5話 ヤンキーが部活勧誘
放課後の廊下、俺はロッカーを閉めようとしていた。
(はー、家帰って寝よ)
毎日、女に追われて、勉強して、運動して、疲れる。
「よォ、新入り。ちょっとアンタ、ちょいと来な」
不意に声をかけてきたのは金髪ショートに、鋭い目、
男口調で挑発的な笑みを浮かべたサキュバス。
カレン=ミスティア。
クラスでも有名な喧嘩上等なヤンキーサキュバスらしい。
そんなサキュバスに声をかけられるなんて。
「え、なに? 俺なんかした……?」
「いや、したんじゃなくて、させるんだよ」
訳がわからない。
「雄大って男がどれほどのもんか、ちょっと見てやろうと思ってよ。アンタ、戦えるのか?」
そしてそのまま、無理やり腕をつかまれ――
「よし、対魔戦技部に連行だ!」
腕を掴まれたので精気が吸われていく。
ちょっと苦しー
案内されたのは、学園裏にある訓練場。
そこでは何人ものサキュバスたちが、武器を手に戦っていた。
「ここ、対魔戦技部っていってな。実戦で通用するサキュバスを育ててんだよ」
「実戦……?」
この世界にも戦争みたいのがあるのか。
「ま、お前にはまず、噂を聞いてよ、耐性があるんだよな?」
「……なにに?」
「女の色気、にさ♡」
ぐいっと顔を近づけられる。
カレンの目は、肉食獣のようにギラついていた。
そして、そのまま見学という名の「実演」が始まる。
カレンが前かがみに構えて
「いいか? サキュバスの戦技ってのは、肉体の“魅せ方”と“気”の操作が肝なんだよ!」
腰をクイッとひねって、胸元を強調。
足さばきでスカートの奥をチラッと……これは明らかに見せにきてる。
ん?肉体戦じゃ
「これが魅惑式構え・初段。見る者の理性を奪うってやつさ」
「おい、これほんとに戦技か……!?」
「おうよ。実際の戦場じゃ、相手が鼻血出して倒れりゃ勝ちなんだよ」
理屈がおかしい。
「相手も女だと、どうすんだよ!」
「あ、なんだとごらー女は殴るわ!」
「なら、殴りの技法を考えろよ、剣術とかさー」
カレンに抱きつかれ、精気が一気に吸われていく。
「うっぐっはーー」
「こうしりゃ勝ちなんだよー!」
見学後…
「おい、アンタ。うちの部、入ってみる気ねぇか?」
「いや、俺は運動苦手で……というか命がいくつあっても足りない……!」
「はっは、そんくらいでへばってどうする! そのうち実戦訓練もあるぜ? 女の体術、間近でたっぷり教えてやるからよ♡」
「もう、味わったよ!!」
彼女の熱視線に、背筋が凍る。
この学園、どこを歩いても男の理性がもたない。
だがその時、背後からリリムが登場。
「カレンちゃん、雄大にちょっかい出しすぎー。リリムのものなんだからね♡」
「はぁ? あたしが目ェつけたんだ。リリム、お前んとこの男でも、遠慮しねーよ?」
リリムとカレン、火花を散らす二人。
また一波乱、起きそうな予感しかしない。
俺の日常が~。
「アンタ、ちょっとはサキュバスの“攻め”に耐えられんだろうな?」
カレンが言うと、俺の前に立ちはだかる。
そして、スカートの端を軽くつまみ、クイッと腰をひねった。
「おいおい……それまた“魅惑構え・初段”じゃ……」
「フッ、これは二段。“重力錯覚・視線誘導式”ってやつさ」
こ、こんな格好されたら理性が、もたない……。
俺がリリムの方を向いたら。
「ダメダメ〜、カレンちゃんだけ先にいくのはずる〜い♡」
リリムがぴょんっと飛びついてきて、俺の腕にしがみつく。
「はい、雄大くん♡ サキュバスの愛情攻撃タイム、はっじまるよ〜♡」
彼女の体温が近い。甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
やばい。やばいって。
「よし、いくぞ新入り。これは【精気収奪・実技訓練】だ。耐えてみろよ?」
言うなり、カレンが俺の胸元にぐっと顔を寄せる。
耳元に吐息がかかる距離で囁かれる。
「ねぇ……どんな風に吸われたい?」
「いや待って!? なんかすごい言い方になってる!!」
リリムも後ろから体を密着させてきて
「雄大くんの溢れる精気、リリムにもいっぱい分けてね♡」
そのまま首筋にちゅっ、と軽いキス。
ぐはっ
チェリーボーイにこれは、えぐいてぇー~!
「うへへ、顔がとろけてきたねえ♡」
リリムが笑いながら
「うっそ〜、まだまだいけるでしょ? サキュバスは、深く、じっくり吸うのが得意なんだから♡」
カレンが意地悪な笑みを浮かべながら
二人が交互に、頬や首に口付けてくる。
そのたびに、体の中から何かが抜けていく感覚。
快感とはちょっと違う、でも、抗えない心地よさ。
EDでよかった。
「やっば、こんなに吸えるなんて、知らなかった」
カレンが満足そうに
「うんうん♡ ねぇ雄大くん、もうちょっとだけ、も〜っと♡」
最終的に
俺は体育館裏で倒れてた。
喧嘩でやられた陰キャみたいに。
「……精気、底まで吸い尽くされてる……っ」
目は半開き、手足は動かない。
女神情報で精気=生きる力なので、底まで無くなると、回復するまで倒れてる。
「へへ♡ 新入り、なかなか根性あるじゃん」
「リリムとカレンのダブルサキュバス攻撃に耐えられるなんて……すごい、すご〜い♡」
その横で、満足そうな二人のサキュバスが笑っていた。
喧嘩にならなくて、良かったよ。
俺の学園生活、体力がもつ気がしない。