押し込んだのは防犯用に爆音の警鐘を録音した音ラピスだったのだ。

突然の音に男たちは思わず耳を塞ぐ。仲間たちも思わず耳に手を当てる程の音量だった。

脱兎の如く逃げる女を追いかけようとロシュが一歩踏み出す。しかし、緑の瞳の男はそれを止めた。

「もう無理だロシュ、俺たちもこのままだと怪しまれる。エリックの所に戻ろう」

赤毛は通路の先をジッと見つめると小さく頷いた。





 海辺から幾分か離れ、湿った空気が薄くなる。新月で月明かりの無い空は吸い込まれそうな程に暗く、天上で輝く星々がいっそ眩しいぐらいだった。

小高い丘の上に建てられた屋敷の前に豪華な馬車が止まる。御者が御者台から滑り降り、馬車の扉をうやうやしく開けた。

中から降りて来たのは長身の貴族の男、男の整った顔立ちと柔和な微笑みは新月の夜に輝いて見えるほどだ。続けて降りて来たのは医者とその手伝いの二人。

「ありがとう、もう屋敷に戻って良いよ」

「はい。エリック様もごゆっくりお休み下さいませ。お医者様もエリック様をどうかお願い致します」

「もちろん」

御者は深々とお辞儀をすると馬車を操りながら丘を下って行った。


 四人が屋敷の中へ入ると、いつもの広いリビングにはすでにレイとチャックが座っていた。

無言で虚空を睨み付けているレイに怯えているのか、チャックのいつもの騒がしさは鳴りを潜めている。

金髪の男は、四人が入って来ると明からさまに嬉しそうな顔をして立ち上がりながら大袈裟に手招きした。

「良かった無事に帰って来て!ロシュ、イーサン何があったの?俺たちからは声しか聞こえて無かったからよく分かんなくてさ」

「いやぁそれが、、変な女でなぁ。うーん、ま、美人だったけどな」

イーサンは顎に手を当てて天を仰ぐ仕草をした後、茶化すように言う。

「アハッ、なにそれ!美人なら俺も見たかったよー」

チャックは可笑しそうに肩を震わせた。

「ひとまず、」

レイの厳格な声に室内は静かになる。いつの間にか話していた二人以外は楕円形のテーブルに付いていた。チャックは慌てて先程まで座っていた席に戻り、イーサンは静かに椅子に腰掛ける。

「全員無事で良かった」

レイの言葉に男たちは静かに頷く。

「イーサン、何があったのか聞いても?」


 緑の瞳の男がことの顛末を話す間、誰もが静かに耳を傾けていた。イーサンにしては珍しく、話がわき道に逸れる事はほとんど無かった。

「ふむ、なるほど」

レイはその鋭い瞳を閉じると小さく言う。

「俺たち以外にも侵入者が居たという事か。宝を見せるパーティなんだ、それぐらいは想定しておくべきだったな。俺の落ち度だ」

「いや、想定してても無理でしょ。当日イレギュラーが起こるのは当然だし、皆んなそれぞれ上手くやってた。俺はそこの貴族の坊ちゃんが居なかったら捕まってたかもしれない、それは俺の落ち度でしょ?だからアンタのせいじゃない」

サトシの発言にそれぞれ同意したように頷く。だがチャックは信じられないモノでも見るみたいに目を見開いていた。

ーサトシが貴族の事を褒めた?あのサトシが?嘘でしょ!ー

絶対に怒られるので喉まで出かかった言葉をなんとか飲み込んだチャックだったが、表情を見れば何を考えているかは明白だった。

当のエリック本人は、気にした様子も無く例の如くニコニコしていた。

「でも一人の女のせいで俺たちの計画がおじゃんになるのは悔しいなぁ」

イーサンは背もたれに大きくもたれ掛かって天上を見上げた。

「ああ。だがその女は一体どうやって侵入したんだろうな。俺たちはエリックが居たから何の苦労も無く中に入れたが、その女は違うだろう?たった一人でどうやってそんな事をやってのけた?」

レイの言葉に全員が考えるように口を閉ざす。

「その女を仲間にしたい」

「えっ⁉︎」

チャックが驚きの声を上げた。

「優秀な仲間は一人でも多い方が良いだろう?今まで見つけられなかった事が悔やまれるぐらいだ」

それを聞いてチャックは納得したように一つ頷く。サトシは背もたれに深くもたれ掛かって腕を組んだ。

「どうやって見つけるつもり?女を見たのはロシュとイーサンと坊ちゃんだけでしょ。坊ちゃんは街を自由に歩けないんだから探せるのは二人だけ。イチア地区は広いし、そもそも違う地区から来てるかもしれない。そうなると捜索範囲はもっと広大になる。探しようが無くない?」

サトシのもっともな指摘にレイは頷く。

「ああ、それが問題だな。特徴を共有して町の噂と照らし合わせて探すにしても時間が掛かる。だが無視するにはあまりに惜しい人材だ」

それまで静かに話を聞いていたエリックがおもむろに口を開く。

「僕、似顔絵描けるよ」

「本当か?」

「うん。美術は得意だからそれなりのモノが描けると思う」

いつの間に持って来たのか、サトシは紙と鉛筆を貴族の男へと差し出した。ピアスの男の素早すぎる動きにエリックは一瞬面食らったような表情を浮かべた後、元の柔和な笑みを浮かべるとそっと筆をとった。


 数分で出来上がった似顔絵にイーサンは歓声を上げ、ロシュは感心したように頷く。

「めっちゃ似てる!俺たちが見た女だよ!なぁロシュ!」

「うん。コイツだな」

「エリック絵ぇうっまっ!」

「ありがとう。上手く描けて良かった」

エリックの画力に舌を巻くチャックに描いた本人は穏やかに言葉を紡ぐ。

「コイツ、、」

貴族の男の画力に大盛り上がりする面々を差し置いてサトシは絵をまじまじと見た後、レイに何か耳打ちする。

レイは小さく目を見開くと静かに笑った。





 ヒューっと吹く春風に粗末な荒屋が大袈裟なぐらいガタガタと揺れる。乾燥しきった栄養の無い土を小さく巻き上げた。

サトシは古い記憶を頼りにして歩く。

ー幸い記憶力には自信がある。だが探し人が今も変わらずそこに居るとは限らない。

何せここはスクラップタウンだ。

毎日違う顔を見せるのが常のこの町で、変わらない物を望む方がおかしな話なのかもしれない。ー

後ろをついて来る三人の男をチラリと見ながらサトシはそんな事を思う。金髪は今日も今日とて喋り倒していた。

話し相手がレイやロシュ、サトシのような比較的無口な人間でも気にしない質のようだ。

もっとも、ロシュはチャックと話すのを楽しんでいるらしいのだが、彼の寡黙な反応からはよく分からない。

 そうこうしている内に一行は目的の場所へとたどり着いたようだった。そこは今まで歩いて来たスクラップタウンと何ら変わりない普通の場所。

即席で作ったような荒屋。だが小さな窓から見えるカーテンと思しきモノはピンクや黄色、緑や青の布でツギハギされておりカラフルでいかにも楽しげだった。

サトシはその荒屋から少し離れた所で立ち止まると、鋭い瞳の男を振り返った。

「あそこが例の女の家か?」

「変わらず住んでたらの話だけどね。まぁでも、あのカーテンからしてまだ住んでると思うけど」

サトシはそう言って小さく笑う。

「それにしても似顔絵の女がサトシの知り合いだったなんてなぁー」

「世間は狭い」

チャックの言葉にロシュが呟く。

「では、俺とサトシが正面から声をかける。ロシュとチャックは万が一の時の為に裏手に回ってくれ」

「りょーかーい。行こうぜロシュ」

「うん」

「、、、あのバカが痛い目を見るのに賭けたって良いね」

軽快に去って行くチャックにサトシは呆れたようにそう言った。


 正面の扉の前に立つのはレイとサトシ、二人はどちらも人相の悪い顔で扉を見つめると、コンコンと二回叩く。

「なにか御用〜?」

返事が返って来る。しかしその声は自分たちの後ろから聞こえていた。二人は声の方を振り返る。

そこに立っていたのはエリックが描いた似顔絵とよく似た人物。

ダークブラウンの髪を肩まで垂らした同じくダークブラウンの瞳の女。右手のブレスレットが太陽の光を浴びてキラリと光った。

ーまさか後ろから現れるとは、いつもこちらの予想を裏切って来る彼女の奔放さは変わらないらしい。ー

「ラミア」

「あん?、、、サトシ?サトシじゃん!」

ラミアと呼ばれた女は一瞬威嚇するような表情を浮かべた後、パッと明るい表情を浮かべる。

「なにアンタ久しぶりじゃない!どこ行ってたのよ、私もリリィもーー」

「うぐっ、」

「キャー!!」

ラミアの声を遮るようにして声が響く。男の鈍いうめき声の後に空気を裂くような女の悲鳴。ラミアはその声に弾かれたように駆け出した。

「リリィ!」

荒屋の裏手へと走って行った女をレイとサトシも追い掛ける。

裏で見たのはうめき声も上げられずうずくまって悶絶するチャックと、ジタバタと暴れる女を押さえ付けているロシュだった。

「ちょっと何してんだよアンタ!!」

ラミアはロシュに飛びかかった。

「ちょっと待てラミア!ロシュも離してやってくれ」

「はぁ⁉︎サトシ、アンタコイツの味方すんの⁉︎」

「でもサトシ、この女はチャックを蹴ったぞ」

「あー!もー!良いから!さっさと離す!ラミアも落ち着け!」

解放された女は一目散にラミアの元へと駆け寄った。

「ごめんなさいラミィ、まさか二人も居るなんて思って無くて。

正面をノックされたからとりあえず逃げようとしただけなんです。でもこの金髪の人が馴れ馴れしく話し掛けて来るから頭にきちゃって。でも結局捕まってしまいました。

それにしても何なんですこの人たち。というかサトシ?貴方今までどこに行っていたんです?私もラミィもーー」

「同じ顔だ」

ロシュがポツリとこぼす。何とか起き上がって来たチャックも二人の女を見てあんぐりと口を開けていた。

二人の視界に映るのは瓜二つの二人。その顔は鏡でも有るかのようにそっくりでどちらがどちらか見分けが付かない。

ラミアと呼ばれた女は、女らしからぬパンツスタイルで格好だけ見れば男のようだ。一方でリリスの方は今日の空模様のような薄青のワンピース姿でいかにも女性的な雰囲気だった。

「すっげぇー!マジでそっくりじゃん!」

チャックの叫びはスクラップタウンの喧騒に溶けていった。





 二人の住む家に通された一行が目にしたのは外からは想像もつかないような可愛らしいく彩られた空間だった。

外からチラリと見えていたカーテンを始めに、机や椅子、壁紙に至るまで色で溢れている。棚の上には、ごちゃごちゃとして統一感の無い区画と几帳面に整えられた区画が共存し、どこかチグハグだ。

窓際で隣り合って並べられているベッドは使った人間の性格を表すかのように、それぞれ違った表情を見せていた。

ベッドとは反対側の壁側を陣取っているのは二つの小さなテント。光ラピスで飾り付けられたそれぞれのテントは、持ち主の感性を表しながら、秘密基地さながらの雰囲気を放っていた。

「相変わらずすげぇ部屋だな」

サトシがそう独りごちる。

「良いでしょ?そこの壁、リリィと一緒に絵を描いたんだよ」

「楽しかったですね。今度は反対の壁に花畑でも描きましょうか」

ラミアの言葉にリリスが微笑みながら相槌を打つ。

「えー、花畑は死んだ後で良いよー、それより空の上に居るみたいにしたくない⁉︎床に雲描いてさぁ!」

「ふふ、良いわね。でもそれだと花畑よりも死んだ後感が出てますよ」

「はっ、確かに!」

能天気に会話をする二人は揃った足並みでベッドに腰掛けた。

「椅子が少ないので貴方達はそちらに座って下さい」

リリスは言いながらダイニングテーブルを示す。

「そいえばさぁ、アンタの事どっかで見た事あんだよねぇ」

ラミアは言いながら赤毛を指差した。

「今日はそれを話に来たんだよ」

「アハ、私先回りしちゃった感じ?」

サトシの言葉にラミアは悪戯っぽく言う。

「とりあえず、自己紹介をしようか」

レイが淀みなく言う。無駄口を叩かないのが彼の良い所だった。


 挨拶を済まし、先日の船上パーティでの話に移る。それぞれの話を総合すると、エリックが追い払った女はリリスで、ロシュたちが遭遇した女はラミアだったようだ。

二人はパーティに出される宝を目当てに船内に侵入していたらしい。

「あら、ではあの時向かっていた先にはサトシが居たんですね。その時会っていたらさぞ感動的な再会になっていたでしょうね」

「勘弁してくれ」

リリスの言葉にサトシは嫌がるように首を振る。

「でも同じ顔ってすげぇよなぁ!あの時も顔が同じって事利用してたんだろ?」

「ええ、双子なんて居ると思われて居ませんから。先入観で人は簡単に騙せるのよ」

「ふたごって言うのかぁ、すげぇね〜」

チャックは感心したようにコクコクと頷いた。

そんな和やかとも言える空気が次のひと言によって一瞬で切り替わる。

ラミアは目を細めると

「てかさ、わざわざこんな話する為に来た訳じゃ無いよね?」

先程までの軽い口調とは打って変わり、ワントーン落とした声で言う。視線はレイを捉えており、詰問するような色をたたえていた。

レイは少しだけ驚いたように目を見開く。

知り合いのサトシでは無く自分に向けて言ったのに驚いたのだ。この短時間で話の中心に誰が居るのかを理解して問い掛けて来た。それも何も考えて無さそうな方から。

「ああ、まさにそうだ。昔話をするだけならサトシだけで十分だしな。俺はお前たちに仲間になって欲しいと思ってここまで来たんだ」

「はっ、仲間ぁ?」

「おや、何を言い出すかと思えば、宝の山分けはごめんです。それに、私たちは二人でいる方が完璧ですから。不純物は要りません」

「不純物か〜、面白そうなら混ぜてもいいけどぉ、ね?」

「ふふ、ええ」

片割れの顔を覗き込むラミアとそれに同意するリリス。二つの同じ顔をレイはジッと見つめる。

「もっと魅力的なモノが有るとしたら?」

男の意味深な言葉と鋭い瞳に双子は顔を見合わせた。

ここまで読んで下さりありがとうございます。

新キャラ登場でございます〜。簡単な紹介を。


ラミア:リリスの双子の姉。気分屋で自由奔放。リリスをとても大事に思っている。

リリス:ラミアの双子の妹。礼儀正しく常識人。ラミアをとても大事に思っている。


待望の女キャラ。スカーレットは居るけど彼女はあまり出て来ないから…

この世界観の革命に女は違和感という気持ちと、花を添えたいという気持ちのせめぎ合いで、とても難産だった二人です。

結果、花を添えているのか怪しいクセ強キャラになっちゃってまぁ。

さて、そんな二人を加えた革命の続きは火曜日、21:00から公開です。来週またお会いしましょう。

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